全投票一覧(日時順)

第238期予選時の投票状況です。9人より21票を頂きました。

#題名作者得票数
3高嶺ヶ原霧野楢人6
6ソーラーパワーアマネ(あ)4
8ダンス・ステップY.田中 崖4
5誰かのアンモニア朝飯抜太郎3
7ドラゴンのキキeuReka1
9転生たなかなつみ1
10やみよテックスロー1
-なし1

2022年7月31日 23時11分47秒

推薦作品
高嶺ヶ原(霧野楢人)
感想
動きや背景を版画のように丁寧に掘り起こす、映像が見える描写。カメラの向きや角度を、
明確に意識させられる一連の流れ。語り手が語る「読む贅沢」を読み手の自分のほうこそ、
感じさせられた。後半のエピソードはそこまでベタすぎなくても。でもこれは単純な好み。(この票の参照用リンク
推薦作品
誰かのアンモニア(朝飯抜太郎)
感想
人が目の前に在るモノを見る際には、それは単なる物体ではなく、人の記憶と紐付けて、
思い出したり感じたりされるものだという話が、不快な匂いで印象づけて語り出される。
「希望の話だよ」のひと言でその不快さが反転し、作品の印象を爽やかにするのが見事。(この票の参照用リンク
推薦作品
ダンス・ステップ(Y.田中 崖)
感想
この作品も映像的、というより絵画的(絵巻や漫画など)。自分の幼かった身内が順次、
上っていった階段を追確認するような、年寄り泣かせの物語。階段を真っ直ぐ上るように、
見守り続ける労力の愛しいこと。謎の語り手の視線が切なさと幸せに満ちていて好きです。(この票の参照用リンク

2022年7月29日 17時7分33秒

推薦作品
なし
感想
一応読もうとしたが、文章が頭に入ってこなかったので(小説を読む気分じゃなかったので)、票無しとしたい。
決勝で改めて読ませてもらいたいと思う。(この票の参照用リンク

2022年7月24日 23時28分17秒

推薦作品
高嶺ヶ原(霧野楢人)
感想
感覚や知識を総動員してリアリティを構築されていて、描写の解像度が非常に高い。作品世界の解像度の高い描写は斬新さを提供し、それだけで読み手を満たしてくれる。作者さんは自分の武器を熟知されていると思う。
本作で目を見張るのは解像度の高い地の文と、どこまでも表面しかなぞらない会話文の対比だと思う。前半の解像度を読み進めた読者は、後半のまったく踏みこまない会話の裏の関係性を、あれこれ妄想せざるを得ない。また、高嶺においてそこにはいない「高嶺の花」について語るのはなかなか面白い構図。下世話な読み手としては後輩くんが彼氏なんじゃないかと疑ってしまうが、それはないか。(この票の参照用リンク
推薦作品
誰かのアンモニア(朝飯抜太郎)
感想
トイレネタ多くないですか、と若干引き気味で読み進めていい意味で裏切られた。(作者さんのトイレネタは良作。私覚えました。)祖父の死という、おそらく子にとっては初めての喪失。それを受け止め自らの死生観を語る父親。「お父さんのお腹って」からのズラしが絶妙すぎて、笑いながら泣いた。
あと「お母さんがしんでも?」の死をひらがな表記しているところ、続く父親も同様の表記になっている点が秀逸。子にとってはまだうまく想像できておらず、父にとっては想像できても受け入れがたい感覚が見事に表されていて、何回も読み返した。素晴らしい。(この票の参照用リンク
推薦作品
ソーラーパワーアマネ((あ))
感想
「ルポか何かなのかな」と思って読み進めると、終盤で「あ、これ個人のブログ記事っぽい」と感じて一気に好きになった。ラストの一文で、それまで描かれていたAとBと書き手の三人の関係性、足跡、それぞれが今確かに生きている事実、がどっと押し寄せてきて(それこそ波みたいに)、私のなかに広がってじわじわ満たしていくのを感じ、何だこれは、となった。他では得難い読後感だった。
読み返してみると、「少し内輪の話をすると」とか、「なぜこういう話を書き出したのかというと」とか、書き手(作者さんではない)の温度が感じられる箇所がそこここにあり、ただただ唸らされる。


