第92期予選時の投票状況です。12人より31票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
15 | ふとん幻想 | 彼岸堂 | 5 |
8 | せざく | 金武宗基 | 3 |
18 | 水面下の夢 | 壱倉柊 | 3 |
21 | 海辺の六助 | 宇加谷 研一郎 | 3 |
25 | 輪 | 高橋唯 | 3 |
26 | ビームズ | るるるぶ☆どっぐちゃん | 3 |
4 | 『綺羅』 | 石川楡井 | 2 |
6 | 雪 | 吉田佳織 | 2 |
2 | 名付け親ゲーム | 朝野十字 | 1 |
5 | 仕事が憎い今日この頃 | 名乗るほどでも… | 1 |
7 | 終了宣言 | 岩砂塵 | 1 |
10 | ども、武者小路実篤でーす | Revin | 1 |
11 | 『競作』 | 石瀬 醒 | 1 |
13 | 赤い動機 | 近江舞子 | 1 |
16 | 白い雨 | 謙悟 | 1 |
12 裏道 と迷ってこちらに。布団が好きだから。by エム✝ありす
by エム✝ありす
by エム✝ありす(この票の参照用リンク)
え、何すかコレ楽しいなぁ。すごく好きです。
柔らかい布団を抱くと、ガチで『「おっふぉっふぉ」』ってなりますよね。試験前の徹夜中とか、布団自体が磁場を持ちますもん。吸い寄せられる。文章も好きですが、多分、私は布団自体が好きなんだなぁ。何にせよ、何か(+−の感情・欲求)を強烈に滾らせるものを読むと、筆者の確かな文章力を感じます。
もし、1000字丸々“布団(及び飲食物)への愛・欲求”でも十分楽しめる内容でしたが、『苦々しき幻想』で、一瞬“欲望”から突き放されるのが本当にいい。何これツンデレ?いやデレツンか。(この票の参照用リンク)
干した布団の気持ちよさが実感とともに流れ込んでくるとてもうまい文章だった。理屈じゃないところで激しく感動した。(この票の参照用リンク)
太陽の光を柔らかく溜め込んだ布団
ほぼ、これだけで投票を決めてしまいました。
1000文字書いてあるのにすみません。(この票の参照用リンク)
心地よさの中に、突然おそってくる不安。心地よさは心地よいままではいられず、その深層にはつねに、不安が担保されているのか。だから心地よい昼下がりは、どこか後ろめたかったんだな。(この票の参照用リンク)
文字そのものの語感と八重の「はい」三段活用がよかったです。(この票の参照用リンク)
「るるるぶさんと金武さんの作品の類似性について述べていた人がいた気がします」というご指摘が今期「ビームズ」投票感想にあったのですが、述べていた人というのは私のことでしょう。作者作品について、どう思おうが私の勝手だと考えているので、とくに論じあうつもりもありませんが、金武作品に投票するついでにその類似性についても触れておきます。
・・・
るるるぶ☆どっぐちゃんと、金武さんの作品は最初のころ「同一作者か!」と(両者に対して失礼ですが)思ったものです。今ではその感想はすこし変りまして、
描かれているテーマの深さ、宗教文句をたくみにあやつり1000文字を油絵のキャンバスのごとく使う点、アートとしての奇抜さ。(金武さん)。
描き方の上手さ、カットさばきの見事さ、デザインとして使われる言葉のセンス、映画的な手法の文字化という特徴(るるるぶ☆さん)
という風に特徴分けしてます(自分内評価)。
逆に両作者の共通印象として変らないところ、つまり「類似性」は、両作者の作品を論じようとすると各論ではなく作者論になってしまうという点。この点においては、私の場合にかぎらず、「短編」の投票感想を読んでみるとわかりやすい。
るるるぶ☆どっぐちゃん、金武さんともに、作品についての内容ある感想が非常にすくない。「言葉がつきささった」とか「センスがいい」とか、断片のみをとりあげての評価が目立つ(もちろん私も作者論の感想しか書けません)。
……しかし、そういう感想は読み手のレベルの問題というより、そもそも当然の結果でもあって、お二人のつくるのは散文による「お話」というより、ある種のイメージと飛躍のつながりだけで描かれたものが多く、「小説」としてどう評価していいかわからなくない。本来ならばこういうのは定型をもたない自由詩とよばれるべきで、従来の基準では小説とよばないからだ。まあ、新しい可能性というべきなんでしょう。その新しさに触れられるのも「短編」の魅力でもある。
というわけで、私はお二人の作品に相変わらず類似性を認めているし、あるいは、前述のようにお二人の差を自分なりに見つけている。
で、「投票」するにあたり、今回は私のなかで「ビームズ」より「せざく」のほうにグッとくるものがあったのでこちらに投票する。
具体的にいえば――といっても、金武作品を具体的に論じるなど鼻からあきらめているが――、この意味不明の作品の、これだけの意味不明さは前代未読であるところがすごいです。この「せざく」を声に出して読んでみました。おそらく作者本人も、「朗読」などしたことないでしょうし、おそらく私が世界で最初で最後かもしれない。
……朗読してみるとわかるんですが、この「まったく意味不明、しかし、なにやら混沌とした非常にエネルギーのあるなにか」を読み上げてみると、なかなかおちつくんですよ。とくに中盤以降の
かっぽれ! かっぽれー!!
