第28期予選時の投票状況です。15人より35票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
23 | ユミに会いに行く | (あ) | 7 |
19 | 睡眠革命 | 江口庸 | 4 |
24 | 耳 | 曠野反次郎 | 4 |
1 | 私の人形はよい人形 | 黒木りえ | 3 |
11 | 午後のかほり | 神藤ナオ | 3 |
8 | 告解 | 朝野十字 | 2 |
12 | octopus garden | とむOK | 2 |
16 | 環境に良い石鹸 | Nishino Tatami | 2 |
21 | 少年時代 | 三浦 | 2 |
22 | 屋島トワイライト・セレナーデ | 野郎海松 | 2 |
3 | 熱力学第二法則 | 安南みつ豆 | 1 |
10 | 泥濘 | 戸田一樹 | 1 |
17 | 慰弔 | サカヅキイヅミ | 1 |
25 | トンネル | 朽木花織 | 1 |
「そんなことをするのは初めてだったけれど、心からそうしたい気分に私はなっていた」という最後の文が、何とも絶妙というか、いかにもらしくあり、また感情のこもった、いい言葉だと思いました。(この票の参照用リンク)
この作者さんの作品をまた読みたいです。(この票の参照用リンク)
人がそれぞれ生きているのがすてきです。
草が生え広がるくらいのスピードで広がっていく感じです。(この票の参照用リンク)
大きな時間と空間を感じさせる物語に、つい心惹かれてしまう。その物語が小さければ小さいほど、感嘆の思いは大きくなる。
本作において、読者は「私」に寄り沿い、飛行機、船、タクシーを乗りついで、はるばる南の島を目指していく。ついに「ユミ」と再会し、長旅が報われたことを知って顔をほころばせながら、ずいぶん遠くへ来たもんだ、と呟く。
そしてもう一度物語を振り返ってみた時、そこに書き記されている言葉が、最初に感じたよりもずっと少ないことを知って驚くのである。 (でんでん)
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こういう「幸せから幸せにいく話」は正直苦手なんですが、これは何故か受け入れられた。上手いなぁ。
今回どれに票を入れるかあまり迷わなかったんですが、「人形」「慰弔」「石鹸」あたりにも票を入れたいと思った。(この票の参照用リンク)
これは上手いですね。文句のつけようもなく、素敵な小説でした。タイトルも良いですね。(この票の参照用リンク)
前期よりましか。少なくとも投票しようと思う作品がある。(この票の参照用リンク)
なんだかよくわからなかったが、どやどやと読まされた。おもしろかったんだと思う。(この票の参照用リンク)
#19 睡眠革命
もうなんか好きだなあ。どこがいいか説明する内的必要性が自分の中にないので感想が思いつかない。いいもんはいい。(この票の参照用リンク)
野比伸夫に噴いた。キーボードが涎まみれに。
正田悦也に「オイ!」とツッコミを入れる。
こういう本筋には関係ない小ネタってのに私は滅法弱いらしい。(この票の参照用リンク)
私=元山源一というのがぴんとこなかったのとか3にんの名前をもっと判別しやすくしたらもっとよかったのに、と思いつつも、こういう密度の濃い世界は大好きなのであえて一票。(この票の参照用リンク)
最後の一行から、噛み千切られた左耳の存在にイメージを
喚起させられる。
見知らぬ女と一体化してしまったのか、なんというか、
分かるようで適度に分からない反次郎氏の世界観に一票を投じます(この票の参照用リンク)
女の中に包まれ、そしてまた女の中に包まれる。耳は際限無く食い千切られ続け、終わりのはずの精液からまた女が現れ、「かあいそうに」という蔑みとも哀れみともつかぬ声を聞く耳はまた際限無く食い千切られ続ける。輪廻。男は耳で味わった快楽を陰茎によって再現しようとするがそれは不可能に終わり、女の与える耳からの快楽に行き着く。男によっては永遠に手に入らない快楽。かあいそうに。かあいそうに。
