第24期予選時の投票状況です。21人より46票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
17 | とにりさられる午後 | 朝野十字 | 5 |
13 | ハチミツ23号 | 安南みつ豆 | 4 |
27 | 遠雷 | 市川 | 4 |
11 | 内祝 | 桑袋弾次 | 3 |
16 | のこったのこった | 江口庸 | 3 |
23 | 波 | ゆう | 3 |
26 | 少年 | 真央りりこ | 3 |
29 | あの日のバスはもうこない | 曠野反次郎 | 3 |
1 | ペットの効用 | 戸田一樹 | 2 |
14 | 一冊の日記 | 三浦 | 2 |
19 | イタリアのものが好き | Nishino Tatami | 2 |
21 | 赤土に死す | 川野直己 | 2 |
22 | エンドレス | 神差計一郎 | 2 |
24 | 茅の輪くぐり | 朽木花織 | 2 |
28 | 愛を。自由を。 | るるるぶ☆どっぐちゃん | 2 |
6 | (削除されました) | - | 1 |
8 | 花火の子 | 黒木りえ | 1 |
12 | エンジェリング | 神藤ナオ | 1 |
25 | 恋人 | 海坂他人 | 1 |
奇妙なものを、変だ、の一言でかたずけてしまうのか、これもいいかも、と対応していくのか。そこがこの作品を味わうポイントであるように思われる。読めない。そんな作者の狙いにはまったので推薦する。(この票の参照用リンク)
日本語として読むことが出来ないすべての言葉に対して、もう少し煮詰められたものが読みたいです。投票に際して、そういった方向の期待をしておきたい。(この票の参照用リンク)
今回、個人的に一騎打ちをして欲しいのがこの「とにりさられる午後」と「■□■□■□1/2」である。どちらも文字表現(文章表現ではなく)の幅を12cmほど広げる功績を成してくれたと言える。次のステージへ進むという明確な意思を感じた。(この票の参照用リンク)
この寂しさ物悲しさはなんだろうか。言葉の不可解さが心の破壊に通じているからだろうか。これが小説といえるのかは分からないが、わたしのなかで、ある一つの世界を表出しているのは確かだ。物語りは誰でも紡ぐことが出来るだろうが、世界の発見は難しいと思う。1000字小説の試みとして高く評価したい。マニエリストQ(この票の参照用リンク)
タイトルをながめた時から、一番気になった作品でした。
まるで詩のよう。
読後感がとてもよかった。
ケイト・ブッシュのうたごえを想起させるような。(この票の参照用リンク)
よくできている。書かれた事柄でなく、そこから想像される世界が読む者の頭のなかにきちんと形作られる。細かい嘘が集積され、ハチミツのイメージとあいまって、甘いファンタジーとなった。もうひとひねりあればいいのに、というのは欲張りだろうか。そんな気持ちになるのだから、これは確かに傑作だ。(この票の参照用リンク)
「ハチミツ」ということばあるいはもの、が、街や会話や記憶、作品全体の雰囲気をかためて作り上げているというのは、とてもよいです。(この票の参照用リンク)
題をみたとき甘ったるくて粘ついた内容を想像したのだけど、
そんなことはなく、さわやかだった。(この票の参照用リンク)
おもしろいと思う話がなかったので色のイメージがよかった話に投票。これが蜂蜜色だったら投票しなかった。(この票の参照用リンク)
一見くどくて暗い話になりそうだけど、すごく説得力のある作品だと思った。お腹いっぱいな気持ちになる学生演劇っぽいのを想像して読み始めたけど、全然そんなことは無かった。(この票の参照用リンク)
「猫の記憶」とどちらを選ぼうか、最後まで迷いました。
音がいろいろなイメージを喚起させていく過程の描写が、とてもなめらかで、変にひっかかることなくどんどんひきこまれていきます。
話者が境界線上で、なにげなく立って俯瞰しているような、自分の淵をのぞきこんでいるような。
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上手だなぁと思った作品群、「少年」「遠雷」「恋人」「あの日のバスはもうこない」。この中から「遠雷」を選びました。優劣はありません。作品の中で『死を削る』という所が面白かったからです。
