第11期予選時の投票状況です。24人より61票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
17 | 地下鉄 | 曠野反次郎 | 8 |
22 | 百万匹 | 林徳鎬 | 7 |
15 | 静かな木 | ユウ | 6 |
5 | 漂白 | 朽木花織 | 4 |
7 | (削除されました) | - | 4 |
26 | 孵化 | るるるぶ☆どっぐちゃん | 4 |
3 | 来 | 荒井マチ | 3 |
9 | 波紋 | 戦場ガ原蛇足ノ助 | 3 |
16 | アンダーテイカー | 野郎海松 | 3 |
23 | 運動時のすばやい水分補給 | (あ) | 3 |
6 | 永字占い | 翠 | 2 |
14 | 『チャタロー夫人の恋人』軍団 | 妄言王 | 2 |
18 | 壊れた子どもたち | 逢澤透明 | 2 |
21 | 地震 | 海坂他人 | 2 |
24 | 16×16 | 赤珠 | 2 |
27 | 雲のトアコ | 川島ケイ | 2 |
4 | 沈黙 | 中里 奈央 | 1 |
11 | 後部座席劇場 | 西直 | 1 |
12 | 宇宙からの警告 | 山川世界 | 1 |
19 | (削除されました) | - | 1 |
やはり今期はこの作品は外せない。他の人の感想を見ていると「推敲には無頓着」とか言われていたけど、それを補っても余りある作品全体のパワーを感じた。
特に線路に水が満ち、小型船がホームに滑り込んでくるシーンは圧巻の一言。(赤珠)(この票の参照用リンク)
色々な方が色々な意見を仰った今期注目の作品。改めて言うことは何もない気がしますが、脱字には気をつけて。(この票の参照用リンク)
カフカのような、どこにもいけない、なにもできない、という諦念が、地下鉄という暗い世界で漂っているのが感じられた。「轢断された魚」など細かい描写もよかった。(透明)(この票の参照用リンク)
一つのイメージが鮮明に書かれているので、読者に色々なことを想像させてくれる。地下の水路はまるで三途の川のような感じもあり、突然現れた船に乗り込んでいった乗客は、一体どこへ連れて行かれてしまったんだろうと思うのだが、逆から見れば、同じ場所を通って、我々の知らないうちに独自の生活を営んでいる世界があるのかも知れないと思ったりもするのである。(海坂)(この票の参照用リンク)
上手。(この票の参照用リンク)
魚は線路に取り残され、主人公は船に、そして列車に取り残される。
全編を通して漂うこの無力感がなんとも心地よい。作品自体は文句なしに面白い。しかしこの作者、いつもながら文章校正には無頓着である。
●『辛気臭い』『薄暗い』等、同じ言葉があまりにも多い。僅か千字なのだから、別の言葉に置き換える工夫が欲しい。
●→構内の角の方になるともうまるで真っ暗←
構内の奥まった部分という意味ならば、『角』よりも『隅』の方が適切ではなかろうか。
●→穿かれた穴の向こうから←
穴を開けたという意味なら『穿(うが)たれた』で、『穿(は)かれた』では『ズボンを穿く』などの意味になってしまう。
●→レールの上でぴしゃりと跳ねる←
後述の『ぴしゃりぴしゃり』を活かすためにも、この『ぴしゃり』はない方がいい。
●→魚をぼーっと眺めていると←
前述で『すーっと』という同様の表現があるので、ここは、『呆然と』のような漢字表記の方が引き締るように思う。
(山)(この票の参照用リンク)
