第10期決勝時の投票状況です。20票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
23 | 手術 | シャクハッチ・マスカキコフ | 5 |
30 | 欅並木の芽吹く街にて | 海坂他人 | 4 |
34 | フロントガラス | 逢澤透明 | 4 |
24 | ファミリーレストランで | (あ) | 3 |
- | なし | 4 |
この4作品のうちであればこの作品を選びます。
「フロントガラス」は悲しみが胸をうつ作品ですが、こんなに悲しい話を自分は読みたいのかと自問してみると、そうとは言えない気がします。「欅並木の芽吹く街にて」は正に海坂氏独特の世界であり、文句のつけどころはないのですが、これも自分が積極的に読みたい話ではないと感じました。
「ファミリーレストランで」と「手術」はどちらも楽しみました。「ファミリーレストランで」は前作よりさらに地味であり、むしろその地味さが好むところでありまた武器であるとさえ思うのですが、今回は「手術」のインパクトの方を選びました。独り、他とは全く違うベクトルに向かってとんがる様は、そこに存在するだけで価値あるものではないかと思います(この票の参照用リンク)
笑わせる技術。最初から最後まで飽きさせない文章。内容が内容だけに、低く見られがちだと思うが、優れた作品だと思う。ここに、人生の悲哀のようなペーソスが加われば大傑作になったと思うし、それは、この作品ではほんの少しで到達できそうだと思う。(この票の参照用リンク)
一本突き抜けた感じを受けるのはこの作品だったというのが単純な一つの理由。
もう一つは、短編で読みたいのはどんな作品かというのを考えてみた時に、他の三作品ももちろん読みたいが、今期はシリアスな作風なものが多かったように思われるし、これまでこのタイプの作品は票を集めて優勝していない、ということ。
作品単体からも、もうちょっと広い視点からも、この作品を推したい。(この票の参照用リンク)
まさかこの作品が決勝に残るとは思いませんでした。おそらく誰も予想していなかった、と思います。書いた本人も含め。小難しいことは抜きにして、単純に面白いので読んでみればいい、と思います。そのあと、ちょっと深読みすればもっと面白くなる、と思います。(この票の参照用リンク)
これである。これが決勝に残った以上これである。唯一の根無し草(デラシネ[(フランス) deracine])小説。他3作との決定的な違いを持つ。他、3作それぞれに面白く上手くもあるが残念ながら相互に比較可能な部分をもつ。それはまた同時に「読み手−作品間」の親和部分でもあったりする。人間である読み手が持つ「共感部分」を作品に取り込むことで何かを補う設計の小説という点で3作は同じ部分を持つ。読者の反応を事前に折込済みな感じがする。
「手術」は孤高である。読者への「頼り」部分がゼロである。ちゅうか俺こんな小説知らんし読まん。読まんがここまで残った命冥加なところを称えてこれである。要は面白かった。(瑕瑾)(この票の参照用リンク)
やっぱり予選で投票したこれにします。(この票の参照用リンク)
全感想、予選投票と内容が重複するので感想は控えさせていただきますが、とにかくよかったので投票します。(山)(この票の参照用リンク)
上手い話だということは自明なので、逆にあえて欠点を挙げてみる。キャラクター付けのこと。「あなた」はやんちゃで「私」は長兄の生まれつきとのことだが、これは逆の方がしっくりきたのではないか。特にラストの「イリーガルな仕事だよ」と「あなた」が「私」をからかう場面。憧憬を発する側と受ける側とのイメージを端的に収斂するには、からかう方が精神的上位つまり長兄的存在である方が分かりやすい。もちろん、それで奥行きを出そうとする試みなのかも知れないが。それにしてもこのクォリティと文章の豊かさ。(この票の参照用リンク)
ストーリーにもアイディアにも頼らずに、言葉自体のもつ力とその配列の魅力だけで、一つの独自な空間を創り上げていると感じます。
それは作者の、言葉への強い信頼と、安易な方向へ逃げない厳しい創作姿勢の結実だと思います。