両耳をなくしているので輪廻はしないはずですが、そんなイメージが離れませんでした。輪廻しないのであれば、女との決別なのかなあと。(この票の参照用リンク)
なんといってもエログロですから、というかグロですから、
自分の中でも賛否両論がある話。
でも不思議なことに、投票、と考えると、
一票を入れてしまいたくなります。
それはまあ声一つとってみても
「うあぁぁと醜い喘ぎ」「あぅんと情けない声」
「はしたないほどの叫び」「喉元から押し上げられるような叫び」
といった、うえーそこまでするかー、
と人の心をげんなりさせるような言葉の選び方がいいのだと思う。(この票の参照用リンク)
いい。スマッシュヒットだ。「私」と「耳」と「陰茎」の脅威の三位一体が「女」の中で出会う。偏在する「私」と「女」の邂逅を圧倒的な筆致で描ききった。ノワール風味。(この票の参照用リンク)
どう感想を述べたらよいものか。とにかくこの怖さが好きです。(この票の参照用リンク)
投票を忘れそうになりました。あぶないあぶない。
とはいえ今期の優勝はおそらく
『ユミに会いに行く』に決まると思うので、
投票してもしなくても大局に影響はなさそうなのですが。
さて。1,000字より遥かに短い作品が居並ぶ中で、
やっぱりこれです。いや何が綺麗って、
「〜になった」「〜くれる」「〜ことにした」
「〜と思った」「〜なるから」「〜だろうけれど」「〜だという」
「〜ことにした」「〜ことにした」
この文の締め方ですよ。すごいですよ。流れていますよ最初から最後まで。
だからするするっと読めて最後で、えっ、となる。うーむ素晴らしい。(この票の参照用リンク)
奥深過ぎないその内容と病的な世界。おもしろかった。(この票の参照用リンク)
いいですね、会話とか言葉遊びとか。すてきだと思います。(この票の参照用リンク)
いい。命なき銅像の感受性が哲学的でもあり、癒し的でもあり、あるいは単に幻想的でもあり、非常に繊細かつ麗らかである。個性的。(この票の参照用リンク)
独特な世界観が好きです。一文字ずつ繊細に文章を組み立てられ、絶妙なバランスをとっておられる、とお見受けしました。
ただ、「銅製の鉄面皮」という言葉は、すこし、引っかかります。意味合いからすると、「鉄仮面」のような感じでしょうか?
…前回、「またぞろ」の使い方をまちがえた私が言うのもなんですが。(八海宵一)(この票の参照用リンク)
僕の読みに間違いがなければ、この小説、全編これカフカの『判決』のパロディーであり、特に前半部は大胆不敵な引用であって、その心意気にまず唸った。
大きく変更されている点は二つあり、作者の力量もそこでさらに際立っている。
一つは、『判決』における父親の役割が、ここでは母親に転嫁されていることで、物語は末尾、カフカの世界から急転直下、スリラー的結末へと強引に接木されることになる。作者にその意図があったかどうかはともかく、この結末、僕としてはヒッチコックの『サイコ』あたりを連想してしまい、ヒッチコックによるカフカ批判?あるいはその逆!?などという楽しい妄想にしばし浸ってしまった。
もう一つの大きな変更点は、『判決』の中で起こる世界の反転をさらに一歩押し進め、友人が実は自分自身だった(しかも妄想としての!)、というオチまで転換を誇張していること。この転換によって、作者はカフカの短編から重要なエッセンスを摘出した。今作を読んでしみじみ感じたのは、『判決』が隠し持っていたギリシャ悲劇的な(『オイディプス王』的な)本質――自己認識が深まるにつれ、知り尽くしていたはずの「自分」が他者としての相貌を見せ始めること、その恐怖――である。
今作は換骨脱胎、捨て身の本歌どりで、その恐怖を深く浮き立たせることに成功したと思う。(でんでん)
(この票の参照用リンク)
