第71期決勝時の投票状況です。9票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
9 | 夏の日 | サカヅキイヅミ | 3 |
13 | 林先生 | 小松美佳子 | 2 |
7 | 幽霊 | 群青 | 1 |
8 | 夏 | わら | 1 |
10 | オルガン | 宇加谷 研一郎 | 1 |
- | なし | 1 |
面白かったです。
非常に細かいところで恐縮なのですが、読点の入れ方が統一されていない感じがしました。文字数制限のせいなのか、演出なのか、または何の意味もないのかわかりませんが、少しばかり気になりました。
怖い感じがしました。死や病や不幸が日常の一部になっているような場所から逃げ出そうとして、けれどもそれをまた日常(慣例)が邪魔をすると、そのように受け止めました。はっきりそれと示されていないのが、じんわりと怖かったです。
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『林先生』とどちらにするか迷うところですが、こちらの方が変わっていていいかな、と思いました。(この票の参照用リンク)
林先生
良かったけど難あり。
当然セックスの話なんだろう。肉欲にフォーカスするのかそれとも相手の消失にフォーカスするのか。
いずれにしろ最後がうやむやになるのはよくあることでつまらなかった。同じことをなぜまた繰り返し読まされなければならないのか。
幽霊
良かったけど難あり。
じつは周囲がすべて幽霊でしたという着地であるならば、物足りない感じがする。もうすこし先を足してもよいのではないか。
いや、話の筋はとても良いものだけど、文章がそこまでこなれていないというところなのかもしれない。
夏
普通。
どうしてこういう他人行儀な気分になるのだろうか。
夏の日
良かった。
>私の実家はかつて森だったくさい小高い丘の中に立っていて
自分の住んでいたところさえもあやふやなのだというこわさがある。
ばかげていてい良い。
オルガン
普通。
オルガンとorganて似てるよね。(この票の参照用リンク)
好み優先でこの作品を選びます。終わり方も妖怪伝承話らしくてむしろよいと思いました。(この票の参照用リンク)
度肝を抜かれてなお授業を受けて楽しいと思えるのはどういうことなのだろうとも思うのですが、一番読んでわかったような気がするところで、一票を投じます。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
予選でも推していたこの作品に一票入れます。
なんというか、飾り気がなく、読者に媚びるような所が全く見られません。そこは立派です。
ただ「文体」として突出して優れているかと言うとそういうわけでもありません。
私がこの作品を推すのは、只単に「私が好きな話」だからです。
客観的に見て、総合的に見て、より優れた作品を選ぶのが勤めだとは思いません。なぜなら本来、一般的に作者と読者の間にはそういうものはあまりないからです。
「私この作家の話好きやねん」
という時に、私は客観性を含みません。自分が「好き」か「嫌い」か。
つまりこの作品が「良いと思った」からっていう、解りやすい理由から一票。
感想としては、軍を抜いて結末が頭に残ります。なんとなく、という抽象文が多い中、一つの作品として非常に纏まっているのではないでしょうか。
そう、なんだか『世にも奇妙な物語』みたい!!
森下紅己(この票の参照用リンク)
巧さでいえば「林先生」かな、と思ってこれを推してみようかと思ったのだが、何かひっかかる。69期の「なんて憂鬱な日常!」や68期の「九龍」あるいはこれも69期の「夏の散歩」を読んだときのような、親しみを作品から感じ取れない。
たぶん、「林先生」はあんまりにも川上弘美という作家の作品に似ているからだと思う。もちろん、川上弘美っぽく書けるということは作者の力量が相当なものであることの証明であり、その実力だけで「優勝」に値する作品だとは思うのであるけれども、しつこいけれど私は読者として「巧さ」を作品に求めていないので、「林先生」はあまり推せない(うまいけど)。
で、「夏」を強く推したい。これは「林先生」に比べるとかなり作者と主人公が接近している感じがして、物語というより、私小説風の作品である。クラスメートが死んで葬儀があるのだけど、ちっとも悲しみを感じない「僕」が醒めた目で自分の周囲を観察している、といった話だ。いささか文章がクドイ気がしないでもない。登場人物の醒めた「僕」には魅力をまったく感じない。
なのに、読み終わると、今年の夏の暑さをこんなにもひりひり感じる話はなかった。登場人物も死んだクラスメートも京都も遠のいていって、作者の実感、もっというと作者の孤独のようなものが作品から浮かびあがってきて、私はその背中に共感をおぼえた。
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いちばん全体として筋が通っていて統一感があると思ったのがこの作品だった。外見からすると意外な感じもする。
『林先生』は端正に出来ていてよかったが、最後がどうも安直な感じがしないでもなかった。こういう妖怪変化の後始末として、行方知れずになりましたというのは一番簡単であるが、もう少し執念深く始末を考えると共感できたかも知れない。
『幽霊』は、今読み直してみたのだが、最初の「家族も信じていない」云々というのは、落ちと矛盾してはいないかという気がする。家族の正体が問題になる作品だと思うので。
『夏の日』も、今改めて読み返してみて、最後の〆めがどうも据わりが悪かった。周囲のすべてを冷めた目で見ている話者が最後だけ「祖父の許しを」云々というのは、これも皮肉かも知れないけれども、明晰でないという気がする。
『夏』はかなり迷った。非常にしんどい雰囲気で終始押し通していて、ある空気を描ききっているところ、推してもよいかと思ったが、私の中では『オルガン』の愉しさに敗れたという感じであった。(海)(この票の参照用リンク)
どれもこれも難あり。その難を排してでも推したいと思える要素がない。
難も、少しは良いと思える要素も、既に他の親切な読み手から提出されているとおり。それを並べれば、難が如何に大きいかがわかるはず。…… 否、わからないのかな、作品の書き手には。(この票の参照用リンク)