どうですかこの作品。私はですねえ、この(たぶん)男を後ろから見た絵を思い浮かべました。男の向こうには線路(というか線路へ向かう闇)。でずっと動かない。この男、一連の出来事のはじめから終わりまで変にかっこつけたポーズのまま動かない。そう。この男は(私のイメージの中では)マネキンなんだ。この作品、前作「踏み切り」の世界にマネキンを一体、ポツネンと置いてみたそういう作品。と、見る。
冒頭【構内はひどく薄暗く】最終行でも【構内は相変わらず薄暗】。単なる呼応じゃあないよ。ってかそんなんおんなじ文章を頭と脚に書きゃ呼応ってもんじゃない。話は変るが強化ガラスってのは材料がことさら異なるものでもないらしい。単に製造過程において表面を急冷するだか加熱するだかでこの表面と内部との応力差というかあとで冷やした時に表面と内部とがまだ張り合った状態、固体ではあるがギュっと緊張した状態にすることで飛躍的に強度がたかまるらし。この作品もそういう感じ。冒頭と最後の呼応(【構内はひどく薄暗く】)が表裏で、その内部にすごい緊張というか弓なりな力がみなぎっている。そう。恐怖や駅員を探し出して問いただすなどしている場合ではないのである。男=マネキンはただ見ているのみであり憤り困惑するのみなのである。だから男がマネキンなのか、男がマネキンだからこうなるのかは定かでない。知らない。というプロセスを経てこの作品に関しての「絵論」につながるわけでした。再掲はしないので感想掲示板や海坂氏の掲示板参照願います。
「絵画より奇なる小説」は果たして「真実より奇なる小説」に勝てるのか。決勝楽しみ。(この票の参照用リンク)
地下鉄という閉鎖状態での黒さ、そして水の生暖かさ、魚の新鮮な鱗の感触。それらが一致して濃くなるどころか、調和されたかのような感覚。短編ならではの感触がここにあり。(この票の参照用リンク)
余計な小細工を施さなかったために、一本筋の通った恐ろしさが保たれた。
山川さんの感想にあるとおり、作者(林さん)は『百万匹』の正体を実はなにも考えていなかったのかもしれない。だとしたら恐怖倍増である。(赤珠)(この票の参照用リンク)
2.百万匹
わかりやすさとは、日常雑記のことではなく、ありきたりなオチのことでもありません。内的に納得できる感覚と表現がきっちり結びついているということだと思います。その意味で、どれとは言いませんが、どう、このプロット斬新でしょ? この表現センスあるでしょ? というような感じが文章から染み出てくるのは頂けない。そのようなほかの作品と比べて、この作品は、不条理を扱いながらそれを支える感覚が作者の内面的必然から染み出てくる感じがします。つまりはリアリティがあるということです。(この票の参照用リンク)
口の中に「百万匹」という言葉の威力。百万匹というからには、細菌ではないし、また、大きな動物でもない。その気持ち悪さが歯医者という場面とよく合っていた。(透明)(この票の参照用リンク)
シュールなショートショート。でも深読みしようとすればいくらでも。独特。こういうのは好みじゃないはずなんですけど、妙な感覚に引っ掛かりました。「何これ?」という印象。(この票の参照用リンク)
『百万匹』の正体が判らないのがいい。
わざと判らなくしているのだろうが、実は百万匹の正体は全然想定していませんでした(作者談)。などということも考えられる。
●→百万匹いたとしても、もうなにも残っていないだろう。←
ラストで受付の女性が放った、『きれいになりました。一匹もいません』のセリフを殺してしまうので、このフレーズは必要なかったように思う。
●→「口の中になにいるんですか?」←
→受付で女の子にも聞いた。←
上記の文章は必要ないように思う。主人公が言葉を発していないのに、医者や受付が勝手に答える方が面白い。
