第64期予選時の投票状況です。15人より35票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
17 | 沼蝦 | 川野佑己 | 6 |
15 | そして私は月光の道をたどり、この場所へ帰ってきた | 三浦 | 5 |
7 | 拳銃の神様 | 笹帽子 | 3 |
14 | 木蓮を踏む | 森 綾乃 | 3 |
16 | 頃合 | qbc | 3 |
19 | マスターよしえ | ハンニャ | 3 |
1 | rocketttt | 藤舟 | 2 |
6 | 君の瞳 | 城谷匠 | 2 |
8 | 関係性の科学 | makieba | 2 |
11 | 剥がれてしまったので | わたなべ かおる | 2 |
3 | 憩いのひととき | 茹でたうどん | 1 |
5 | 仰ぐ空と花言葉 | 櫻 愛美 | 1 |
13 | 無色 | kawa | 1 |
18 | 擬装☆少女 千字一時物語19 | 黒田皐月 | 1 |
川野さんの作品は、これはもうはっきりと敵わない明確な語り口があって、あたかも体と同じ浸透圧を文章が持っているかのように、すんなりと読むことができるです。理屈で内容を読み解こうとするとかえって楽しみを失ってしまうのです。何も考えずに書かれている主張の無い文章だから考えずに読むのが良いという意味ではなく、文章の持つホリスティックな表現力によって知性感性と広く揺さぶられて、あたかも川野さんの呼吸をそのまま聞いているという感じがします。
昭和天皇の陵墓と向き合う話とか、駐車場のおじさんの話を読んだ時は、私自身まだそれほどなじむ感じはなかったのですが、読めば読むほど味が出ますし、今期はぴたっとはまって初読から楽しめました。朗読にいい文章をと言われたら、川野さんの作品を推薦します。(とむOK)(この票の参照用リンク)
何か目を引くものがあるのではないのだが読ませられるというのは、実はすごいことなのだと思います。
沼蝦の死に意味をつけてしまうのではなく意味を求めるだけという抑え方も、なかなかできるものではないのかもしれません。(この票の参照用リンク)
美大生のスケッチを見ているような安定感。
私のは子供の落書きで、地力がしっかりしているというのは羨望の対象です。(三浦)(この票の参照用リンク)
魅惑のグダグダ感。(この票の参照用リンク)
うまいですね。なんていうか、読ませます。
話題の動かし方が素敵です。
潮汐力のちょっと堅い(?)話に入りつつ、「金子みすゞの領分」なんていう言葉を混ぜ込めるのがうまいと思いました。(この票の参照用リンク)
題材の掘り下げ方と展開させ方が素晴らしい。(この票の参照用リンク)
三浦さんの作品は、表現は作品ごとに様々でいくつかの手法を試行されているように思えますが、真摯に学ばれた哲学を基盤にした深みと厚みのある創作は、たいへん勉強になります。いささか知が勝って感じられることもあるのですが、それは読み手の私が理屈で考えようとするからそう思えるのかもしれません。
今期はファンタスティックなリズムとシチュエーションが新鮮でしたが、いつもの深遠な死生観がここでも物語の底辺に織り込まれ、単なるファンタジーで終わらない、三浦さんらしい作品になっているように思えます。(とむOK)(この票の参照用リンク)
場面の流れといい、方向といい、とてもバランスが良いと思いました。
なんとなく選ぶんだったら無くはないけどそういう妥協はしたく無いので今期票を入れるのはこれだけ。(長月)(この票の参照用リンク)
映画のような情景を、いい写真になるような情景を、つまりある種の「絵」を書こうとしているような気がします。その点でみれば成功してると思います。屍たちが「どんちゃん騒ぎ」をしている風景が眼に浮かぶし、その屍はただの空虚なのではなく、生の“充実”を模索したうえでの空虚なのだということも文章に書いてある(気がする)。
でも、私は写真のような物語、映像になるような物語……に対して(今は)興味がありません。その逆の、物語に写真があり、物語が映画になるほうがずっといいです。ある種の“気分”を書くのではなく、「それ自体、それそのもの」を読みたいです。
「闇夜がふるえている! 鳴動だ! 大鳴動だ!」というのは実に読んでいて爽快な気分になったのですが、そこにあるはずの内容がない気がするんですよ。るるるぶ☆どっぐちゃんさんの作品と比較してみれば、るるるぶ☆どっぐちゃんさんは元から物語を放棄してしまって、単語で音楽をつくっているように思えるので、あそこまで割り切ってあれば別の視点で楽しみますが、この作品は妙に言葉だけドストエフスキーの「未成年」のラストを思いだします。でもそれはドストエフスキー的であっても、“的”でしかない。コマーシャル以上に迫ってこない。そこなんですよ。絵しかない。もっといえば、○○的や○○のような、デザインではなくて、たとえ稚拙であっても作者個人の血が通ったもの(私小説でなく)を読みたいです。
いろいろ書きましたが、投票します。注文(?)をつけたくなるほどの作品に出会えてうれしいです。
(ロチェスター)
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もの凄くイメージを掻き立てられたこと。文章が上手いなって思ったこと。(この票の参照用リンク)
言葉のリズムが、素敵です。
三段構成がすごく効果的ですね。どの段も好きです。(この票の参照用リンク)
冒頭から話がすっと頭に入ってきたし、話そのものも楽しみました。(この票の参照用リンク)
一風変わった営業マンのような神様が面白いです。
趣味や家族構成の話をしたことだけを書いてその内容を書かなかったことは、少ない字数で読者にその場面を想像させる効果を持つ、良い手法だと思います。(この票の参照用リンク)
これがいちばん楽しめた。これがいちばん「ただの文章」で、「ただの物語」だと思った。(この票の参照用リンク)
>『かくあるべき』自分を少しずつ失うのが、歳を取ることだ。
年の取り方の考察として所見。
文体が好き。(qbc)(この票の参照用リンク)
テレビドラマや映画を見たことのある人が小説を読むのと、
テレビドラマや映画を見たことのない人が小説を読むのと、
きっと小説を読んでいる感じが違うと思うんですが、
どうなんでしょう。
それで、これはそのまま語り手のナレーションの入るテレビドラマ
としてイメージしました。NHKの。(三浦)(この票の参照用リンク)
「鼻歌まじりに歩く。胸に社員証を下げた、華やかなOL達とすれ違う。お昼ごはんの入ったビニール袋を下げ、ごく健康的に笑っている。晴れて暖かいし、ヒールの低い新品の白い靴はとても歩き良い。小さなリボンのついたその靴は強く、ゆっくりと、踏みつけた。」この部分がとてもよかったです。本当によかったです。ここだけで投票したい。
失礼ながら、モクレンも父親も抜きにして、ホテルとこの部分だけで物語ができないものでしょうか?
