第58期 #4

スペース・リビドー

 ぼくはきのうぼくのちんこを切り取りました。空に向かってちからいっぱい投げたらキランと光ったので星になったのでしょうたぶん。

 エレベーターガールのかわいいおねえさんはかわいくて、ぼくはむしろエレベーターガールになりたいとさえ思いましたが、そんなかわいいエレベーターガールのおねえさんでも、やっぱり若いおんなのひとでやっぱりかわいいので、彼氏とかいて晩にはセックスしたりするのでしょう。
 かわいいおねえさんのえたいもしれぬ穴に、どこかのくっきょうな男のちんこがでたりはいったりして、おねえさんはああいいとかいいながら、こころの中ではああやっぱりこいつへたくそとかおもったり、そんなすったもんだのあげく疲れて眠って、朝にはベッドの上で、だらしないマラソンランナーみたいなねぞうで、くたっとなっていたりするのでしょう。(ぼくのいもうとは、ちいさい頃よくそんなマラソンランナーみたいなねぞうで寝ていたものでした。今はしりません。比較的おとなしくなってしまっているのでしょうか。棒高跳び選手のようなねぞうでいてくれたらと言うのは、おろかな兄の願望でしょうか)
 でもぼくのちんこは、ゆうだいなうちゅうに独り漂っているので、そんなぼくの、かわいいおねえさんにたいするリビドーのことなど、知ろうはずもありません。
 いまごろきっとあおいちきゅうを眺めて、アンドロメダをめざして、流れ星。


――ちんこへ

 げんきですか? ぼくはげんきです。うちゅうはとても寒いと聞きました。あったかくしていますか。きみはいつもぼくのからだの中でもとくべつにあったかくて、ふゆなどねるときに掴んでねるととてもぐあいが良かったので、その点ではあんまり心配していません。今日はゆうひがオレンジできれいでした。きみの所からはゆうひはみえないだろうけど、うちゅうはきれいですか? またおたよりします。かしこ。


 ぼくはもうちんこがなくてまっとうな男ではないので、手紙のおしりに「かしこ」と書くことができるようになってよかったなあ。

 宵空に瞬いたのは、一番星ではなかった。



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