(山)(この票の参照用リンク)
逢澤透明さんが、『今期は、「シュール&学校」特集という感じですか』と仰っておられましたが、学校というのがよくネタとして使われるには、やはりほぼ全員が学校に通っていることが前提として必要なのだろうと
思います。で、歯医者というのも学校ほどではありませんが共通体験としてよく持ち出されるものではあります。しかしどうでしょう、端々に見られる歯医者の、患者の側から見た風景が、なんと見事なことか。ああ、あるある、と引きずり込みながら、それ以外は得体の知れないものばかり、という巧みさに一票。(この票の参照用リンク)
面白い。何が百万匹なのか、という大事なところを最後の最後まで隠し切った。専門性の彼方に隠された真実。真実はついに我々の手の中には落ちてこない。村上春樹的カフカの匂い。「私の想像よりもはるかに大きく、かたちは異常」なドリルはギリアム風小道具だ。正体の分からない不気味さがうまく世界の構築に生かされており、現代の不必要に肥大化したコマーシャリズムを具象化しているようにも感じられる。(この票の参照用リンク)
「22 百万匹 林徳鎬さん」とどちらにしようか迷った結果、こちらにしたが、子供の頃と現在の虫歯の治療は痛み度や不快感が格段に違う。
それを「百万匹」で表現した感覚は凄いと思った。
「静かな木」の辛辣な風刺は「おーいでてこい(星新一)」を彷彿とさせる。これほど見事に換骨奪胎した上で独自性を出している作品は、ちょっと覚えがない。
「ひとむかし前には 『抗菌』 が流行ったこともあるけれど」と現在の出来事が書かれているため、「『消音』 が当たりまえになっている」未来が想像しやすい。
インドネシアでの「コレラに日本人だけがかかる」事件も記憶にあり、行き過ぎることに不自然さや違和感はなかった。
平穏を望んでいながら静かな狂気に至る世界。その変貌を冷静に見ている主人公。
「新薬の評判は上々」という世評を横目で見ながらの「雨音が好きな人は、全国に何人くらい居るのだろうか」という哀感。
素晴らしい出来映えだと思う。(この票の参照用リンク)
ショートショートがあまり好きではない読者にも、ショートショートの要素以外で訴えかけるような巧さがある。(この票の参照用リンク)
「うまいっ」って感じの作品です。
文章も読みやすいし、目のつけどころもすごくいいと思います。
「確かにね」、と思っていることでもやりすぎはいけないよね。
どこかゆがんだ社会のうごきが上手く表現されていて、いい作品だなと思いました。
うん、タイトルにも惹かれました。(この票の参照用リンク)
警報装置が作動すると違う意味で警察がくるのかな、とかくだらないことを考えてしまいましたが、こういう作品で具体的な事例を挙げるのは難しく、また作者にとっては鬱陶しいものだと思います。そこを上手く切り抜けて、漠然とした部分と真実味をもたせるための部分とを見事に組み合わせているセンスに一票。(この票の参照用リンク)
いやこれが案外面白い。「砂のユートピア」「昼の月」の裏ともいえるかも知れない。喪失したあとに今はないものの方への憧憬。
また私は子供のころに読んだ「ちいさなおうち」(絵本)(はじめ田舎の丘の上におうちがあったんだがだんだん街ができ汽車がひかれ工場が出来高速道路が出来るにいたる。で、おうちが引っ越す。もとのような静かな田舎の丘の上に)を思い出した。しかしこの「静かな木」にはそういう救いの手立てはない。そう最後の沈黙はレイチェルカーソンやね。フォークト・カンプフ識別法的恐怖感もある。はあ?
