第78期予選時の投票状況です。12人より25票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
11 | 3分間 | かおり | 3 |
22 | 暗闇 | qbc | 3 |
24 | 天然 | 三毛猫 澪 | 3 |
12 | コーヒーゼリーと都会の月 | 銀冠 | 2 |
17 | 羽化と、その後 | 鼻 | 2 |
21 | ダークマター | えぬじぃ | 2 |
25 | 春はトンカツ | 宇加谷 研一郎 | 2 |
27 | 犬の木 | euReka | 2 |
1 | 夢の男 | アンデッド | 1 |
8 | 銀行強盗 | ei | 1 |
10 | 1番ショートコウタ背番号6 | 腹心 | 1 |
13 | ウナギとカメ | わら | 1 |
14 | アイヨリモ、コイナラバ | 葉月あや | 1 |
15 | 忘れるを知る | 黒田皐月 | 1 |
夏の夜のことであることに今さら気がついたというほどに、桜散る夜の温かく静かな空気を私は感じていました。言葉や文体など作品のすべてでひとつの心情を描いたことは、良いことだと思います。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
話を読み終えて、作者を身近に感じられることができた作品だった。
夏の夜に、夫の帰りを待つ主婦の話である。夫のことが好きだし、生活に不満があるわけでもない。かといって、有閑マダムというわけでもない、いわゆる普通の主婦が、携帯電話を通して誰かのピアノ曲を聴く3分間のあいだだけ、平凡な(そこそこ幸せな)生活着を脱ぎ捨てる話だ。
昔のように情熱的な恋愛をしてみたい気持ちもある。だけど、昔のように、自分はてぶらではなくなった。好きになった誰かとなら崖からでも飛び降りるのだって平気、というような軽薄な無鉄砲は捨て去ったかわりに手に入れた生活にはずっしりとした重みがある。
そんな主婦がふと、夏の夜中に、知らない男の指で弾かれる「月光」を、電話を通して、耳元で聴くことになる。直接的な愛のささやきでも淫らな妄想を誘う文句でもなく、流れてくるのはただのピアノの音にすぎない。それなのに、音のあつまりの旋律が語りかけてくるせつなさのようなものが、やるせない感情をもてあましていた一人の主婦の心にかつてのふわふわした高揚感やどこまでも寄り添って疾走したい感情を思い出させる。
……内容もよかったし、弾かれる曲が「月光」というのも、なんというか、ベートーベンを聴きたくなったよ。なによりも、この題材ならばどこまでも感傷的になれるにもかかわらず、きわめて客観的に細部を述べているところが、この作品をみごとに小説にしていると思った。郵便配達の男性だとか、エレクトーンを習ってたとか、そういう細部の設定がいいなとも思う。
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平々凡々な生活に忍び寄る深い淵を覗き見たような気になりました。幸せって一体なんだろうか、と思わず考えさせられます。よかったです。(この票の参照用リンク)
この静かな語り口、描いていることに合わせる描き方は、技術と言ってしまっては失礼な、何か素晴らしいものだと思います。
一畳という閉塞感も良いと思いました。横になるのには三畳が欲しいのですが、それは許されていない。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
三(この票の参照用リンク)
二人称に読者への裏切りの展開、独特の文体(携帯読者向け、でしょうか)など濃い内容に満足しました。「希望」が刑罰となりうる、という論理の展開にはびっくり。叶わぬ希望は、『滅望』とでもよんだらよいのでしょうか。(この票の参照用リンク)
脱帽。(この票の参照用リンク)
うわぁ。
こちらで、ここまで読む側を意識した(ように思える)作品を読んだのは初めてです。
読後感は良くないですがこうこられちゃ仕方がない。(この票の参照用リンク)
おk(この票の参照用リンク)
コーヒーゼリーとプロポーズのかけあいを楽しく読むことができました。都会の月という単語も題名にあるので、コーヒーゼリーを片手に都会のどこかで月夜にプロポーズ……と思って読むと、部屋の情景まで浮かんでくるので、ドラマのワンシーンのように感じました。
面白かったです。この作者の他の作品も読んでみたいと思いました。(この票の参照用リンク)
今期のベスト3はこれかと。(この票の参照用リンク)
二(この票の参照用リンク)
ぐらぐらした芋虫の生き方に共感した(この票の参照用リンク)
この話はバカにしてた者によってバカにされる、というシンプルな笑い噺だと思うけれども、たんに可笑しいだけではなくて、どこか悲しい。
