第58期予選時の投票状況です。16人より34票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
19 | メフィストフェレス | qbc | 9 |
16 | 僕と猫 | たけやん | 5 |
18 | きれいな円が描きたい | 三浦 | 4 |
23 | くろぐろとうろこを | るるるぶ☆どっぐちゃん | 3 |
24 | 線的虚構の解体(おためし版) | 曠野反次郎 | 3 |
21 | 美空ひばり評 | わたなべ かおる | 2 |
4 | スペース・リビドー | 灰人 | 1 |
6 | 爪 | 仙棠青 | 1 |
10 | 例えば千字で刹那を | 黒田皐月 | 1 |
12 | ジョー淀川 vs 峰よしお | 頭をわしづかみされるハンニャ | 1 |
14 | 晴雨 | 白雪 | 1 |
20 | Dreamer | 群青 | 1 |
22 | 部活動生22 | 壱倉柊 | 1 |
- | なし | 1 |
わるくてかっこいい。(この票の参照用リンク)
過不足なく良くできている小説だと思います。(この票の参照用リンク)
グロテスクな妄想を抱える中年女。一歩間違えれば気持ち悪いだけで終わってしまいそうなものだが、文体の力で軽妙に跳ね回っている。変な文章だ。面白い。(この票の参照用リンク)
これだけ票が入ってればもう十分でしょうqbcさん、とか思いながら、やはり今期はこの作品に一票入れないといけないという気持ちになりました。お気に入りはやはり「この日本酒は私が呑んでもいい日本酒でしょうか」以下三行の流れ。そこだけ良かった、というのではなく、そこで簡潔に物語が引き締まる感じがします。(とむOK)(この票の参照用リンク)
一つのお手本と言えるような、よくできた作品だと思いますし、偶然うまくいったと感じさせないところがあります。(この票の参照用リンク)
もぐらさんの『僕と猫』の感想にジブリのアニメという表現がありましたが、それを拝借するとこの作品は高畑勲がやりそうな人間観察があると思います。メフィストの耳と犬歯がのびるところなんかはかなり具体的に絵として思い浮かびます。もちろん主人公が観音様に変化するところも出て来るでしょう。
文章を追ってさえいれば過不足なく情報が入って来て、尚且つあれこれと想像させる余白は残しておく、というまさに読み手に優しい作品だと思いました。まいりました。(三浦)(この票の参照用リンク)
票なしにした方の意見は、賛否問わず貴重だと思う。
個人的には、不条理文学以前に内輪的匂いに疑問を感じていた。
趣味の言葉で片付けられたら、それまでだが、
このサイトのみしか成立しない作品はどうかと思う。
「るるぶ☆どっくちゃん」さんと「qbc」さんは、
自分の世界観と文体を確立している。
「メフィスト」に一票。
気になるのは、センテンスの長さ。
意図的かもしれないが、統一させた方が良いと思った。
共感できる心理を分かりやすい描写で表現できている。
他の作品よりも、物語の魂を捉えた点が抜きん出ている。
読み終えた後、爽快感があった。(この票の参照用リンク)
今期はこの作品が抜きん出ている、との評が海坂さんから寄せられていますが、当方もまったく同感です。この作者については、人間を観る目にブレがない、という意味のことを以前書きましたが、今作でも、曲者たちの風貌は実にしたたかに立ち上がってきます。刺すようなアイロニー、黒い諧謔の奥で、人間に対する作者の生き生きとした関心が脈打っているのを感じます。一点買いです。(でんでん)(この票の参照用リンク)
私の見るところ、今期作品の中では、一つレベルが違っていたように思います。作者の過剰な主観を押しつけることなく、作品世界における現実が「言葉」によってしっかり構成されています。小説を読む愉しさとはこういうものだと言いたくなりました。(海)(この票の参照用リンク)
余計なものがない。かと言って物足りないかと言えばそうでもない。この微妙な長さのせいで、何度も読み返してしまいました。(この票の参照用リンク)
こういうのを感性の差というのか、私はついついこまごま凝ったものを書いてしまうのですが、たけやんさんのふわっと書いているようで要所を押さえて最後まで飽きさせない、味のある文章がうらやましいので、一票です。(とむOK)(この票の参照用リンク)
人語を解するのに、それを使ってすることが万年筆の金魚を呪うというのが面白いです。これは、猫語を解する主人公という設定だった場合には成立しないおかしさだと思います。
あと、
なあ、気が滅入るからやめてくれないか?と声をかけると、すぐに静かになった。
