第33期決勝時の投票状況です。14票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
28 | 蝶が翔ぶ日 | 海坂他人 | 4 |
7 | 樋口 藍 | 桑袋弾次 | 3 |
25 | 心臓 | qbc | 2 |
22 | 大きな魔法のじゅうたん | 川島ケイ | 1 |
- | なし | 4 |
なしという作品が票を集めている今回。確かに改めて四作読んで見るとどれも決め手に欠ける小粒ばかりで、なしもやむなしかといったところですが、やはりその中にも優劣というのはあるように思え、「蝶が翔ぶ日」を推す。幻想的な冒頭からひどく凡庸なところに着地している感がなくもないが、作者の書きたいのは後半部分であろうと思うので、好みの問題ということでしょう。好みではないが、一番しっかりと読めたということで票を投じる。(この票の参照用リンク)
娘が彼氏を父親に紹介だとか、夢だとか、使い古された感のあるものを組み合わせて、かといってそれで何か目新しいものを作ろうというわけでもなく、という気負いの無さが面白かった。
優勝するべき、と積極的に推したいかというとそうでもないような気もするけど、予選で投票した作品が残ったので一票。(この票の参照用リンク)
改めて読むと、味わいが深くなった。
(この票の参照用リンク)
父のささやかな優越感が微笑ましかったです。きっと結婚式では号泣するでしょうね。(この票の参照用リンク)
男たちが、目的を達成するためにはどう見てもまずい行動を取り続けるところがツボでした。セーラー服を取り出したときにごくりと唾をのんだりとか、突っ込まれると沈黙したりそわそわと灰皿を捨てに行ったりとか。「おれたち、セーラー服じゃなきゃだめなんだ」はぶっちゃけすぎです。
「短編」にはもっとエンタテインメント分がほしいと常々思っているのですが、今期はこの作品がそれを一番満たしてくれました。(この票の参照用リンク)
予選でも推しましたが、やはりこれです。
この軽さが嫌味になっていないところが良いです。(この票の参照用リンク)
予選では後半の作品に目が向いていて投票しませんでしたが、改めて読み返してみるとこの作品が最も楽しく読めましたので、投票させていただきます。…半分は、私が投票しなくてもきっと決勝に残ると思っていたというのもありますが。
惹かれたのは店員の皆さんです。藍ちゃんにどうやってセーラー服を着て貰おうか。どう説得しようか。頼もうとしてることがしょうもないことだと半ば気づいていながら、それでもうやむやに、強引に目的を達成しようとがんばる皆さんの姿が強烈でした。
その他の作品について。所詮読解力の甘い素人の意見ですが。
大きな魔法のじゅうたん:作品全体としてはとても好きです。でも、「ブランコ」と後半の繋がりが読み取れませんでした。また、「球の中か外か」というくだりはなくても良かったのでは? と思ってしまいました。
心臓:「『心臓』を求める」ことにどんな意味があるのか、を考えながら読もうとしていたのですが、話を読み進めるほどに意味がわからなくなってしまいました。求めることに意味なんてないってことでしょうか。
「正常に脈打ちたい」はとても好きなフレーズでした。
蝶が飛ぶ日:構成はこの作品が最も緻密だったと思います。ただ、内股の痣の質問、自分ならこっぱずかしくて娘に聞けない! 娘に嫌われちゃう! という気持ちが強くてお話を素直に読めませんでした。強引な質問をする父親が読んだ後もしこりとして残ります。それも含めて、「娘と行き違う父親像」を盛り込んだのだとしたら、もう「参りました」としか言えません。(この票の参照用リンク)
「蝶が翔ぶ日」