暗いなあ。死んだり殺したりするのははっきり言って好きじゃないんですが、でもやっぱり完成度は高いですね。心理描写などしっかりしていますし。
短い字数できちんと構成を考えて書かれた、基本的(ほめ言葉です)な作品だと思います。(この票の参照用リンク)
不満があります。ですが投票します。
「俺」の思考は少し余計のような気がするんですけど。状況描写だけで十分面白く持っていけると思ったのです。
なんとなく作者が「俺」に透けて出てきていて、作者が思いついた滑稽なことを全部盛り込んだという印象です。
ここはぐっと描写を押さえてもよかったのでは、と思います。
発想が卓越していることは十分にわかりますから。(この票の参照用リンク)
おもしろかったです。タコはいいですね。
「…やはり、自前か」のところで、とうとう噴出してしまいました。(八海宵一)(この票の参照用リンク)
いい。黴菌という大雑把な括りがとてもいい。俯瞰的だ。日常的な情景がとても活き活きと描かれていて、好感大。ヒューマンである。(この票の参照用リンク)
コペルニクス的転回は、ショート・ショートの醍醐味だと思います。目から鱗が落ちました。思いつきそうでつかない視点に、一票入れさせていただきます。
個人的には、「黴菌の心配は」してほしかったです。感受性が高いのになぜ「無理」なのか?そこだけ、少し気になりました。数が多すぎて、ということでしょうか?(八海宵一)(この票の参照用リンク)
そこらの千字よりよっぽど濃いと思います。
こちらはぎゅうっと短時間で濃縮される感じ。(この票の参照用リンク)
「やられた」と思った。読み返すと少し気になる部分が出てきたりもしたんですが、それでも、いい。
ノスタルジィ+パワープレイ。やられた。
(この票の参照用リンク)
えぐい設定で、けれども普遍的に書いてある作品です。
以下、勝手に#14「はるか4万キロ」と比べます。
「はるか」は描写が具体的なぶん、読者のつぼにはまると効果があると思います。一方「屋島」は読者の想像に任せる部分が大きいのです。彼らはいい男、いい女になるだろうなあ、と読み終わった後感じました。
そこに惹かれての一票です。(この票の参照用リンク)
読んでいてなぜか単純に泣きそうになった。光景が良い。
出だしの感じがとても良かった。古典的SFっぽくもあるけど
そこが個人的にツボにはまったのかも。(この票の参照用リンク)
日常生活に熱の法則があるのだと思った。(この票の参照用リンク)
ドラマで見たい。(この票の参照用リンク)
#17 慰弔
医療過誤をうまく寓意化できていると感じた。さらには現代社会における感情の鈍磨、あるいは権威への盲従や全体主義への批判さえも読み取れるようだ。(この票の参照用リンク)
今期、一作に絞って選ぶなら、これだと思う。
描写の本質をちゃんとわきまえている作者の筆は自在だ。疾走する車から見聞きする、輪郭のおぼろで曖昧な世界は、そのまま「僕」の存在それ自体のおぼろさと同期している(「暗闇と白いライトのごちゃ混ぜになった世界」、「ノイズのような雨音でかき消されて見えなくなってしまう」)。そしてその曖昧な世界に、まったく唐突に、不思議な衝突物が投げこまれる。それは「てらてらと青く光る蛞蝓」だ。曖昧で形のない現実の世界とは対照的に、夢の中のその蛞蝓は克明な描写をともなって増殖していく。スタイルを作り、次いでそれを別のスタイルによって突き崩す、そのバランスのとり方は絶妙というほかない。
一瞬だが悪夢的なそのイメージが、なぜ「僕」の心をよぎるのか、説明はない。対置されるのは、「あたし、女よ」という、文脈に回収されることを微妙に拒む台詞。そしてキスをした瞬間に唇に残る、「食べることができ」そうな「生暖かい感触」だけだ・・・
描写を武器にして1000字を書くことについての、お手本のような短編。素晴らしいです。(でんでん)
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