私は、生死は境目なく繋がっているものという感じを持っています。世の中に「死体」はあっても、何処からが「死」なのか釈然としないなぁと思います。ですから「人生を擦り減らす様な」では足らずに、さらに続いて死をも削るとはどの様な生き様なのだろうと面白い視点を頂きました。
(この票の参照用リンク)
22期の前作に対しては「多和田葉子のようだ」などと血迷い言を口走ってしまったが、今作は一転、古井由吉の短編-『聖耳』あたりの-を、個人的に想起したりもした。静寂の中で空き缶の音が鳴り、それが雷鳴のように主人公の内面で響き渡っていく、その感じとめ方のプロセスを一方で追いつつ、もう一方で、そのような思考を繰り広げていく主人公自身を描写することも忘れていない。「冷房に弱く冷やされた部屋の、薄い空気を吸い込んで、膝の間に顔を埋める。」そしてその二つの描写が、最後の一行、「血の音」を介して混じりあう・・・技術的に見てもすぐれた作品だが、この筆者については、むしろ、内省する力の強さと深さ、暗がりの中で研ぎ澄まされる五感の繊細さ、に着目したい。「皮膚が震えざわめき立つような風」、といった感覚的な描写、「彼は身近にその音を置き、常にそれを聞きながら、どこかの淵に立ち続け、自らを削ぎ落して音を生んでゆく」という省察の深さに、この筆者の感受性の鋭さは十分うかがえる。(でんでん)(この票の参照用リンク)
一読、いいじゃないの、と思った。三度目の投稿で、前期は予選通過されたが、私はその作品はあまり良いとも思わなかったのだが、これは良かった。
さらにこの作品の状況には、前々期の『巨人』と相通ずるものが明らかにある。一つの題材を粘り強くこね返す根気は評価すべきである。『巨人』はまだ断片的で独りよがりなところがあったと思うが、この作品に至ってしっかり筋が通った。一見ハチャメチャな話の運びだが、冒頭の「ゆで卵」「茹でた孫」が、よく読むと最後に来てきっちり対応しているではないか。
想像するに、作者は初めにこの語呂合わせを思いついて、それから辻褄が合うようにプロットを組み立てていったのではないだろうか。そう考えると、中間部をいかにも自由奔放に展開しているのがなお瞠目に値すると思う。(海)(この票の参照用リンク)
単純に面白かったので。こういう力技は好きです。
あらら、評判良くないのか?と思いつつも個人的嗜好はいかんともしがたく。
まあ確かに「男」の行動はどうもなあとは思いますが。↓
(http://www.akatsukinishisu.net/wiki.cgi?%C3%BB%CA%D4%C2%E824%B4%FC)(この票の参照用リンク)
ゆでた孫からゆでられる卵。この流れだけで絶品だ。それに鮫島さんの愛らしいこと。おもしろくてため息がでた。24期はこの作品のみに一票。(この票の参照用リンク)
最近短編でコンスタントに面白いのは江口庸だけだな。文学は構成。文学はユーモア。文学はパロディ。文学の正道を歩む江口庸。(この票の参照用リンク)
ニヤリとさせられたので。
自分的には「ニヤリとさせられるかどうか」が江口氏作品の評価基準であるようで、そういうことです。(この票の参照用リンク)
この作品にまだ票がないとは信じられないので投票します。
感想を書くのはあまり気が進まないのですが、もう一度読む価値のある作品だと思います。(この票の参照用リンク)
面白かった!というか私が今まで読んだ短編の作品の中で、この作品が一番面白かった!短編読んでてよかった!
波の来る情景がすばらしかった。そういうのがするするっと浮かんでくる感覚が気持ちよかった。(この票の参照用リンク)
筆者は松子さんなのだろう。(この票の参照用リンク)
好きだなと思った作品群、「夢」「ジンセイ」「波」。この中から「波」を選びました。
何気ない明るい作風が私の好みです。アスファルトの上を波がやってくる情景を見たように感じられ、一緒に飛び跳ねていました。主人公が「松」子さんなので「波に動かず風に倒る」という洒落かなと思ったらいい方向で裏切られました。(この票の参照用リンク)
ハミってもしや馬銜、それともハミ出しもののハミ?