『短編』の過去作品を最近やっと全部読みましたが、今期だけではなく、過去の総ての作品の中で、私はこれが最高だと思います。(この票の参照用リンク)
私も第十期感想で言いたいことは述べたので重複は避けるますが、今期はこの作品でしょう(トト短編ではBETしなかったけど)。
他には「古城にて」がかなり好みでした。決勝に残ってたら間違いなくこっちを推したと思います。(赤珠)(この票の参照用リンク)
『フロントガラス』と『ファミリーレストランで』の二つで迷った。『手術』も面白く読んだが、これを支持する言葉は私には持ち合せがないようである。徹底して無意味な事柄を、しかも下ネタに限って追求するというストイックさは類がなく、こういう作品が顕彰されることは『短編』の歴史にも意味のあることだとはおもうが。
いろいろな事情があり、二作品のうちどちらを取りどちらを捨てるかは私には頭の痛くなるような選択であった。『フロントガラス』は、作者も意識していないような事柄まで囲い込まれているような広がりと奥行きがあり、『ファミリーレストランで』は青春を伸びやかに描いて、恥ずかしくなりそうな寸前でさっと引き上げる手際もよい。
私の目では作品自体の優劣はつけがたいので、個人的に縁が深いのと、(あ)さんは前期優勝ということを勘案して、『フロントガラス』を推すことにした。(海坂)(この票の参照用リンク)
再読に耐え得るかどうかは、作品の優劣の差ではない。それは性質の違いだ。予選・決勝という方式の性格上、繰り返しの読みに強い作品が優勝はしやすくなる。しかし、ふらりと訪れた第三者にアピールするという観点からすれば、そういうスルメ型の作品ばかりが残るというのはいかがなものだろうか。
私が予選で投票したもののうち決勝まで残ったのは Mr.Sk の『フロントガラス』だけだ。しかし決勝で改めて他の作品も読み返してみると、Mr.Una の『欅並木の芽吹く街にて』がじわりと沁みてくる。おそらく100回も読めば『欅並木の芽吹く街にて』のほうがよく思えてくるだろう。
But
私は『フロントガラス』に票を投じる。再読を繰り返しても、うまみは増してこない。読むたびに増していくのは物足りなさだ。ただ、この物足りなさというのはそのために作品への興味を失ってしまうようなものではなく、More もっと読みたい、と思わせる類のものだ。物語の広がりが、1000字という枠に収まりきっていない。まだまだ描いてほしい部分がたくさんある。そんな飢餓感を抱いたのは、この作品だけだった。
現時点での評価は、『欅並木の芽吹く街にて』とほぼ同率と言っていい。しかし、そんなにスルメは偉いのか。偉いかもしれない。偉いかもしれないが、その観念に一石を投じる意味でも、私はこの『フロントガラス』を推す。
J.F(この票の参照用リンク)
『フロンドガラス』のあの記憶障害って、お話の題材として普遍的なのでしょうか。再読するとそこが少し気になるんですけど、だからといって全体としての評価が下がるわけではないので、やはり決勝でも『フロントガラス』を推します。
『欅並木の芽吹く街にて』は、よい作品だというのは何となくわかるんです。でもどのようにコメントしたらいいかわからなく、文章の美しさだけを取り上げるのも自ら読解力を否定しているみたいでかっこ悪いし。わりと自分は感情移入して読むほうですが、この作品ではそこまで移入できなかったからでしょうか。
毎回この系統ばかり投票するわけにはいかない、という変な気遣いをしたので今回『手術』には予選投票しませんでした。かなり迷いましたが、「決勝に残ったから」という理由だけで心変わりして決勝投票するのは、自分的には是ではありませんでした。しかし、私もこの作品を愛する気持ちでは他の人に負けないつもりです。
こういう作品が、読める(日の当る場所にいる)点で、『短編』及び『短編』読者のふところの深さを感じています。
以上です。(あ)(この票の参照用リンク)
苦渋の決断、泣いて馬謖を斬る思いでこの作品を推す。というか、『手術』を推さないことにした。
