第71期決勝時の、#10オルガン(宇加谷 研一郎)への投票です(1票)。
いちばん全体として筋が通っていて統一感があると思ったのがこの作品だった。外見からすると意外な感じもする。
『林先生』は端正に出来ていてよかったが、最後がどうも安直な感じがしないでもなかった。こういう妖怪変化の後始末として、行方知れずになりましたというのは一番簡単であるが、もう少し執念深く始末を考えると共感できたかも知れない。
『幽霊』は、今読み直してみたのだが、最初の「家族も信じていない」云々というのは、落ちと矛盾してはいないかという気がする。家族の正体が問題になる作品だと思うので。
『夏の日』も、今改めて読み返してみて、最後の〆めがどうも据わりが悪かった。周囲のすべてを冷めた目で見ている話者が最後だけ「祖父の許しを」云々というのは、これも皮肉かも知れないけれども、明晰でないという気がする。
『夏』はかなり迷った。非常にしんどい雰囲気で終始押し通していて、ある空気を描ききっているところ、推してもよいかと思ったが、私の中では『オルガン』の愉しさに敗れたという感じであった。(海)
参照用リンク: #date20080907-173603