振り向いて猫を見ると、黙ったまま僕の方をじっと見ている。
この二行が好きです。
これは、この小説を書きながら猫に声をかけ、思ったよりも早く静かになったので気になって原稿用紙から顔を上げ、振り向いた、という描写なわけですが、主人公が万年筆を使って文章を書いているという事実が明らかにされるのは小説の終盤で、なぜ猫がいじっているものが万年筆なのか? という序盤の疑問への答えが実はここで明かされている(ようなもの)というのがいいです。
とは言っても、原稿用紙から顔を上げ、気になって顔だけ振り向いて、今度は体ごと猫の方を向くという動作が暗に見えるというのが読んでいて楽しいという方がメインです。(三浦)(この票の参照用リンク)
肩の力抜けてんなーという感じがよかった。(この票の参照用リンク)
論理的ではない話ではあるが、そこに柔らかみがあって良いと思う。
余計なものを描かず、余計な展開を求めないその見極めは、実は相当のものなのかもしれない。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
小説を読んだなあという気持ちになってとても満足しました。(この票の参照用リンク)
架空の風習を淡々と、味のある書きかたをしていて素敵です。
作業を書きながらもその作業に密着していて、単に外面から様子を書くだけに留まっていない。いやまあ一人称だからあたりまえっちゃーあたりまえですが。ちゃんとその地域の人に密着しているというか、クサいこと云うなら愛のある書きかたをしていて、良かったです。(この票の参照用リンク)
そういえば禅の修行の一つ(?)に「円を描く」というのがあるんだそうで、精神が練れてきた高僧の描いた円は、何とも言えない味があるというわけで、掛け軸になって茶室に掛かっていたりもします。
円を描くという風習に「一揆の首謀者を判別するべく藩が」云々という由来をつけたあたり、格段に手間が掛かっているなあと思いました。伸ばせばちょっとした短編になりそうな奥行きを感じます。(海)(この票の参照用リンク)
きれいな円を描くことだけでも、それは人間の心理を表し、揺さぶることだと思う。その上にそのことの由来を乗せて物語にしているのだから、綺麗な作品だと私は思った。
やましいことがあると心が揺れて、描かれた円は歪む。素晴らしい着眼点である。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
るるるぶさんの文体には、先人の模倣である部分がたしかにあるのかもしれないが、一方、本人の修練による部分も否定はできないように思う。あとは、文体に頼らない、中身のある文章を書いてもらえれば、と。(この票の参照用リンク)
久しぶりに何度も読み返した。(この票の参照用リンク)
「意味の分からない内容で茶を濁す不条理文学が評価されるのは、正直なところどうかと思います。評価する側の目も、このサイトにおいては養っていかなければいけません」
と、今期の<投票状況>にあった感想(批評?)を興味深く拝読。私の押す「くろぐろとうろこを」はまさにいわゆる一般的な小説と比べれば「意味のわからない」「不条理文学」であると思う。川を歩いている男がなんなのか、トーマって誰だ? めくらの女とは? ずっとうそを聞きつづけてきたって? たしかに意味がわからない。
でも私はこれを読んで「美しいなあ」と思った。真実を追究しているじゃないか、と。作者の言いたいことと読み手のこっちの理解が等しいかどうかは別として、たとえば絵の具を垂らしただけのアメリカの絵画技法があるじゃないですか。作者の主張なんてものは絵の具にまみれてちっともわからないが、なんだかいい。モームの短編やヘミングウェイの短編の、きちんとしたオチ、スピード、意外性があるのもいいけれども、「くろぐろとうろこを」のような形式だって立派にある。むしろ、不条理を貫きつづけている作者には敬意を表すべきであって、作品が読めることを光栄に思っている。(この票の参照用リンク)
大阪弁が楽しかったので、と、妙な理由ですが、票を入れます。(この票の参照用リンク)
「前期作品を内包していくことにより」と書いてしまうことで前期作品を内包してしまったり、ツチダさんの『第10期感想一番乗り』を持ち出して来ることで自分の作品の限界を超えてしまったりするのは読んでいて爽快です。(三浦)(この票の参照用リンク)
つまり絵画におけるエッシャーの絵やマグリットの「パイプ」を短編において挑戦してみようとしているのだろうか? あるいは1979年にホフスタッターが書いたアメリカのベストセラーのパロディだろうか?