もっともユニークである、という理由だけでも『手術』には推薦の価値があると思う。こういったユニークなものを書ける作者を応援したいとも強く思っている。しかし、まだ優勝するにはこの作品では早い。まだ彼に革命家の資格を与えるにはゆかぬ。と、おせっかいな親心に似た気もちで、ガンバレもうちょっと! と言いたい。すくなくとも、誤脱字のたぐいや「麻酔」の不整合は、手ヌキと言われてもしかたないでしょう。さらなる推敲校正を期待します。
『ファミリーレストランで』はひじょうに安定している。ソツがない。ちょっと不条理的なアイデアなのに全体的な流れは自然でわかりやすいので共感することができる。上質のフィクションだと思いました。
ほかの2作も、うまいとは思ったもので、技術的に劣るものではないけれども、いずれも趣味ではなかった。そのせいか、見えすいた技巧がハナにつくところもあった。こと「自然体」の文章技術で言えば『ファミリー〜』には弱点が見あたらない。(この票の参照用リンク)
面白かったから。(この票の参照用リンク)
結論を先に述べると、予選で唯一推した作品なので。
『手術』系統の作品が決勝に進出したからには、この作品を推すべしという意見はよくわかるけど、このテのナンセンス物には理解があるし、むしろ応援したいんだけど、優勝して「短編」に新たな歴史を築いて欲しいとも思うのだけど、肝心の読後感として、この作品はピンと来なかったので、そういう政治的な理由で投票するわけにはいかないのでした。残念。
『欅』も、上手いとは思うけど味わえなかった。読者としての感性に問題があるのかもしれない。
『フロントガラス』と推薦作で、投票を迷ったといっていい。推薦作に比べて疵があるとは思わないけど、クスリと笑わせてくれる推薦作のほうに、どうしても傾いてしまう。(この票の参照用リンク)
「短編」の名誉のために書いておきますが、騒ぎ立てるほどのものはありません。強いて挙げれば「ファミリーレストランで」ということになりますが、これはマンガです。小説が面白くないからマンガに行ったのに、今更小説でマンガなど読まされたくありません。(この票の参照用リンク)
投票したかどうか思い出せず投票状況を確認し、どうやら投票はしていなかったようだと作品を再読にかかり、斯様に投票状況の公開は物忘れの激しい投票者には有用であるなとずれた納得の仕方をしつつ推薦作品を選出せんと努力するも、己の鈍い感受性がおっ立てた箸にも棒にもひっかかる作品がないのはもしや投票していなかったのではなく投票できなかったということであろうかと首をひねる。
あえて選ぶとすれば『フロントガラス』だがストーリーが甘い。アタクシ甘いストーリーは好みませんの。しかして今回は推薦作品なし。(この票の参照用リンク)
(投票状況を見ないで書きます)
まずフロントガラスですが、うまく出来ていると思います。でもどうも都合が良すぎ、っていうか説明しかされていない、ていうか。数学の問題の解法だけを見せられた気がします。
小説っていうのはお話を書くのは勿論なのですが、お話以上に何か書かれていなければならないものがある気がするんですねわたしは。それが書かれていないように感じました。個人的には「厠へ」でこれは物凄い小説だ、と頭が吹き飛ばされた者として(百馬身離しての優勝だと思っていました)残念でした。
ていうかメメント!
メメントは宇宙一嫌いな映画で、だって二時間も延々やったあと「実は(以下略)」なんて言われてもな、って思っていたら、周りの人達がメメントは良いメメントは良い、って言っていて、でも話を聞いてもどこが面白いのか要領を得なくて、畜生。畜生畜生畜生。と思っていたのですね。まあこの作品はメメントとは主題から何まで違うんですけど。でも同じ様な問題点を感じました。
海坂さんの作品については、正直全く面白いとは思いませんでした。本当に、何処が面白いのか全く解りません。海坂さんの作品は、なんていうか例えば落語のように、グルーブ感で読ませるタイプだと思うのですけれど、でも残念ながらその独特のグルーブ感はだんだん薄れている気がします。
他の二作は面白く読みました。どちらが良いかですが、どちらも面白く、またどちらも弱点を抱えている気がし、というわけでどちらにも投票する、というニュアンスで、推薦作なし、にさせて頂きます。(この票の参照用リンク)
なーし。(この票の参照用リンク)