ア、モレーノ!!
ミ アモレーノ!
あたりのところなど。そして、全文読み終えると、なんだか情念が浄化された気がしてくる。
では、他の作者の作品ではどうか。ほかの作品だったらこんな気持ちよく読めませんよ。なぜならば、まず文字と文字に伏線があったり意味があったりするので、読もうとすると文字を読みあげるというより、意味を追ってしまう。リズムには定評のあるるるるぶ☆さんの作品ですら、今期の「せざく」のような朗読後の爽快感はない。たぶん「ビームズ」は内容的にめちゃくちゃな「せざく」に比べるとはるかに文章に背負っているものがあるんでしょう。「ビームズ」は寓話にちかいものになっている。
そういう意味では今期一番朗読に適しているのは、究極に無内容なこの「せざく」につきるでしょう。こんなに無意味・無目的な文章をつくれることに感動する。そして、お経を読んでいる気分になる朗読後のこの浄化作用はなんだろうか、と考えてみると、実は使われている単語が、まず普通の作者は使おうとも思わないようなものなんですね。
人馬に骨身が染み至り、
されば蟹食い、
よしにてかたま、
とか。これ、なに?
どこからこんな語彙がでてくるのだろう、というようなのがいっぱい。たとえば誰かが金武さんみたいに書いてみようとしても、おそらく使う語が文学的にダサくなるでしょう。めちゃくちゃだったらなんでもいい、ってわけじゃない。むしろ、めちゃくちゃのつもりのところに作者の無意識がたちあがる。
あと、この作品「せざく」を読みながら、村山かいた「尿する裸僧」という絵がどうしても頭に浮かんできて離れない。22歳で亡くなった、あまりに惜しい異端児・村山かいたは、どことなく金武作品の挿絵につかうならピッタリと私は思いますね。
ああ、このカンヴスの感性は
天才誕生の美しい曙だ
見よ、日本国全土の幸福を
俺はここに製作しつつある。
……これも村山かいたの詩ですが、かいたを彷彿させてくれた作品「せざく」、一般受けしないと思うけれども、この迫力は今期の誰にもだせないものでした。
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擬音語か、古語か、何なのかよく分からない言葉の連なり。言葉が壊れていく心地よさ。もともと言葉(言語)が孕んでいる、対立や緊張がつかの間ほぐされた感じ――温泉に浸かったような。でもふたたびの、対立の予感も。(この票の参照用リンク)
当方時間切れのため、まとまった感想が書けません。この作品には好きなところと、きらいなところがありました。好きなところは、この作品を折り紙にたとえればいくつか折り返しがあって話に層があるところでしょうか。時間の流れが感じられる作品はイイですねえ。部屋の色を塗るエピソードところとかも小説になっている。
きらいなところは……(笑)、まあ、個人的な嗜好、ということであえて投票理由にすることもないので省略します。
(しかし、かりに<釣りサークルとみせかけてラグビー部へ>みたいな、設定、すこし病んでいる女性という設定は、やはり、このとおりでなければいけなかったんでしょうか。このひねりかたについて、私は疑問をもってしまうなあ。まあ、きわめて流行的ではあると思いますが……。)
こういう作品を読むと、たまに起こる突発的な気分として
「作者とサシで話し合いたい」
とか、思ってしまいますねえ。純粋にこの作品のことだけを話し合いたい。つまり、自分も実作者の一人として踏み込んでいきたい。まるっきり違う作品につくりかえてしまいたい衝動におそわれる。
――それくらい、好き嫌い感情をひきおこす作品でした。いい刺戟になる。
私のなかでは十分に決勝レベルの作品だと思います。この作品の感想などを、いろんな方に伺ってみたいですね。