着眼点もいいねえ。いやブレードランナーでも雨というか都市にしたたる露が象徴的だったがこの雨までもっていったところが面白い。
で、感想掲示版にも書いたが【雨音が好きな人は、全国に何人くらい居るのだろうか。】ってこの変にリアリティーのある天気予報のような凡庸感がたまらない。そして【ノーベル賞だとかいう声もあって僕はいやだった。】ってここで僕を対峙させる権威と自己を対峙させる構図面白い。ここにしか’僕’が出てこないんだ。すごく面白い仕組み。
うん。この世界の人はもう、今や、声を出さずに生活しているんだ。この僕がこの世界での最後の’声’だったんだろう。あいや全国で唯一の、か。
面白かったです。(この票の参照用リンク)
好きな世界。「でも、少しずつ変な方向にすすんでいるな、とは思っていた。」「僕はいやだった。」など安易な表現が目立つが、もっとよくなる可能性への期待をこめて投票。(この票の参照用リンク)
古典的な話といえばそのとおりなのですが、何故だかほんわかしていてそこが味になっているような気がします。(この票の参照用リンク)
終わりの部分(ああ例え、以降)を読んでいて、くううっときました。題材はありふれたものかもしれませんが、こう料理されたら条件反射で一票投じてしまいます。
友人や同僚としてではなく、単なる同じ会社の人間(限りなく他人に近い)としてなら、浜田さんの身の上話を聞いてあげてもいいでしょうが、聞いたところで何にもならないんでしょう。そこから浜田さんの何となくの孤独を想像したのかなあと、自分は考えましたので、蛇足ながら書いておきます。(あ)
迷った作品について。
『雲のトアコ』は、もう完全に型ができていて、例えば連作の中の一つの作品ならばっちりだと思うのですが。ほめているかけなしているか、誤解を招く言い方ですが、あえて言うなら教科書的な感じで。
いいなあ、と読み終わった後思ったのですが、感想が書きにくくってそのため私は予選で選べなかったのかもしれません。
『後部座席劇場』は、『漂白』と同じように終わりの部分がポイントだと思うんですけど、途中、若干イメージが湧きにくく不親切な感じがしました。『あたし』の「…………」の見当がつかなかったので、そう感じたのかもしれません。でもこの投げやりはたまらないです。
『『チャタロー夫人の恋人』軍団』は、ありふれた題材を丁寧に書いてあって、うんうんと頷いてしまう好作ですが、読後に残るものがやや少なかったような気がします。それは、『私』の視点で話が展開していくわりに、『私』の存在が薄いせいかもしれません。
いつもの夕ご飯という感じで、外食メニューが並ぶ今期では印象の点で不利でした。(この票の参照用リンク)
絶妙。すべてにおいてツボ。おそらくこれより出来の良い作品は他にもあるとは思いますが…、「漂白」はこの人にしか書けないようなもので(そう私は認識しています)、簡単に言えば個人的に好みということです。(この票の参照用リンク)
単純に浜田さんが幽霊である、という方に持っていくばかりでなく、『気が早い』『万が一』と言葉を足してあったので、これは確信を持っていたはずのことがふと疑わしく思える瞬間の感覚の話なのかなあ、と思ったのです。で、一票。(この票の参照用リンク)
「短編」での最初の作品、次の作品と、連続で構成を遊んだものだったので、いわゆる小説っぽいものが読んでみたいと思っていたら、前作があんまり面白くなくて。なんだけど、この「公立キッズ」はよかった。今回良い作品が多いというけれど、文句なく推したいのはこれだけかも。細かく丁寧に技を見せるというか、ああこういう書き方ってあるんだなあ、とか思って、この先生なんか変なのかな、ああ、変だな、とか思ってるうちに話が終わって、後味もなんかいい。
曠野反次郎さんの作品は今回も面白いのだけど、オチてるぶん妙に納得してしまって、それ以上感じなかった。
なんかあの空気感染しそうな前作の雰囲気は最高だった。(この票の参照用リンク)
登場人物たちの躍動感に一票。(この票の参照用リンク)