娘が恋人を夕食に連れてきて不機嫌になる父親、というのはなんですね、時代劇なんですかこれは。絵に描いたような古めかしい父親像と、「トオスト」をかじりながら朝食の場で娘の内股について語り出す変態性のギャップが面白かった。そこのところを目いっぱい、父親の問いかけに娘はかたくなに拒んで、妻の静止をふりきって、娘のスカアトでも脱がして痣の所在を確かめた、みたいにしてくれるともっと楽しめるんじゃないだろうか。
「大きな魔法のじゅうたん」
こういうお話の性格上、描写が漠然とするのは仕方がないのか、じっさい世界はメタファーで構成されているのか。ちょっと考えさせる話です。物語の核心がありそうな気配は書かれているのに、そのものずばりは書かれない。主人公自身は旅に出ない。余裕しゃくしゃくで雲を眺めている。読み手もなんとなくいい心持になる。「皇室アルバム」みたいな小説、と思います。
「心臓」
キイチが世界のはじっこを見つける旅に出かけるのに対し、こちらは主人公自身が出かける「心臓捜し」の旅。文章の心地よさでは海坂作品、川島作品にもしかしたら劣るかもしれない。しかしながら、両作品に比べ切実さが伝わってきます。作中に出てくる「心臓」という語を「文学」なり「小説」なりに置き換えて読みなおしてみれば、それがそのまま作者の創作態度なのではないかと思わせるほどです。
(この票の参照用リンク)
心臓がないのに虚無感とか喪失感を書くのではなく、ただただ欲しい欲しい奪いたい、という姿勢がよかったです。ただこの作品と、るるるぶ☆さんの作品とのガチンコ勝負だと、負けちゃいそうかな〜。「書ける」作者さんですので、次作以降の期待もこめての一票を投じたいと思います。(この票の参照用リンク)
ここ数期の結果をふりかえってみると、「なし」票が四票も集まるというのは異例であるようだ。いっそこのまま「なし」票だけが入りつづけて優勝者なしにでもなってしまえ、と思わないでもない。
今期予選を通過した作者のうち、三人までが何らかの形で作品感想を発表していることはやはり興味深い。人の作品について価値判断を行い、それを形にすることは、創作の勉強にもなると考えられる。なぜなら、作者は常に自らの作品の最初の読者たらざるを得ず、無意識のうちに自作に判断を下しながら書きすすめていく筈だからである。
しかし残念ながら、作品の価値判断を行うという行為の中には、当然、マイナスの評価を下さざるを得ない場合もありえる。
今期の「なし」票の底流には、彼らが書いた感想に対する、暗々裡の反発があるのではないか、と言えば、これは邪推であろうか。作者本人に限らず、人の作品をあからさまに貶した奴らの書いたものなど支持したくない、といった風の――。
推薦作については予選感想でも記したので、改めては述べない。一つ前の感想に、「深みのない村上春樹」という言葉があったが、千字で深みのある春樹が書けていたら作者はこんな所に居やしないだろう。それを言ったら身も蓋もないと言うなら、元の感想がそうだったのである。(この票の参照用リンク)
辛口でもうしわけない。「世界はじゅうたんなんだぜ」みたいなのはちょっとうんざり。深みのない村上春樹みたい。「避難時にセーラー服」は入り込めなかった。「心臓がない」というのは寓話だとしても、これも入り込めなかった。読者を引っ張る力のない寓話は、エゴの嘔吐みたいでちょっと勘弁。笑いだとしても、どこを笑えばいいのか。わからない。唯一「蝶」は読めたが、それは「読めた」のであって、何も感動がなかった。こういうことを書く資格がこちらにあるか、と思ったがやはり「決勝」なんだから、好きに書かせてもらうことにする。(この票の参照用リンク)
うそ臭い話と表現が稚拙な話が残った印象。無理矢理一編選ぼうかと思ったがそれも失礼なので「なし」。(この票の参照用リンク)
申し訳ないのですが、この中から一作を選ぶことは出来ません。(この票の参照用リンク)
現実味の無い話ばかりだった。
と偉そうなことを言えた立場ではないが仕方ない。
どうにもみんな軽い。抽象的な感想で済みません。(この票の参照用リンク)