(ロチェスター)(この票の参照用リンク)
巧さに1票。(この票の参照用リンク)
qbcさんの作品は、リピドーたっぷり微熱のまま筆を走らせるような不安定な力強さとか、穿った心理描写とか、突き放すような皮肉とか、トラウマっぽい捨て身のユーモアとか(いやそういうユーモアばかりじゃないんですが)、はっきり嘘とわかる設定を使っていながら現実オッケーと思わせる不思議な説得力とかが異なる配分でブレンドされていて、どれを読んでもはっきり違う作品なのにそこはかとなく漂う「らしさ」があり、読む度に一筋縄じゃいかない作家さんだという思いを新たにするのです。
今期の作品はさる大手出版社で定期開催している掌編コンテストに入賞されたものでしたが、これはスナップの効いた日常点景という風で、この字数だからこそできる軽やかな帰結が鮮やかです。寂寥感のある微妙なショートコントという趣もありますが、人生の渋味を自嘲的に笑える(ある意味大人の、ある意味歪んだ)感性がないと、なかなか面白みは感じ取れないのではないでしょうか。(とむOK)
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甲と乙との関係を説明し、片方が片方のことをどう思っているのか、
それがどのように変化したのかあるいは変化しなかったのか、
というような話からどうやって予定調和感を消すか、
という問題があると思うんですが、これはその問題をクリアしている
と思いました。
会話の使い方が技巧的。(三浦)(この票の参照用リンク)
フリーダム。(この票の参照用リンク)
ラストに笑ってしまったから。そのユーモアに。(この票の参照用リンク)
笑った。(この票の参照用リンク)
友情がいいなぁと思いました。(なべ)(この票の参照用リンク)
情景の描写がしっかりしている。(この票の参照用リンク)
大丈夫、きっとまた会えるよ。って、語り手に言ってあげたくなりました。ようは感情移入できたということで。(なべ)(この票の参照用リンク)
なまなましい。(qbc)(この票の参照用リンク)
人間関係の不毛さについて書かれた話だと読みました。私は好きです。というのも、主人公が自分の状況に対してそれが本当の理知的であるかは別として、誠実に求めようとしているからです。結果的にその先には何もないのかもしれませんが、少なくとも私が「短編」を読むのは絶望状況を自虐するためではなく、あるいは自虐の共有を求めているのではなく、「いずれにしても私はずっとチャンネルを合わせ続けるだろう」という、そんな姿勢、あるいはその結論に至るまでの物語を読む時間を過したいからです。もちろん個人的ですけど、個人的以外な読み方をすることに興味をもてません。
(ロチェスター)(この票の参照用リンク)
非常に面白い。
リズムがよく、読みやすい。どんどん読み進めることができるが、書かれている内容がどんどんわからなくなる。語り手がさまざまな可能性を提示しながら否定しつづけるので、読んでいるほうも、何もわからない気分になってくる。
物凄く抽象的なことを書いているようで、筆者の冷静な筆致には現実味を感じずにはいられない。
読後には漠とした不安が残る。そして、その作品を読んだ現在の私の位置について、改めて作品にそって考えさせられる。(梅田)(この票の参照用リンク)
やばい、面白い。不意打ちで来ますね。医者とのやり取りがもう。
楽しめる不条理だと思います。こう言うのが書けるのは、なんというかうらやましいですね。(この票の参照用リンク)
これも同じく。(この票の参照用リンク)
単純に面白かった。(この票の参照用リンク)
淡すぎない心情を濃すぎない文章で程よく描いた、読みやすい作品です。
書きたいことが書けていると思います。(この票の参照用リンク)
短いし、良くできているとは言いがたい。もしかしたら、偶然、私のアンテナに引っかかっただけかもしれない。
とはいえ、何度も読めるのはこれだけだった。そして、疑問が広がっていった。
「雪景色が広がっていた」が「雪は降っていない」が「雲のようなもの」が地表を覆う。
足を滑らせて、頭をうつ。
「ベッドも白いし服装も白い。目の前の女性の顔も白い」
僕の「頭の中は真っ白」
で、タイトルは「無色」。
おもしろい、と思う。(この票の参照用リンク)
彼のささやかな幸せに、ほのぼのしました。神様に感謝、いいですね。(なべ)(この票の参照用リンク)