次のるるるぶさんの登場はおそらく「るるるぶさんは人工知能ではないだろうか」というテーマな気がする。
話としては正直いただけなかった。あまりに説明的すぎて、学校の授業を聞いているみたいだったから。だけども、何か「くろぐろとうろこを」にも通じるけれども、あらのさんの前のめりの姿勢に共感する。
(この票の参照用リンク)
「リンゴを選ぶとき」みたいに
無駄に考えすぎてないすなおさが
良かったです。(この票の参照用リンク)
「父の言葉に感嘆し、その言葉を繰り返すときだけ、わずかに父の温かさを継承しているように思える」の心情が好きだと思った。
同じことを連ねているだけかもしれない。しかしそれが悠然と連なり当たり前のものとして在るものになっているように、私には見えた。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
ちんこを力いっぱい投げたら星になった話をふと思いついてついカッとなって書いたんじゃないかなと思った。わからないけど。
素敵。(この票の参照用リンク)
カレーに屹立する爪。微妙な虚構の生かし方が素敵でした。
後半の流れがもったいないというような感想を掲示板で書きましたが、やはり文章が整ってきれいです。帰結点については好みの問題でもあるかと思いますし、あまりに現実的と思いながらも、「ぴたっと降りている」感じがあります。堅実です。(とむOK)(この票の参照用リンク)
この作品はとても説明的な文章に思えるのに、不快じゃない。電磁波を用いての超短時間の計測に挑む男のひとりごとである。だけど、何か落ちついて読める。説明的なつくりばなしを読むよりもいい。わかりやすいオチやテレビCMのような話よりも、作者独特の歪みが気持ちいい。毎回なんだか同じような話を読んでいるような気もするけれども、少しじつこの作者は螺旋階段をのぼっているように思える。
(この票の参照用リンク)
勝負を真っ向から受ける部長の心意気に感服。「貴様に選ばせてやる。Mサイズか。それともLサイズか」に笑。(この票の参照用リンク)
一行空けうぜぇと思いつつも惹きこまれずにいられなかった作品。
日常の中の異界というか、普段の景色がふと別の場所に繋がっていた、というような感覚が好きです。日常でありながら祭の空気、というか。ううん、うまく説明できない。とにかく、好きです。(この票の参照用リンク)
どっぐちゃんさんぽい。
いろいろまとまってる。
すなおです。(この票の参照用リンク)
一般に夢というものは言語化するのが難しい、と言われています。言い替えれば、言語化すると必然的に私たちが実際みる〈夢〉とは別物になってしまうということです。
つまり小説に夢を書いてはいかんという話ではなくて、書かれた夢はそういうものとして効果を判定されるべきだということになるでしょう。さらっとした文章ですが、この明晰に表現された「夢」もいいし、醒めた後の描写もちょっと漫画風ではあるけれども、生き生きしていて素敵だと感じました。(海)(この票の参照用リンク)
短編において何が大切か分かりますか? 「オチ」「スピード」「意外性」です。特に、「オチ」については、このサイトの投稿者のほとんどが全く理解できていないように感じられます。
要するに、どこで落ちているのか分からない。
(勿論、一読者としての意見です。無視していただいて結構です)
過去の優秀作品をみても思うのですが、意味の分からない内容で茶を濁す不条理文学が評価されるのは、正直なところどうかと思います。評価する側の目も、このサイトにおいては養っていかなければいけません。よく考えてみてください。その作品を読んで、何か自分の心の中でスイッチが押される音がしますか? 私は、そういう作品を読みたいし、評価されて欲しいのです。
(この票の参照用リンク)