第11期 #16
ウルリッヒ・シュワルツコプ、レオナール・ダングラード、ハビエル・バルビエリ、ヴィルジリオ・ブッキ、エヴゲニー・コンドラチェンコ、デイヴィット・フレッチャー、ブレンダン・アシュレイ、イザーク・ゴールドスミス。
現在世界で暗躍するアンダーテイカーの中でも、彼ら八名は我が統制政府によって特に指定された、最重要危険人物である。巷間に「オクタゴン」と称され、我が政府への反動的地下活動に多大なる影響力を及ぼして久しい。各機関は最大限の留意を払い、我が政府の威信と鉄の秩序とを守ることに精励せよ。
統制政府第一一代大統領クリスティアン・ヨハンセン 第一七一号布告文書より
「……だとよ」
「ハッ」
ブッキは短く笑い捨てた。「オクタゴン」の面々は南洋のヘイヴン島でバカンス中だ。コンドラチェンコがブルー・ラグーンを片手にそこへやってきた。
「どうした?」
「クリスの道化芝居がいつもながら可笑しくってさ」
「我らが大統領閣下、か」
コンドラチェンコは口笛を吹いて、グラスを宙に掲げた。
「終わりなき夢と光なき未来に!」
ダングラードはカミュを読んでいた。
「で?」
「で、いよいよゲームも終わりに近いってことさ」
アシュレイは言った。
「勝者はどっちだ?」
「勝者はおれさ」
眉を潜めて、ダングラードは頁から顔を上げた。アシュレイの前にはゴールドスミスが座っており、チェスの駒を睨んでいた。
「そしておれたちさ」
「それには大いに賛同するがね」
ゴールドスミスは、ようやく駒を動かした。それは決定的なアシュレイの攻撃をいなし、体制を整える妙手だった。
「おいおい」
アシュレイは首を振った。
バルビエリはナイフを研いでいる。
「フレッチャー、神を信じるか?」
「信じるとも、それはおれさ」
シュワルツコプは表情も変えずに頷いた。
「少し訂正していいか?」
「ああ、いいとも。神はおれたちさ」
フレッチャーはにやりと笑ってバーボンのグラスを掲げた。シュワルツコプは依然無表情に頷いて、グラスを合わせた。
「戦争が始まったぜ」
とブッキ。
「いつ終わらせる?」
とアシュレイ。彼はゴールドスミスを下し、その腕時計――ヴァシュロン・コンスタンタンのアンティークモデル――をせしめていた。
「いつでも」
ブッキは請け合った。
「おれの誕生日が近いんだけど、いいかな?」
「いいとも。記念日は大切だからな」
「特におれの記念日はね」
バルビエリはナイフを研いでいる。