ええ、私なんかは犬釘を知らなかったので、所詮やっぱり公立なわけですが、こういう先生っていいなあと感じます。なんだかんだ言って生徒のことを考えてますし。決して暴力を許容するわけではないのですが、佳樹は生徒以上に子供らしい部分が残っていると思います。サラリーマン化していないというか。諦めろと言っているようでもあり、私立を小バカにしているようでもあり。
急に思いついたのですが、『世界に一つだけの花』なんて歌うよりは、よっぽどこっちのほうがいいような気がします。
結局この雰囲気を作り出せたという点で、予選通過に値する作品だと考えます。(あ)(この票の参照用リンク)
馬鹿馬鹿しくも爽快で、読んで元気になる作品であった。セクハラだの酒酔い運転だの「オトナ」の世界で悪事を働いて露見する教員が珍しくないこの頃、こういう純粋な「コドモ」の悪戯を先頭に立って出来る先生は尊敬に値する。私もこんな教師になりたいとひそかに思った位なのである。(海坂)(この票の参照用リンク)
「7 公立キッズ 瑕瑾さん」とどちらにしようか迷った結果、こちらにしたが、「公立キッズ」の全体をおおうパワフルな生き様も捨てがたく、苦渋の選択。
タイトルにエリック・フランク・ラッセルばりの言語的遊び心があり、楽しい。フレドリック・ブラウンのショートショートにもこういう遊びはあるけれど、日本語ではまず見ない。あってもベタな駄洒落になっているような気がする。
あ、町田康あたりにありそうだけど、それは別格ってことで。
「孵化」は言葉遊びに終わらず、都知事と少年の未来をも内包する。
奇天烈なイベントを組んだ都知事は孵化して宇宙に飛び出し、少年は孵化して青年になる。
「太陽」でイベントを行い、「火星」に飛び立っていった男、「君は頭の良い子だね」「これからも頑張りたまえ」と言った都知事を、少年から孵化した青年は覚えているのだろうか。
コンクールを取り、励まされた少年が、主催し、励ました者を忘れたかのように「星が見えないな」と呟く皮肉さ。
主催者は去り、作品も忘れ去られ、少年も変わった世界で、何の役にも立たない大穴が名所になっている皮肉さ。
クールです。(この票の参照用リンク)
もう全然わからないです。でも、今まででこの人に投票した中では、一番切れてると思いました。やばいくらい好み。
以下メモ。
『来』『虹の彼方に』
ラスト一行がとても好き。突き放した。「投げやり」。
『宇宙からの警告』『タイムマシン』
オチ物はやや苦手にしているんですが。今期じゃなければ。
『波紋』『壊れた子どもたち』
「なんなんだこれは?」という作品。すごくツボなんですが。(この票の参照用リンク)
この人の感想書くのいやだ。毎回裏切られる。なんでこう毎回別アイデア思いつくのだ。感想がすぐ陳腐で的外れになるので書きたくない。でも書く。これまあ孵化=鱶=フカなんだがだからって何の意味もない。この人アホじゃあないのかとさえ思う。もちろん都知事石原もぜんぜん何の意味もない。この人にアホを戯画化しようなんて底意はない。自分がアホなんやから。
じゃあこの小説なんなんやというと【少年は凄いとか凄くないでは無く、鱶の目は何故あんなに曇っているのに、星のように輝いて見えるのだろう。死んだおばあちゃんもそうだった。死者達の目のあの不思議な色合いは何なのだろう、と思ったのだが】という一文であり【面に空いた穴はそのままになっていた。暗く底の見通せないあの大穴】。火星へ向かった都知事と地上から見当違いの方向に星を探す少年といまも地面にめりこみ続けているフカとの交錯である。だから何なのだろう。’面白い’の実存主義である。面白いとはつまり結果なのだ。理由はない。(この票の参照用リンク)
「見当違いの角度で空を見上げ、そう呟く。」にノックダウン。(この票の参照用リンク)
ロボよりロボットの方が個人的によいように思えますが十分に面白く読めました。(この票の参照用リンク)
たとえば「ベットから外れた音を拾い、それを部屋の中央に寄せ集めると滲んだ闇が進行した」というような、ナンセンスになるギリギリ一歩手前の文章をつなげて、小説を作ろうとした意気込みを買う。欠点はある。だから、次作に期待する意味も込めて、一票を投じる。(透明)(この票の参照用リンク)
おもしろい。(この票の参照用リンク)
「ランパブ」という瑣末に、必要以上に投入された筆力を贅沢に味わいました。慣用的に使われる(言い換えるとベタな)表現が多かったですが、それらが的確に選ばれていたような気がします。とても理解しやすい文章です。
