第72期予選時の投票状況です。13人より19票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
9 | 丘 | サカヅキイヅミ | 4 |
6 | マルボロ女 | 森下紅己 | 3 |
3 | ラブストーリーは突然に | リバー | 2 |
15 | 外は大降りの雨だった | bear’s Son | 2 |
16 | 隣人からのメッセージ | 壱カヲル | 2 |
2 | ケセランパサラン | ケント | 1 |
8 | 私の無くした名前と愛のしるし | のい | 1 |
14 | 愛 | qbc | 1 |
- | なし | 3 |
他者を嫌悪することで自分を維持しようとする気持ちは、意識しないところに存在するものなのだと思う。少なくとも、私にはあるはず。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
「かたわもの」って今言っちゃいけないし差別、ダメ、絶対とはわかっていますが、なんだろう、健常者から見たらやっぱりファンタジーのように映るものだろうと一方で思っている自分もいます。
読んでいて重苦しさは感じませんでした。世界観が好きだな、と爽やかな感想すら持ちました。そういう自分を肯定された気さえしました。(この票の参照用リンク)
今期はこの作品一択だと思いました。サカヅキさんの描く世界は好きです。(この票の参照用リンク)
『居るか居ないかも判らない丘の下の聖者に対し、罪悪感の伴わない希釈された暴力を行うことで、何とかこの丘は停滞を免れている。』
とてもいい表現だと思います。私は、あらゆる暴力・差別は常に重層的であると考えるので、とても響きました。
一つの『世界』を、飾らない端的な文章で表す確かな技量を感じました。
あんまり関係ないですが、道徳的に禁止されても、人が『異形』のヒトに惹かれるのはなぜなんでしょうね。(子供は身を乗り出して見ようとします。親にしばかれますが。)思うに、あらゆる『〜すべからず』の影には、万人の『〜したい』という欲望が隠されています。(この票の参照用リンク)
その行動にはやりすぎとも思えるが、このような気持ちはあるのだと思った。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
設定がうそくさいってかかれてるけどさあ、まさに「こーいう女」にしかわかんない設定だとおもうわけー。 子供ってうざいよね男ってうざいよね母親って責任ないよねみたいな。 つまり「マルボロ女」にしかさー。 万人受けしないけど、コアな読者掴んでよ。(この票の参照用リンク)
感想は決勝まで残ったらかいてやるぜw(この票の参照用リンク)
サイト「短編」の参加者が大きくいれかわっている(らしい)。かつての常連が去って、書きなれていない新規の方ばかり、という見方もできる。しかしながら、この作品などどうだろう。私は相当におもしろい、はんぱじゃない、と思った。
いわゆる小噺である。人数あわせに合コンによばれ、南米サッカー選手に似た女の子の相手をすることになる。顔は南米であるが身体も南米。つまり、とてもいい身体をしていて、おそらくは若さあふれる主人公には顔よりも、その身体に惹かれたということになる。
そうして若き主人公が、全力で口説き始める描写が、その若さを象徴するかのように、軽快で、爽快。そうして突然やってくるオチ。そのオチは予想できなくもないけれど、不思議にオチたあとからがすごくいい。
全部書いてしまうと、この顔も身体も南米サイズの女性は、自分が(男である)ロナウド選手に似ていることも、一方で、自分の身体が男を惹きつけるだけの魅力があることもすべて知っているのだ。そして、「とにかく女とやりたい」主人公の、その「やりたい」欲求を、彼女は受けとめるだけの素朴さを持っていて、ついには主人公が「本気で愛しはじめ」るまでになるのだが、恋愛のはじまりってこうだよな、と思った。
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笑えました。改行とかなくて最初読みづらいなあ、と思っていたけれど、気付けば釘付け。
ドリブルとワールドカップのくだりが絶妙。
ある意味理想の書き方かもしれない。
最後も上手く纏めていて、後味すっきり、ホントに楽しめた。
千文字の利点が生かされてますね。(この票の参照用リンク)
なんとなく村上春樹の「ノルウェイの森」を思い浮かべてしまう……。文句から書いてしまうと、主人公は二人の女の子を選ぶ立場にいきなり立っているのが、なんとなく都合がよすぎるように思え、海外ボランティアも、「機乗準備」も、これまたなんとなく単語が泳いでいるような感じで、しっくりこない。この部分だけ捉えると、全作品を読んだうえで推薦するベスト3に挙げるのが躊躇われる。
しかしながら、散々失礼なことを書かせてもらったけれども、全作品を読んだうえで、読みおえたあとに、なにか作品の1000字以上の部分が、頭のなかでぱーっと広がっていく感じがして、爽快だった。
私はこの話のラストに雨が流れるところも好きではない。いろんなところがわかりやすすぎる、と文句ばかりいいたくなるのだが、たとえば貴子という女のメールに「伊勢まで行った」とあったり、「早い仕事」の貴子を送ったかえりに絵美とよった喫茶店で「窓側の席」のクッションにすわり、「アイス」を注文するところだとか、29日と30日の日付が妙に何度も絡んできたり、その物語とはあまり関係がない細部細部がわざとらしくなく作りこまれていて、それは作者のセンスの良さなんだと思う。才能がある。だから物語はともかく細部と、その細部と細部の集まりによって、長い小説を読み始めたかのような心地よい読後感に一票投票する。
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私も、優しさは経験から出てくるものだと思ってました。
でも、絵美のような優しさの形もあるのだと。
それを最後に受け入れられた(と私は読解しました)主人公に、安心を覚えました。つまり、ハラハラしながら読んでいたけど、最後にホッとしたと。
世の中の女の子の種類って、結構分かれるけど、基本的に貴子タイプと絵美タイプですよね。実に上手く描写されています。(この票の参照用リンク)
カヲルさん。清き一票入れときまーす!
