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第92期予選時の、#2名付け親ゲーム(朝野十字)への投票です(1票)。

2010年5月31日 19時3分37秒

ウェブサイト朝野十字の一読者としてならば、「新之助」の名前に(おお、あのイラストの新之助)と思ったりするかもしれませんね。つまり、朝野十字は(私のなかで)信頼できる作者、というブランドなわけです。

が、まあそれはさておき。「先輩が後輩にあだなをつけている」という設定だけでさらっと1000字を書けるってのは、相当な筆力であり、うらやましい能力だと思う。

「小説教室」に通っている人の書いた小説は「作者と思われる主人公が自分の恋話についてブンガク的にアーデモナイコーデモナイと悩む」話が多い、という話をその筋の人に聞いたことがあります。作者にとっては書きやすい話でも読み手にとっては赤の他人のクサい話なんか(よほど藝のないかぎり)読みあきる、ということが多々ある。まあ、そこを読ませるのが文体力なんですが。

朝野十字さんのこの作品はそんなありがちの「私小説臭」がまったくない。ぞくにいうユーモア小説なので、おそらく多くの読み手はさらっと読みおえて、ははっと笑って、きれいに忘れてしまうかもしれない。でもだからこそ、時間がたって読み返してみても何度でも読めるだけの作品の厚みがありそう。インパクトはないけれども、「私」と「先輩」と「佐橋」さんがのんびり働く職場の描写は疲れているときにでも読み返したい。

私が個人的に好きな箇所は、<佐橋さん>がうつむいてサラダを食べ続け、そんな彼女を「女」として眺める<私>の描写、それにつづいて<先輩>が登場して「隣の柿は……」と呟く一連の場面。行数にして短いところなのに、登場人物三人の特徴が凝縮されている。うまいなあ。このさりげなさが朝野十字の魅力だろう。ブランドは健在だった。

参照用リンク: #date20100531-190337


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