第11期予選時の、#9波紋(戦場ガ原蛇足ノ助)への投票です(3票)。
「ランパブ」という瑣末に、必要以上に投入された筆力を贅沢に味わいました。慣用的に使われる(言い換えるとベタな)表現が多かったですが、それらが的確に選ばれていたような気がします。とても理解しやすい文章です。
一般的に『文学的』表現というと、理解しやすい文章とは対極にあるような気がします。その意味で『波紋』は『文学的』ではないのかもしれませんが、でもこれはれっきとした『1000字以内の創作小説』だと思います。読んで面白い、それで十分だと自分は感じました。
それから、一文が適度に長かったこともポイントだと思います。極端な場合、「……と、言った。」「……は笑った。」と小学生の作文みたいにぶつりぶつり短文で切られていたら、読む楽しみが激減するはずです。そこのところ『短編』では字数制限があるので難しいのですが、『波紋』はしっかりしたストーリテリング(これを達成するためには文を多くしなければならない)と文章の味わいをよいバランスで保たせていたと思います。(あ)
参照用リンク: #date20030708-021650
下らなさもここまで達すれば美しい。これ以上の締め方はとても思いつきません。蛇足さんは「ランパブ=ランジェリープラスパブ」という一点からこの物語を作り上げたのではないかと勝手に推測します。
とにかく面白い。「しんどいな」は短編史上に残る名セリフではないでしょうか。
参照用リンク: #date20030708-001446
今期はなぜか「二字熟語題名」が多い期でありますが、その中で選ぶなら(という選び方を本当にしたわけではないですが)この作品。登場人物二人の両方に視点が行くので最初ちょっと途惑いましたが、両者の内面を読める利点があり、この書き方は成功してると思います。二人で同じ科白を口にして互いに失望する、というところが最高でした。体面よりも己の道を突き進む行動力を羨み、そのためにただ非難することも憚られ……という迫水の心情は読み手の共感を呼ぶところでもあり、その点でこの作品はある意味シリアスドラマでもあるわけです。極力シリアスに徹しているからこそ、面白くもあり、またカッコいい逸品。
参照用リンク: #date20030707-034758