第33期決勝時の、#25心臓(qbc)への投票です(2票)。
「蝶が翔ぶ日」
娘が恋人を夕食に連れてきて不機嫌になる父親、というのはなんですね、時代劇なんですかこれは。絵に描いたような古めかしい父親像と、「トオスト」をかじりながら朝食の場で娘の内股について語り出す変態性のギャップが面白かった。そこのところを目いっぱい、父親の問いかけに娘はかたくなに拒んで、妻の静止をふりきって、娘のスカアトでも脱がして痣の所在を確かめた、みたいにしてくれるともっと楽しめるんじゃないだろうか。
「大きな魔法のじゅうたん」
こういうお話の性格上、描写が漠然とするのは仕方がないのか、じっさい世界はメタファーで構成されているのか。ちょっと考えさせる話です。物語の核心がありそうな気配は書かれているのに、そのものずばりは書かれない。主人公自身は旅に出ない。余裕しゃくしゃくで雲を眺めている。読み手もなんとなくいい心持になる。「皇室アルバム」みたいな小説、と思います。
「心臓」
キイチが世界のはじっこを見つける旅に出かけるのに対し、こちらは主人公自身が出かける「心臓捜し」の旅。文章の心地よさでは海坂作品、川島作品にもしかしたら劣るかもしれない。しかしながら、両作品に比べ切実さが伝わってきます。作中に出てくる「心臓」という語を「文学」なり「小説」なりに置き換えて読みなおしてみれば、それがそのまま作者の創作態度なのではないかと思わせるほどです。
参照用リンク: #date20050522-231843
心臓がないのに虚無感とか喪失感を書くのではなく、ただただ欲しい欲しい奪いたい、という姿勢がよかったです。ただこの作品と、るるるぶ☆さんの作品とのガチンコ勝負だと、負けちゃいそうかな〜。「書ける」作者さんですので、次作以降の期待もこめての一票を投じたいと思います。
参照用リンク: #date20050521-082704