一般的に『文学的』表現というと、理解しやすい文章とは対極にあるような気がします。その意味で『波紋』は『文学的』ではないのかもしれませんが、でもこれはれっきとした『1000字以内の創作小説』だと思います。読んで面白い、それで十分だと自分は感じました。
それから、一文が適度に長かったこともポイントだと思います。極端な場合、「……と、言った。」「……は笑った。」と小学生の作文みたいにぶつりぶつり短文で切られていたら、読む楽しみが激減するはずです。そこのところ『短編』では字数制限があるので難しいのですが、『波紋』はしっかりしたストーリテリング(これを達成するためには文を多くしなければならない)と文章の味わいをよいバランスで保たせていたと思います。(あ)(この票の参照用リンク)
下らなさもここまで達すれば美しい。これ以上の締め方はとても思いつきません。蛇足さんは「ランパブ=ランジェリープラスパブ」という一点からこの物語を作り上げたのではないかと勝手に推測します。
とにかく面白い。「しんどいな」は短編史上に残る名セリフではないでしょうか。(この票の参照用リンク)
今期はなぜか「二字熟語題名」が多い期でありますが、その中で選ぶなら(という選び方を本当にしたわけではないですが)この作品。登場人物二人の両方に視点が行くので最初ちょっと途惑いましたが、両者の内面を読める利点があり、この書き方は成功してると思います。二人で同じ科白を口にして互いに失望する、というところが最高でした。体面よりも己の道を突き進む行動力を羨み、そのためにただ非難することも憚られ……という迫水の心情は読み手の共感を呼ぶところでもあり、その点でこの作品はある意味シリアスドラマでもあるわけです。極力シリアスに徹しているからこそ、面白くもあり、またカッコいい逸品。(この票の参照用リンク)
今回応募されている他作品と比べようがない独自性がある。
ハードボイルドな語り口のクールさも、他の作品にはない。
口語の布告文が、統制政府は大統領独裁であることをイメージさせる、出だしの格好良さ。
難を言えば、「オクタゴン」メンバーにアジア・アフリカ系がいないことくらいか。
表では大統領が支配している世界は、反逆児のような裏の「オクタゴン」メンバーの手の上にある、という設定は「007」的で下手をすると陳腐になったかもしれない。
「統制政府」側ではなく「オクタゴン」側から見た世界が描かれているせいか、陳腐さは感じなかった。
会話の端々から、メンバーが世界を救う反逆者ではない様子がうかがえる。
作者得意のピカレスクロマンであり、キャラクタたちは世界を皮肉り、自らを神と豪語する。
その気楽な会話の合間に描かれる情景も、殺伐さを増している。
「さあ、気ちがいに(フレドリック・ブラウン)」の支配する側から見た世界、という感じの視点も面白かった。(この票の参照用リンク)
『ジョジョの奇妙な冒険』のような世界観。最初はそんなに惹かれなかったのだけれども、読み返すうちに、投票したくなった。千字向きとは思えない(中・長編に改稿して欲しい)けど、長くするとダレるのかもしれない。難しいところ。(この票の参照用リンク)
やや好みで選んでの1票。個人的に「バランディオ」(第7期)が大変気に入っているので、それに通じる作品に再び出会えたことは僥倖でした。ワルい奴らのカッコよさ、ただそれだけのentertainmentといのも1000字小説のひとつの方向性としてアリだと思えた作品です。(この票の参照用リンク)
『ぼくの魔法使い』というドラマに井川遥が井川遥として冴えない男の恋人役で出ていましたが、それを思い出しました。有名人が彼女という非業界人にとってのファンタジーをうまく描いていると思います。(この票の参照用リンク)
