第244期予選時の投票状況です。6人より15票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
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5 | 筑前煮でもつくるか | 朝飯抜太郎 | 3 |
7 | 視線 | アドバイス | 3 |
8 | 自撮り | 吟硝子 | 3 |
4 | 暁 | 竹野呉蒙 | 2 |
9 | 幹と枝 | テックスロー | 2 |
3 | 餓鬼 | 霧野楢人 | 1 |
6 | 月から地球をみる | euReka | 1 |
作中作を使った作品は、読む楽しみが増えるようなお得感があって好きです。アイディアだけの勝負となって内容が雑だと残念ですが、本作は素人の短歌ということなので粗さがむしろしっくりきました。
調味料に天と地を混ぜるのはうまい!と思いましたが(瓶八さんすごい)、なんの捻りもなく筑前煮を作るだけの素朴さには、色々なことがありながらも前向きに勤しむ日常生活の味、みたいなものを感じました。それが作品全体と合っており、よかったです。(この票の参照用リンク)
今日行くと息子報せをよこしたり帰ると書かぬことを気にする
今日来る!?と返せど既読つかざりき親の心を我はまだ持つ
臍の緒の断ち目が縁の切れ目よと見得切る吾子の眉毛たのもし
裁ち鋏投げて揃へて少し撫で妻似の眉の娘出て行く
消息の絶へた娘の園芸をテレビ画面で孫と見てゐる
蓮根と鶏モモ肉を天と地と醤油と酒とみりんで煮しむ
(瓶八)(この票の参照用リンク)
朝飯抜太郎さんのスタイルにいつも惚れてます。
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私はノンネイティブですので(外国人で母語が日本語ではない)、去年はずっと投票を控えていたが、これから毎月投票しようと思います。日本語が未熟なので、実は素晴らしい作品だが理解出来ないこともアリと思いますが、成人に及ばない日本語力でも「この作品がいい」という視点を提供させていただきたいと存じます。ありがとうございます。(この票の参照用リンク)
切実さと狂気を感じるが、アマタツーあたりから笑ってしまった。めちゃくちゃ真面目にミヤネ屋を見ていて面白い。半認識という概念も興味深い。
その他の作品
『暁』は雰囲気が良かった。急いじゃいけないと思う薫くんについてもっと知りたいと思った。
『幹と枝』は老母の心情や思考がよく描かれており読まされた。オチでまんまと落とされたが、同じ構造の漫画を最近読んでしまったので個人的には新鮮味か薄かった。(この票の参照用リンク)
ものすごくテキストサイト感を感じる。
常に視界の端でしかとらえ続けられない人、という設定が面白い。その孤独を癒すミヤネ屋の司会者……だがそれも自分で懐疑的になってしまう流れが面白い。
ただミヤネ屋、アマタツ―などのネタは、普段からミヤネ屋を見てないので、ぜんぜん刺さらない。刺さらないけど、刺さる人にはささるのかな、文書は好みだしナー、みたいな認識で見ていると、なんだかすごく真顔になってしまう。(この票の参照用リンク)
半認識される存在について書かれているようで、その実、ミヤネ屋の司会者について書かれている。
異質で不自然な焦燥感に納得するようにうまく誘導された。(この票の参照用リンク)
最初読んだ時、おおっと思って、500字でこんなことができるのか!と思った。
再読していくと、わかるようでよくわからなくて、それが怪談なんだよということかもしれないが、意地悪な見方をすると雰囲気を作ってるだけのような気もしてきて少し価値が薄れた。1000字バージョンもあれば読みたいな。(この票の参照用リンク)
吟硝子さんはここ数ヶ月500字で書いてるのが面白いです。読みやすさからも評価。(この票の参照用リンク)
この作品も別の意味で怖いですね。なぜ表情が徐々にやわらいでいっているのか、いろいろ考えさせられます。さらに、制限の 1000字の半分の 500字でまとまっているのもお見事です。(この票の参照用リンク)
雰囲気小説は好きではないが、学生同士の交流にすることで「お互いに雰囲気に逃げている」というエクスキューズがギリギリ成立していると感じたのでこれに投票。
ただしタイトルが「暁」なのに話の始まりが放課後で、宵闇が深くなったと思ったら夕日に照らされて、終始時間の感覚がごちゃごちゃしていると感じた。このものがたりのテーマだと時間は固定して二人の会話と情景に焦点をあてるべきではなかっただろうか。(この票の参照用リンク)
素敵な風景の中の、二人の素敵な時間の過ごし方が描かれました。なぜ名前が”薫くん”と”のぞみちゃん”だったのか(たとえば、『医学のたまご』の主役、曾根崎 薫は、その女性のような名前でいじめられた、等とありました)など、字数に余裕があるので、もうちょっと書き込んでみて欲しかったと思います。
『餓鬼』は青年期の焦燥を描いたものと思いますが、何か部活をやるといいと思いますよ。部活の人間関係が苦手であれば、自分で同好会を作ってしまうとか。一行目の”全天の夜空”は、押しつぶすほどのものであれば”満天の夜空”である気がしました。星を見るコミュニティーに入ってみるのもいいですね。
『筑前煮でもつくるか』は孫までいる年配の方の何気ない一日を見事に描いていますが、展開の緩急についていけず残念でした。
『月から地球をみる』は時事ものを扱ったのは勇気と思いますが、結末について、ちょっと納得がいかなかったのが残念です。意思を尊重するべきで葉なかったか、別の解決策はなかったか、まだ展開に工夫ができると思います。
『出会い方』は、まぁ、出会いが少ない一方で秘書を持つほどの地位の方が、というのは分からなくはないのですが、短歌の会に入るとか、満天の星空を一緒に眺める企画を立ち上げるとか、趣味の世界でお相手を探した方が可能性が上がると思います。
『上海ホテル その2』は、タイトルの時点で結末が読めてしまって、さらに結末が案の定、いえ、それ以下だったのが残念でした。なぜ 303号室なのか、データ分析で人外のものが解析できてしまった、などなど、新たなる工夫を期待します。(この票の参照用リンク)
完璧な掌編。前半の金持ちの意識・価値観の文章も読ませるし、さあどうなるかと想ったら、予想外のオチ。情景の鮮やかな反転、余韻でまた笑える。素晴らしいエンタメ。(この票の参照用リンク)
怖いですねぇ、最後に見事に落とされました。(この票の参照用リンク)
走ったことのない土地を、彼の心と共に走ることができた。
小さい感覚の連なりを確かめるような緻密さに癒された。(この票の参照用リンク)
現実的な設定から展開が(文字通り)ぶっ飛び、なんだか勝手に作っていた世界観の枠を外されて開放的な読後感だった。
深刻な状況ながらおかしみがある。「誰だっていろいろな事情を抱えていて、いつも、何かに縛られているのですから」に含蓄を感じる。(この票の参照用リンク)