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この作品を読んで私はデジャヴを覚えました。
私も過去の因縁やトラウマから、別人格が生まれますから。
(といって多重人格なわけではない)
それを只の心中葛藤でなく、アパート、隣人で表現したのは素敵なアイデアです。
文章が優れているとかは後回しで、簡単に、物語に引き込まれたから投票します。
読解はできてないけど。(この票の参照用リンク)
鮮やかなものではないが、このような気持ちはあるのだと思った。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
1 迫りくる恐怖 グラックマ /。文章がつまらない文体がないので。2 ケセランパサラン ケント /煙草を吸わない理由が分からないので。3 ラブストーリーは突然に リバー /本気で愛し始める理由が強引に感じたので。4 鯖 尚文産商堂 /強い意図を感じられないので。5 イフリート しん太 /ストーリーがないので。6 マルボロ女 森下紅己 /設定がうそくさいので。7 万の灯りの中で みさめ /ありふれているので。8 私の無くした名前と愛のしるし のい /強い意図を感じられないので。9 丘 サカヅキイヅミ /ありふれているので。10 生身のアンドロイド 沖田タカシ /わかりづらいので。11 An un-hungry beggar くわず /意図が分からなかったので。12 擬装☆少女 千字一時物語36 黒田皐月 /強い意図を感じられないので。13 「君にソウダ水を捧げたい」 宇加谷 研一郎 /ありふれているので。14 愛 qbc /わかりづらいので。15 外は大降りの雨だった bear's Son /強い意図を感じられないので。16 隣人からのメッセージ 壱カヲル /わかりづらいので。17 ローマ るるるぶ☆どっぐちゃん /ありふれているので。(この票の参照用リンク)
よし、これに投票しよう。と思わされる作品がありませんでした。
かといって、いつも張り切って投票しているのかというとそうでもないので、単に気分が乗らないだけかもわかりません。(この票の参照用リンク)
次回に期待しつつ。来たれ、未知の書き手よ。来たれ、既知の書き手の内なる未知の才能よ。(でんでん)(この票の参照用リンク)
毎夜、祖父の「夜の相手」をさせられている孫娘の話、と要約してしまうとこの小説の味を見逃してしまいそうだ。谷崎潤一郎を<ただの変態>と言い切ってしまうようなもので、みかんの皮を食べて「まずい」と吐き出すようでもある。
私はこの短篇は「祖父と孫娘の情事」という皮の部分よりも、タイトルどおりに「名前へのこだわり」にこの話の実があると思った(やや意味不明なたとえだな……)。
主人公は自分を毎夜陵辱する爺さんに対して、その行為よりも、爺さんが自分を呼んでいる名前が「恵美里」であることに強い反感をもっている。本来、自分の父親と母親は「きさら」という名前を自分につけるはずであったのに爺さんが恵美里と名づけた……とつよく自分の本当の名前にこだわっている。
この部分に、とてもつよい実感がある。肉体のやりとりなど、結局のところ、それほど重要ではないのだ、ということを、この少女はこの年齢にして悟っているのだ、と思う。自分を守るうえでの最も大切なものがとどのつまり、誇りである、ということを、この「名前にこだわる」エピソードに示されていて、私はこの部分がいいなと思った。
疑問もある。嫌いな爺さんに対して、なぜ「きさら」と呼ばれたいと思うのか? もしも私が書くならば、爺さんには「恵美里」と呼ばせることをむしろ快感に思い、無表情で毎夜爺さんに体を与えながら、その心の奥底で、自分は人間の「きさら」であり、今は肉の塊の「恵美里」となって、憐れな爺さんを慰めてやっているのだ……という展開にしていただろうと思う。
しかし、それはそれとして、物語終盤のホットミルクと爺さんのすじばった首、という描写はうまいなあと感心する。
(この票の参照用リンク)
独特の文体にやられました。何回読んでも面白いです。
「青年は愛のありさまを見ていらいたちまちこころをむしばまれ情交のさなかに女のみみもとで愛しているとささやくのをためらうようになった。うそくさいのだ。」
のあたりなんかは、筒井康隆の『ヨッパ谷への降下』に挿入されてても、すんなりなじみそうなぐらい魅力的な言葉運びじゃないでしょうか。(この票の参照用リンク)