今期最有力作品……と一読して思ったのだけれど世間的には違うのだろうか。それはともかく、プライベートで思いっきりリラックスする「女性タレント」な彼女と、その彼女のリラックスを引き出しつつ(←この辺が彼の只者ではないところと思う)彼女にぞっこんな彼と、そんな二人のやり取りが見ていてとても気持ちよいです。敢えてジャンル分けすれば「恋愛もの」ではあるのでしょうが、そんなラベリングがためらわれるほどに自然で飾らない仲良しっぷりというかなんというか。読んで「うまい」とか言っている場合ではないと思う(そもそも「うまい」というのはあまり褒め言葉になっていないと思うのです。作品に感情移入するのではなく、距離を置いて客観視し、技巧の優劣を述べたに過ぎない言葉だから)。「心の俳句」は友蔵@『ちびまる子ちゃん』由来でしょうか(短歌になってる気がするけど)。そんなのが突然出てくるのも意外で良かった。「短編」ではどちらかというと面白系な作品が続いていた感じですが、そう言えば(あ)さんって元々こっち系の作品を書く人だったのでは。というわけで今後にも期待を込めつつ読者諸氏にもお薦めする次第です。(この票の参照用リンク)
女タレントで30代では若い部類に入らないだろうし、ゴールデンとはいえ温泉に入っているようでは「旬は過ぎた」という状態だと思うが、昔のCMを再現して照れる彼女に、こっちも目眩がした。たいへんかわいらしい。
あと気になった『アンダーテイカー』は設定はたいへん好みだが、冒頭の布告文が会話文なので(妄想だとしても)世界にリアルが感じられない。(この票の参照用リンク)
気持ちの良いショートショート。
ネタの目新しさが生きた。スパッとした切れ味。それでいて後味の悪さは残らず、ちゃんとオチている。エンターテインメントだ。タイトルと内容がばっちりハマっているし、それでいてタイトルから内容があっさり看破されるということもない。シンプルだが、完成度が高い。(この票の参照用リンク)
永の字から占うなんてとても摩訶不思議でミステリアスでもあり、そして面白くもある。(この票の参照用リンク)
3.『チャタロー夫人の恋人』軍団
これはまた、題名から内容から、作り物の匂いがぷんぷんしてきます。最後の一行も外してます。けれども、破綻していても気にしない、むしろ読者がそこから読み取るべきだというような作品が多い中、かえって、お話を作る努力をしているところに好感を持ちました。創作を学ぶものとして忘れるべきでない態度であると思います。(この票の参照用リンク)
これね、古き良き時代の残滓という意見が多かったんですけど、読んで一番笑わせていただいたので。特にラストがいい。格好いい。節々のギャグもすごく面白いかと言われれば、特にそういうわけでもないけれど、力押しで走りきったその勢いに一票。(この票の参照用リンク)
映画の予告編を見る楽しさがあります。分からない部分だらけなんだけど、なんかカッコイイ。実際どれだけのものがひそんでいるのかなんてどうでもよく、なんかカッコイイ、それだけで十分。(この票の参照用リンク)
壊れっぷりに一票。
一見壊れていなさそうな語り手(=サヨコ)が実は壊れていて、明らかに壊れている友達(=サラダ油)が実は善なる純粋者として描かれている。その転倒が、「鳥のような男」に恐れを抱きつつも彼に着いて行きたいというサヨコの心理的な転倒と対になっている。何者かになりきれていない何者かの声なき声を写し取った、シュールで危険な作品だ。(この票の参照用リンク)
この作者のものは初期作の方が面白みがあったように思えるのですが、安定した文章力と作風で安心して読むことができますので大抵まっさきに読みます。
>そしてもし地球に意識というものがあるならば、地震とはその一寸した錯乱であり
ここが今回ツボだったので一票であります。(この票の参照用リンク)
1.地震
傾向として、わかりにくさをむしろ売りにしたような作品が目に付く気がします。一石を投じる意味で、読者にきっちりわからせる作品を三つ選びます。
この作品は随筆のイメージに頼っている分、わかりやすさでは有利でしょう。しかし眩暈の内的感覚から地震、そして地球の意識へというイメージの飛躍を荒唐無稽ではなくしっかりと「わからせてくれる」筆力はやはり買いでしょう。(この票の参照用リンク)
(投票状況を見ないで書いてます)
*わたしの感想はレベルが低いらしいです。それも著しく(笑)。でもわたしはあまりそれを気にしません。世の中には頭の良い人もいるし、頭の悪い人もいるものですから。まあとにかく低いということを考慮して感想をお読み下さい。ていうか本当はレベル云々じゃあなくて、選ぶことの出来ない優柔不断連中の意見を鵜呑みにすることはない、というお話なんですよね。わたしもそれに、半分だけ賛成です。
