第24期予選時の、#27遠雷(市川)への投票です(4票)。
一見くどくて暗い話になりそうだけど、すごく説得力のある作品だと思った。お腹いっぱいな気持ちになる学生演劇っぽいのを想像して読み始めたけど、全然そんなことは無かった。
参照用リンク: #date20040804-181016
「猫の記憶」とどちらを選ぼうか、最後まで迷いました。
音がいろいろなイメージを喚起させていく過程の描写が、とてもなめらかで、変にひっかかることなくどんどんひきこまれていきます。
話者が境界線上で、なにげなく立って俯瞰しているような、自分の淵をのぞきこんでいるような。
参照用リンク: #date20040803-052713
上手だなぁと思った作品群、「少年」「遠雷」「恋人」「あの日のバスはもうこない」。この中から「遠雷」を選びました。優劣はありません。作品の中で『死を削る』という所が面白かったからです。
私は、生死は境目なく繋がっているものという感じを持っています。世の中に「死体」はあっても、何処からが「死」なのか釈然としないなぁと思います。ですから「人生を擦り減らす様な」では足らずに、さらに続いて死をも削るとはどの様な生き様なのだろうと面白い視点を頂きました。
参照用リンク: #date20040731-023625
22期の前作に対しては「多和田葉子のようだ」などと血迷い言を口走ってしまったが、今作は一転、古井由吉の短編-『聖耳』あたりの-を、個人的に想起したりもした。静寂の中で空き缶の音が鳴り、それが雷鳴のように主人公の内面で響き渡っていく、その感じとめ方のプロセスを一方で追いつつ、もう一方で、そのような思考を繰り広げていく主人公自身を描写することも忘れていない。「冷房に弱く冷やされた部屋の、薄い空気を吸い込んで、膝の間に顔を埋める。」そしてその二つの描写が、最後の一行、「血の音」を介して混じりあう・・・技術的に見てもすぐれた作品だが、この筆者については、むしろ、内省する力の強さと深さ、暗がりの中で研ぎ澄まされる五感の繊細さ、に着目したい。「皮膚が震えざわめき立つような風」、といった感覚的な描写、「彼は身近にその音を置き、常にそれを聞きながら、どこかの淵に立ち続け、自らを削ぎ落して音を生んでゆく」という省察の深さに、この筆者の感受性の鋭さは十分うかがえる。(でんでん)
参照用リンク: #date20040730-133105