などと考えたのですが、おそらく正解は蝮ですね。
この話なら、食みでもいけそうな気がします。
タイトルのつけ方がちょっと安易だったかなとは思うものの、
「まるで夕日の飛沫のようだ」
「薄紅色に散った小さな刷毛を目印に」という文章とかオチとか
非常にドラマチックで好みですので一票。(この票の参照用リンク)
描写の上手さに一票。
植物と色彩を見事に使いこなしてる、という印象を受けました。
いやー。上手い。(この票の参照用リンク)
季節感が一番描けている作品だと思いました。
非常に映画的な印象を受けました。
少年の息づかいと不安が臨場感を持って伝わってきます。
いつまでも暮れないようで、いつのまにか暮れている山間の夕暮れどき。
走る少年の姿がやきついてはなれませんでした。
(この票の参照用リンク)
どことなくコミカルであるのにも関わらず、見事に哀愁を漂わせることに成功している。この作者の持ち味である。
この世界観、一行で情景を想い描かせる力量。だから推薦する。(この票の参照用リンク)
21期、22期の投票に参加した際、この作者の作品には心惹かれながら票を投じなかったことを、なんとも心残りに思っていた。今期、ふたたび美しい短編と出会えてほっとしている。長く屈折した文体から立ちのぼる叙情、あてどない逡巡がかもし出すユーモア、そして作品全体を覆う、この作者特有の寂寥感。間然するところのない一作だと思う。(でんでん)(この票の参照用リンク)
「昔見た古い映画にこんなシーンがあった気がして、いやあるいはもしかしたら自分こそが今そのスクリーンの中にいて、それを眺めている大勢の見知らぬ誰かがいるのではないかと、そんなことを思うのは一体全体何の錯誤だろうか。」ありがちな錯誤とはいえ、この文章の流れの中ではぴたりと決まっている。私の大好きな「夢の木坂分岐点」を髣髴とさせる短編だった。あまりにも好みで選んでいるんですがこれがダントツでよかったのでこれのみに一票。あ、でも「ペットの効用」も大変面白かったです。票を入れるかどうかというと、この「あの日のバス・・・」と比べてしまうとどうしても趣味趣向の問題なのですが、これと比べるとわざわざ一票を入れるのかについて悩んでしまって入れられなかった。(この票の参照用リンク)
『短編』では各期筆頭に出ている作品はあまり感心しないものが多く、時にあとを読む気力を奪われる場合さえ少なくなかったように思うのだが、今期はちがった。
この作品は、テーマ・モチーフ・文章のすべてにわたって、文芸誌の小説をうまく凝縮したようなバランスの取れた充実を示していると思われた。お読み得として勧めることが出来る。
ゴキブリは主人公の生命力の象徴として、考えることができるのだろう。彼女がゴキブリを飼いだした動機は判らないのだが、飼い始めてどうなったかはよく書いてあると思った。(海)(この票の参照用リンク)
きちんとしたスタイルがある。ここで言うスタイルとは、作品中の一定した空気、自己同一性、そういうものである。ある一点、ひとつのテーマに向かってすべてが収斂していく。そのテーマがタイトルになっている。最上の意味で何も裏切らない作品だ。(この票の参照用リンク)
複数人の日記を重ねるという手法が素晴らしかった。(この票の参照用リンク)
好きになれない作品群、「エンジェリング」「一冊の日記」「のこったのこった」「千夜一夜」。ここから「一冊の日記」を選びました。
失敗してはいますが、日記と小説の違いを示そうとした意欲作だと推察し敬服しました。星新一の作品に親子の日記を重ね合わせたのがあります。とても難しい手法だと思います。(この票の参照用リンク)
食事の席で会話する男女というのは、私の好きなシーンのひとつである。終始、女がペースを握るというのも私の好みに合致している。そういうわけで著しく好み。そしてこの力の入らなさ具合が素敵だ。昔の邦画のような自然体。(この票の参照用リンク)
くだらないと言えばくだらないが楽しそうである。最後までノーテンキで押し通した潔さに一票。(この票の参照用リンク)
あまり明白な事だからか、誰もあからさまに言わないけれどもこれって明らかに「ドラえもん」を下敷きにしているのだろう。
