第11期予選時の、#22百万匹(林徳鎬)への投票です(7票)。
余計な小細工を施さなかったために、一本筋の通った恐ろしさが保たれた。
山川さんの感想にあるとおり、作者(林さん)は『百万匹』の正体を実はなにも考えていなかったのかもしれない。だとしたら恐怖倍増である。(赤珠)
参照用リンク: #date20030708-235202
2.百万匹
わかりやすさとは、日常雑記のことではなく、ありきたりなオチのことでもありません。内的に納得できる感覚と表現がきっちり結びついているということだと思います。その意味で、どれとは言いませんが、どう、このプロット斬新でしょ? この表現センスあるでしょ? というような感じが文章から染み出てくるのは頂けない。そのようなほかの作品と比べて、この作品は、不条理を扱いながらそれを支える感覚が作者の内面的必然から染み出てくる感じがします。つまりはリアリティがあるということです。
参照用リンク: #date20030708-214413
口の中に「百万匹」という言葉の威力。百万匹というからには、細菌ではないし、また、大きな動物でもない。その気持ち悪さが歯医者という場面とよく合っていた。(透明)
参照用リンク: #date20030708-103320
シュールなショートショート。でも深読みしようとすればいくらでも。独特。こういうのは好みじゃないはずなんですけど、妙な感覚に引っ掛かりました。「何これ?」という印象。
参照用リンク: #date20030706-220921
『百万匹』の正体が判らないのがいい。
わざと判らなくしているのだろうが、実は百万匹の正体は全然想定していませんでした(作者談)。などということも考えられる。
●→百万匹いたとしても、もうなにも残っていないだろう。←
ラストで受付の女性が放った、『きれいになりました。一匹もいません』のセリフを殺してしまうので、このフレーズは必要なかったように思う。
●→「口の中になにいるんですか?」←
→受付で女の子にも聞いた。←
上記の文章は必要ないように思う。主人公が言葉を発していないのに、医者や受付が勝手に答える方が面白い。
(山)
参照用リンク: #date20030705-000959
逢澤透明さんが、『今期は、「シュール&学校」特集という感じですか』と仰っておられましたが、学校というのがよくネタとして使われるには、やはりほぼ全員が学校に通っていることが前提として必要なのだろうと
思います。で、歯医者というのも学校ほどではありませんが共通体験としてよく持ち出されるものではあります。しかしどうでしょう、端々に見られる歯医者の、患者の側から見た風景が、なんと見事なことか。ああ、あるある、と引きずり込みながら、それ以外は得体の知れないものばかり、という巧みさに一票。
参照用リンク: #date20030704-183702
面白い。何が百万匹なのか、という大事なところを最後の最後まで隠し切った。専門性の彼方に隠された真実。真実はついに我々の手の中には落ちてこない。村上春樹的カフカの匂い。「私の想像よりもはるかに大きく、かたちは異常」なドリルはギリアム風小道具だ。正体の分からない不気味さがうまく世界の構築に生かされており、現代の不必要に肥大化したコマーシャリズムを具象化しているようにも感じられる。
参照用リンク: #date20030703-175315