第78期予選時の、#27犬の木(euReka)への投票です(2票)。
純度100、な話だと思っていた。助けた犬が死んで木になって、今度は小鳥がくるなんて、なんと純粋であることか……と。だが、よく読むと、この話はなかなかに深いものがある。
主人公はたしかに犬を助けるけれども、最初は助けるつもりはなく「立ち去ろう」としているし、結局この哀れな犬を「飼う」方向に話をもっていくのでなく、できるかぎり犬から逃げようとする。後日、犬が道路で凍死するのをみつけるが、しゃべっているのは犬ばかりで主人公からは何ひとつ声をかけることがない。死のうとしているのにだ。だが、死んだあとはきちんと葬ってやっている。
この主人公は冷たそうにみえて優しい、と割り切るほどに優しい男ではない。と読んだとき、なんというか、私の頭のなかに、この主人公が一人の人間として入ってきた。犬は犬で、最初はただの甘い性格のキャラクターでしかなかったのが、なんとなく、こいつは相当な曲者ではないか、本来ならただの野垂れ死にであったところを、自分の死を主人公に背負わせることで、意味づけしようとしている、とか思えてきて、そうすると、この純度100に思える話が実は相当に世界の苦渋が凝縮された、それでもなんとかまっすぐであろう、純度100を目指そうとする正と負の葛藤のようなものが、わなわなとこっちに伝わってくる。そうするとこの1000字がどこまでも深い1000字に読めてくる。
私はこの作品、すごく好きだ。
参照用リンク: #date20090331-120040
味わいがもっともいい作品だ。なにやら宮沢賢治の世界のようだ。
しかし読んでいるとなぜか、赤塚不二夫の絵柄がイメージとして浮かぶ。犬も二本足なんかで歩いたりして。不思議なものだ。
オチは、木に宿っていた犬の魂が小鳥に乗り移ったかのようだが、もしかすると主人公の旦那はいつもこんな風に動物から話しかけられるタイプなのかもしれない。
参照用リンク: #date20090322-144320