国民的マスコットで、ひたすら一般的庶民の口に合う「ほのぼの」物語にしか登場しないキャラクターを使って、ちょっとこう陰翳のある世界を紡ぎ出してあるのがよい。あっ。これは歴としたポップ文学です。高橋源一郎『ペンギン村に日は落ちて』という作品もある。(海)(この票の参照用リンク)
面白かったです。ひっくり返すのではなく、うまく捻じられたように思う。作者の積み立てを、こういう風に使うのもありなんでしょう。
「私」の情けない感が、ちょっといいなあ。(この票の参照用リンク)
何かが足りない気がするが、好みで。(この票の参照用リンク)
SFの王道的なオチが、きれいにまとまってると思ったので一票。(この票の参照用リンク)
ざっと読んでみて、この作品がいちばん印象に残ったので。
わからない部分がありつつも、惹かれたのだから票を入れておくべきかなと。(この票の参照用リンク)
繰り返されるフレーズが、まるで詩のように美しい作品だと
思いました。
「君」の正体を、更にぼかしたら、文句無しに素晴らしい。
幼い頃の夏祭りの想い出が、ふわっと香って、心に残ります。(この票の参照用リンク)
この人の言語感覚は相変わらず私の手の届かないところにあるので
羨ましい限りです。普段はなるべく票を入れないように努力しているのですが
「美しい女は愛された女であるなんて言われるが、彼女達は人を愛したのだろうか」
『そう。じゃあ、あたしは作るわ。あなたに、あたしに、服を作るわ』
なんて書かれたらもうどうしようもないというか、なんというか。(この票の参照用リンク)
他の詩的な作品群にはなんだか煙に巻かれたような感じがして、この作品を読んだ時その観念的でない内容に心底ほっとしました。
面白かったです。(この票の参照用リンク)
この久遠さんの作品には、反対票もあると思う。
でも私はあえて推す。
情景描写で「作品です」と提出してしまう作品を見かけるけれど、私は、1000字といえども作品にはストーリーが欲しいと思う。
作品がはじまった時と終わったときでは、何かが全然違わなくては。
で、この作品は、1行小説で情景描写になっている。だけれどこの「静的」情景に至るまで、絵的には相当「動いていた」のだろうし、この眠りから目覚めれば画面はまた動くのだろう。
動きと動きの間に挟まれたわずかな時間の静的情景描写。
そういう意味でかなり動きのある作品だと感じています。
「静」を描いて、描かない「動」を想像させる作品。
私は、この作品を1番に推します。
だいたいモチーフが私好みだしね。(み)(この票の参照用リンク)
おや?
この作品はどこかで似たようなお話を読んだことがあるぞ?と思ったら、同じ作者の作品でした。
読んだのは3年前。お話は、今回とは立場が違って飛ばされたカプセルの中の子ども達がそれぞれ通信しあっている様子を描いていたものだったような気がします。その時も「花火の子」という言葉がありました。
黒木作品の中ではひとつの出来上がった世界なんでしょう。
ひとつの確固たる世界を持っていると、視点を変えて多角的に表現することが出来ます。
前回のドールハンターを推そうと思って、投票自体をさぼってしまった。
だからという訳じゃないけれど、この作品を推します。(み)(この票の参照用リンク)
全体的に雑な印象があり、書かれている題材も内容も会話もどこかできいたようなものではあるのだが、しかしながら、妙にひかれる。(この票の参照用リンク)
井上ひさしだったと思うが、「人間の情念なら小説は描ける」というようなことをいっていた。この文章の前に「人間の○○は描けないが」という文章がついていたのだが、○○がなんだったか忘れてしまった。
海坂氏は他の人がいうほど、文章が上手いわけでも、小説のつくりが上手いわけでもないと私は思っている(これはようするにもっと上手くできるということでもあるわけだが)。
この作品も欠点に目をむければ、いろいろとあるのだが、けれども、それは些細なことだと思える。なぜなら、ここには「人間の情念」が描かれているからだ。
私の考える情念とは、色欲のことではない。やむにやまれぬ想い、理性で押さえつけてもなおにじみ出てくるものである。
「エンジェリング」もまた同様に情念を描けているのだろうとおもった。(この票の参照用リンク)