というのも、眼に見えない物質を探し続けるロマンを追い求める科学者が、実際は妻からも霊感商法と同程度にしか認識されていない、というところなんて、なんともかわいそうで、小説家を自称しつつ周りからの視線は……という私などは、この科学者のことをぜんぜん笑えなかったよ。
上質な喜劇は悲劇をも内包しているということなんだろうか。ベルグソンでも読んでみるか。そして、悲劇は喜劇に転換していかなければ、この世知辛い時勢にロマンとか夢とかいってられないよな、としみじみ思うところがあった。前半の重厚な演説調の前置きも、後半のどんでん返しをひきたてている。隠れた名作だと思うが、あ、名作とか書くのは余計か。
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今期のベスト3はこれかと。(この票の参照用リンク)
まず題名に惹かれました。そして文中、無理矢理な感じの段落もあるような気がしてしまいましたが、ふと日常の中で思い出すような小説はなかなかないようにも思い、こちらの作品はふと思い出す良い作品だと思いました。
あくまで読解力もろくにない素人の感想なので、この程度の感想レベルですみません。
でも、好きな作品です。ぜひ推薦させていただきたいと思いました。(この票の参照用リンク)
トンカツで喫茶キムタクというのは、神聖モテモテ王国を意識しているのだろうか? 偶然かもしれないが、宇加谷氏がモテモテ王国好きかもしれないと考えると楽しくなる。
作品はいつもよりパンチが弱く思えるも、文章とセリフが小気味いい読後感爽やかなものだった。好きな異性相手だと、退屈に思える時間も幸福になる。(この票の参照用リンク)
純度100、な話だと思っていた。助けた犬が死んで木になって、今度は小鳥がくるなんて、なんと純粋であることか……と。だが、よく読むと、この話はなかなかに深いものがある。
主人公はたしかに犬を助けるけれども、最初は助けるつもりはなく「立ち去ろう」としているし、結局この哀れな犬を「飼う」方向に話をもっていくのでなく、できるかぎり犬から逃げようとする。後日、犬が道路で凍死するのをみつけるが、しゃべっているのは犬ばかりで主人公からは何ひとつ声をかけることがない。死のうとしているのにだ。だが、死んだあとはきちんと葬ってやっている。
この主人公は冷たそうにみえて優しい、と割り切るほどに優しい男ではない。と読んだとき、なんというか、私の頭のなかに、この主人公が一人の人間として入ってきた。犬は犬で、最初はただの甘い性格のキャラクターでしかなかったのが、なんとなく、こいつは相当な曲者ではないか、本来ならただの野垂れ死にであったところを、自分の死を主人公に背負わせることで、意味づけしようとしている、とか思えてきて、そうすると、この純度100に思える話が実は相当に世界の苦渋が凝縮された、それでもなんとかまっすぐであろう、純度100を目指そうとする正と負の葛藤のようなものが、わなわなとこっちに伝わってくる。そうするとこの1000字がどこまでも深い1000字に読めてくる。
私はこの作品、すごく好きだ。
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味わいがもっともいい作品だ。なにやら宮沢賢治の世界のようだ。
しかし読んでいるとなぜか、赤塚不二夫の絵柄がイメージとして浮かぶ。犬も二本足なんかで歩いたりして。不思議なものだ。
オチは、木に宿っていた犬の魂が小鳥に乗り移ったかのようだが、もしかすると主人公の旦那はいつもこんな風に動物から話しかけられるタイプなのかもしれない。(この票の参照用リンク)
面白く、読みやすかったです。
ロマンチックな話から一気に現実にもどった感じがとても面白いと思いました。(この票の参照用リンク)
「牛丼屋で〜」の部分が『吾輩は猫である』の雰囲気を持っていて、これが作品に良い空気をもたらしているのではないかと思いました。二段の速い転回も工夫されていると思います。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
今期のベスト3はこれかと。
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一(この票の参照用リンク)
ばかばかしい話は大好きです。今期もいくつか楽しませていただきましたが、本作が一番笑わせてくれました。だじゃれサイコー(この票の参照用リンク)
全作品を一通り読み終わったあと、これが飛びぬけて良いと思えた。
最近の黒田皐月氏の作品はいまいち自分好みではなく残念に思っていたのだが、久々のヒットだ。
女性らしい気持ちのすれ違いがよく描かれている。とくに解説のない缶バッジも想像を刺激されていい。(この票の参照用リンク)