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第71期決勝時の、#8(わら)への投票です(1票)。

2008年9月2日 17時0分3秒

 巧さでいえば「林先生」かな、と思ってこれを推してみようかと思ったのだが、何かひっかかる。69期の「なんて憂鬱な日常!」や68期の「九龍」あるいはこれも69期の「夏の散歩」を読んだときのような、親しみを作品から感じ取れない。

 たぶん、「林先生」はあんまりにも川上弘美という作家の作品に似ているからだと思う。もちろん、川上弘美っぽく書けるということは作者の力量が相当なものであることの証明であり、その実力だけで「優勝」に値する作品だとは思うのであるけれども、しつこいけれど私は読者として「巧さ」を作品に求めていないので、「林先生」はあまり推せない(うまいけど)。

 で、「夏」を強く推したい。これは「林先生」に比べるとかなり作者と主人公が接近している感じがして、物語というより、私小説風の作品である。クラスメートが死んで葬儀があるのだけど、ちっとも悲しみを感じない「僕」が醒めた目で自分の周囲を観察している、といった話だ。いささか文章がクドイ気がしないでもない。登場人物の醒めた「僕」には魅力をまったく感じない。

なのに、読み終わると、今年の夏の暑さをこんなにもひりひり感じる話はなかった。登場人物も死んだクラスメートも京都も遠のいていって、作者の実感、もっというと作者の孤独のようなものが作品から浮かびあがってきて、私はその背中に共感をおぼえた。


参照用リンク: #date20080902-170003


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