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ふんだんにネタももりこんでこの完成度はすごい。オチまでまっすぐ線が通っていてあまり寄り道せずに進んでいるのに退屈しない。(この票の参照用リンク)
きちんと出来ているキャラクター小説。
千文字以内でしっかりエンタメと恋物語を両立させていて、読後感もとてもよい。(この票の参照用リンク)
楽しかったから。by エム✝ありす
by エム✝ありす
by エム✝ありす(この票の参照用リンク)
ミュージカルのあらすじを眺めるような面白さ。キッチュな群像劇ですね。何ですか、『生姜モナカ』って。(この票の参照用リンク)
感想として語ることが一見してあまり多くないから軽視されると思う。でもこれを書けるかと言われて書ける人はそうそういないとも思う。(この票の参照用リンク)
この方の作品はいつも上手いけれど好きになれない、とずっと思ってきたのですが、今回
「器具を組み込むような音を立てて卵が床に落ちた。」
がすごく感覚的に理解できて怖かったので、一票。
話としてはやはり上手いけれど好きになれないです。
なんとなく悔しい。(この票の参照用リンク)
いったんは「なし」とも考えたが、一人気を吐いている高橋唯に敬意を表し、投票する。
濃密で的確な描写。錯綜する複数の線をよどみなく処理しながら並行して追う技術の確かさ。ぴんと張った弓弦のような文体。この書き手のこれまでの作品とは明らかに一線を画した、高度な達成がここにある。そしてどの行からも、小説を書くことに対する、深く切迫した愛情を感じとることができる。ともあれ、愚にもつかない、作文とすら言えない駄文であふれかえった今期、本作が突出していることは疑いない。
一方、物語としては、まだとば口にとどまっているように感じる。この小説では不吉な暗示だけで終わっているが、静止した天秤が再び揺れ動き始める瞬間こそを、一読者として息を殺しながら待ちたい。(でんでん)(この票の参照用リンク)
テーマはリング
リングに かけろ
他の作品の感想は(腑抜けども腰抜けの愛をみせろ・パクリ)でおわるから
みんなセックスの虎馬なんだね。生まれた時から。
ひのえうまデスカ。
(この票の参照用リンク)
以前に金武さんとるるるぶさんの作品の類似性について述べていた人がいた気がしますが、詳細は完全に忘れましたが、違いますよね。ぜんぜん違う。
ことばが足りないのと、ことばを間引くのではぜんぜん違いますよねえ。(この票の参照用リンク)
朝6時
テレビの時間
ライトキャンドル 床を鳴らして
レニーブルースはおそれちゃいない
ブレネンコ フルシチョフ バーンスタイン
そうだろ
そうだね
R.E.M. Itstheendof the world asweknowit
(and i Feelfine)(この票の参照用リンク)
ひねくれた先にある、まっすぐなメッセージ。いや始めから、ずっとまっすぐだったのかそれは知らないけど。むしろまっすぐであることが、実はひねくれていることかもしれないけど。なんにせよ、最後の言葉が、胸に突き刺さってきたので。(この票の参照用リンク)
「綺羅」てタイトルもかっこわるいし「射精」も嫌だけど、うまいから。by エム✝ありす
by エム✝ありす
by エム✝ありす(この票の参照用リンク)
小林泰三的な倒錯感が楽しめました。小林作品は角川ホラー文庫でコンプリートしており、本棚の一画がごそっと黒い程度好きです。
“エログロ=闇”っていうのが一般的な感覚だと思いますが、文章全体に『光』『輝き』『綺羅』『星々』とメルヒェンな単語が散りばめてあることにより引き起こされる“違和感”が新鮮に感じられました。この春も、甘辛mix♪的な、コントラストを楽しむような。
(この票の参照用リンク)
次の作品も読みたいと思いました。(この票の参照用リンク)
まともです。 近江は80年代の田舎臭さがボディコンシャスだ。(最高!)