4,7,8,9,17,18,23,24
以上がわたしの予選通過作品です。今回はレベルが高かったですね。レベルが高かった、というより、カブった、と言った方が適切なのかもしれません。多分前期からの流れでこうなったのでしょうけれど、いやあ、人の考えることは、なんと似てしまうことか。
で、今回の推薦作ですが、グレート・ザ・赤珠さんの16×16です。これは、今期の中ではとにかく光っているんじゃないでしょうか。なんていうか、他の方達のは、ここをこう読んでくれ、とか、こう解釈して欲しい、とかいった感じの、なんていうか作者の影とでもいうべきものが見えてしまうのですが、この作品については、それが全く見えない。なんていうか、結晶。作者は純粋に結晶を生み出し、そしてそれをただ見せてくれた、という印象です。そういう意味では今回、「作品」と呼べるのは今作だけだったのではないだろうか。
いやあ良いですよ赤珠さんの作品。前回のもとても良かった。それ以前のは、ええと、まあ、あまり面白くは無いのですけれど(笑)とにかくもっと評価されても良いと思う。
今回は、これに匹敵するものは他には無かったと思います。(この票の参照用リンク)
文章がとても上手いし、読みやすいなと思ったので、投票しました。
一方、内容がどこかで見たような・・・って感じがします。
でも、読んで損はないなぁ、とも思います。(この票の参照用リンク)
何となく村上春樹に似ていると思った。あるいは春樹とばななを足して二で割ったような。どこがどうという訳ではありませんけれど。
この主人公が幼く感じられるという指摘があったが、それはきっと雲をうちわで扇いだり空に扇風機を向けたりする行動からだろうと思うのだが、それほど彼の喪失感とかなしみは深いのかと察せられ、またそのように書いてあると言っていいとおもう。(海坂)(この票の参照用リンク)
冒頭の「雲になります」がとても素敵な感じです。
いいか悪いかわからないけど、内容よりも作品全体の「やわらかい雰囲気」がお気に入りです。
川島さんの次回作に期待です。(この票の参照用リンク)
今期得体の知れない話が多かったですが、安定した書き方をされる氏がこういうのを書かれたのには、少し驚きました。アンバランスな話をバランスの良い書き手さんが書いているという意外性に押されて一票。そもそも何故あんこ。まあいいや、よくないか。(この票の参照用リンク)
この作者の扱うテーマは、個人的にはあまり興味がない、というか「死」とか「世界が終わってしまえばいい」とかそういうのがあまり好きじゃないから。世界が終わったら困るし。
でも、こういうことを表現しようとしているんだろうなあ、というものをうまく表現していて、要するにうまい、というか自然、だから一票。
仮に自分がはじめてこういうサイトに訪れた人間なら、やっぱりこういう作品を読んでまず安心すると思う。別に外向けにどういうのがいいというつもりではないけど。
あと気になったのが、戦場ガ原さんの作品。まだ数作しか読んでいないので、これも作者の本来のスタイルだと言われれば納得するしかないけれど、今回は多少無理して(というか挑戦というべきなのか)書いたんじゃないかと思った。
オナニーニさんが細かいとこで分散しながら笑いとってるのに対して、全体でまとめてひとつの笑いを取る、というリスキーな技に見えた(なんじゃそりゃ)ので、やや不利かなあ、でも好きな人にはツボなのかも。(この票の参照用リンク)
最後の一票、「宇宙からの警告(山川世界さん)」と「公立キッズ(瑕瑾さん)」で大いに揺れている。
作品全体を通しての完成度・インパクトでは「公立キッズ」が上で、なおかつこの作品には『短編』ではなかなかお目にかかれないほのぼの感もあるが、やはり最後は好みで「宇宙からの警告」を選ぶ。
今期に限っては、最低五票分の投票権は欲しかった……(赤珠)(この票の参照用リンク)
ずるいなあ。
タイトルから予想される内容への期待を裏切ることをせず、そのまま書く。簡単なようでいてむずかしい。(この票の参照用リンク)