第11期 #12
さわさわさわ。
夜風が河原の青草をなでた。
僕たちは土手の斜面に寝そべって星を見ていた。シャツを通してコンクリートブロックのひんやりとした感触が伝わってくる。
僕は左に少し顔を傾けて話しかけた。
「昨日のニュース見た?」
彼女は眉根を寄せて「そうねえ」と呟いたあと、言葉を選ぶように続ける。
「所属事務所のいい分も解るけど、わたしは産むべきだと思うわ」
向きを変えた風がシャンプーの香りを運んできた。
「……じゃなくて宇宙メッセージの」
「ふふふ、そういえばそんなニュースもあったわね」
マイペースの彼女はとても素敵だ。
「NASAがキャッチしたらしいよ」
「でも、何を叫んでいるのかは解らないんでしょ」
「うん、解析中らしいけど、そのうち解ると――」
「見て、流れ星!」
僕が話し終わる前に彼女が声を上げた。
流れ星は青い尾を引きながら、左上から右手前へと見慣れない軌跡を描いていた。それはぐんぐん大きさを増しながら瞬く間に接近してくる。僕はソフトボールを額でキャッチして、保健室に運ばれた時を思い出した。
逃げろ、という叫びは声にならなかった。
上体を起こし彼女の肩に手をかけた瞬間、凄まじい轟音と地響きがして、僕たちは爆風と共に飛んできた土の塊を全身に浴びた。
土煙の舞い上がる河原には、ひとかかえもある球体がめり込んでいて、そこから半径十メートルぐらいにかけて土が抉り取られている。クレータに覆われた隕石の表面は黒焦げで、マグマのような赤黒い斑紋が浮き上がりつつ消えてゆく。
七時のニュースが始まった。
「NASAが先日キャッチした宇宙メッセージの解読内容を発表しました。それを地球の言葉に置き換えるとこうなります」
男性アナウンサーは原稿から顔を上げるとそういうと、息を目一杯吸い込んでから、口の脇に両手をあてがい、そして叫んだ。
「ファーーーー」