何気ない中にあるのをみたのは俳句を読めない僕でした。
(奥が深いらしいよ、俳句。)
だいたい名前の付け方でイメージは全然ちがうよね。
これがペンネーム
赤血 ミワZA子 とかだと
…逆に、 「…めっちゃいい。」
いやいや、腐女子のやつダヨ!
吉田姓に一票でした。 (きん)(この票の参照用リンク)
ウェブサイト朝野十字の一読者としてならば、「新之助」の名前に(おお、あのイラストの新之助)と思ったりするかもしれませんね。つまり、朝野十字は(私のなかで)信頼できる作者、というブランドなわけです。
が、まあそれはさておき。「先輩が後輩にあだなをつけている」という設定だけでさらっと1000字を書けるってのは、相当な筆力であり、うらやましい能力だと思う。
「小説教室」に通っている人の書いた小説は「作者と思われる主人公が自分の恋話についてブンガク的にアーデモナイコーデモナイと悩む」話が多い、という話をその筋の人に聞いたことがあります。作者にとっては書きやすい話でも読み手にとっては赤の他人のクサい話なんか(よほど藝のないかぎり)読みあきる、ということが多々ある。まあ、そこを読ませるのが文体力なんですが。
朝野十字さんのこの作品はそんなありがちの「私小説臭」がまったくない。ぞくにいうユーモア小説なので、おそらく多くの読み手はさらっと読みおえて、ははっと笑って、きれいに忘れてしまうかもしれない。でもだからこそ、時間がたって読み返してみても何度でも読めるだけの作品の厚みがありそう。インパクトはないけれども、「私」と「先輩」と「佐橋」さんがのんびり働く職場の描写は疲れているときにでも読み返したい。
私が個人的に好きな箇所は、<佐橋さん>がうつむいてサラダを食べ続け、そんな彼女を「女」として眺める<私>の描写、それにつづいて<先輩>が登場して「隣の柿は……」と呟く一連の場面。行数にして短いところなのに、登場人物三人の特徴が凝縮されている。うまいなあ。このさりげなさが朝野十字の魅力だろう。ブランドは健在だった。
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やぁ〜 わかりますよ。あなたは先生なんでしょうねぇ。
いずれ、生徒たちの、誰からも乗り越えら手しまう。
知識だけを教える。有能な先生なんでしょうねぇ。
すんなり、一度読みで楽しめなかったのが、がっかり。
読み返したらおもしろかった。
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ショートショートという点で見ればこれが一番良く出来ている。
ナンセンスな前提から始まり、作者の思想や人間味を感じさせる締めで終わるのは、古臭いかもしれないが心地よい展開。(この票の参照用リンク)
普通に面白いのに票が入っていないので。(この票の参照用リンク)
読み返して、味が出てきたスルメか、味の一夜干しか、
これ、不条理な小説を狙ったのですよね。人間関係が書けていない。
よくあるのは、親の敵は育ての親、とか、あるいは、知らないひとにはつまらない小説。だが!! 知ってるひとには催眠術をかけてしまう。……いや、この場合はのろいか? 知能の略奪か??
壊滅的被害を与える小説?? なのか?だとしたら 足りないのは、被害を受けた人物描写か?
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唯一、すとんと最後まで読み終えた。文章を聡明に書くちからすごい。うそがないのが物足りないです。視点を固定カメラにして。
まず、朝露の玉を宿すバラの花を飾ってください。とか初めて、
次に、本文、……フラッシュバックの回想、独白
な、なんだ! なんで切花……
え、切花がいやだったのか。そりゃ、言ってくれたら……思い残すことも、……。
なんて構成はいかが? カメラの位置は、死刑台の前。
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エンタメとしてみれば一番。
絵に浮かぶような素直な文章と、コミカルな擬人化がマッチしている。
ナメクジは群れを作る生き物かかどうかなんてのは些細なこと。(この票の参照用リンク)