今期は素晴らしい作品揃いでどの作品に投票するか悩んだ。候補に挙がっていた作品についても感想を。

#7 ドラゴンのキキ
これはもう登場人物(人物?)の好みで。ドラゴンかわいい。荒っぽい言葉遣いで叡智を備えてるのずるい。ネガティブ思考の語り手との組み合わせもよい。ラストのプロポーズが説得力がありすぎて、こんなん惚れてしまうだろ、となった。

#9 転生
作者さんの、連鎖のなかにある親子や師弟関係の話が好き。関係性の内側に留まらず、世界のありようのひとつとして連鎖があるあたり。本作では「手のひらいっぱいの結晶」が「それ」「これ」と書かれた途端、ぼんやりした印象になってしまった点が残念だった。

#10 やみよ
スピリチュアル系というかカウンセリングというか、作者さんの手にかかるとうっかり騙されてしまうかもしれない、などと思いつつ読んだ。後半の転換は、見事手玉に取られた感がある。結末にその驚き以上のものがなかったのが難点。(この票の参照用リンク

2022年7月22日 10時26分59秒

推薦作品
高嶺ヶ原(霧野楢人)
感想
大学院生の学外実習生活の様子が目に浮かびます。自然豊かな場所で心を癒やしているのがよく伝わってきました。(この票の参照用リンク
推薦作品
転生(たなかなつみ)
感想
自分を消滅させてでも、その小さいものを守りたい、母性の根源が描かれていて美しく感じました。(この票の参照用リンク
推薦作品
ソーラーパワーアマネ((あ))
感想
何か分かりにくくて読みにくかったのですが、赤道直下の島の太陽光発電設置のために頑張っている旧知のために援助を依頼してる、ということですよね。語り手と漫画家の性別も関係も分からず、ほわっとした感じではありましたが、他の作品よりは良かった気もしました。

『ドラゴンのキキ』は、ドラゴンは長寿なのでしょうけど、30年かけてまで人間のことを知ろうとしなくても良いように思いました。子作りをするならもっと早めにどうぞ。

『ダンス・ステップ』は娘の成長を見守りながら、距離が離れていく空しさを味わっているのか、でも手を引かれているのに親でもないし、よく分かりませんでした。

『やみよ』は救いにも唆(そそのか)しにもならないことを駄弁っているだけに感じました。聞き手にはそれをはねのける生命力を期待します。

『あの国へ』は登場人物の関係が読者に分からないように混乱させる文章でしたが、その混乱が解決しなければ読みにくいばかりでしたね。設定は面白そうだっただけに残念です。

『誰かのアンモニア』は親子の対話に臭いを持ち込んだのは着眼点でもありますが、加齢臭は50代以降は 2-ノネナール、30〜40代はジアセチルによるもののようで、また耳の裏を洗うだけでかなり改善されることも知られています。アンモニアの発生が尿中に含まれる尿素が分解されることによるのは事実ですが、アンモニアそのものも尿中には含まれ、それはおじさんだけでなく、少年少女、美女に野獣、変わることはありません。いえ、今時の自動洗浄の便器ではそんなに臭いませんよ。空想と妄想でこね上げられた話に感じられてしまいました。いえ、主眼がそこにないのは分かるのですが…。(この票の参照用リンク

2022年7月18日 17時56分49秒

推薦作品
ダンス・ステップ(Y.田中 崖)
感想
抽象的だけど全然わかりにくくはないのが凄い。「この階段は上りだけ」というフレーズが印象に残る。親から子への愛情が優しく美しい。これは本当に良作だと思う。(この票の参照用リンク
推薦作品
ソーラーパワーアマネ((あ))
感想
不思議と惹き込まれた作品。唐突に出てきた「島」がどこの国のどんな島かわからない一方で、太陽光発電の設置の描写が妙に細かかったりするのが面白かった。(この票の参照用リンク
推薦作品
高嶺ヶ原(霧野楢人)
感想
山の描写が美しい。(この票の参照用リンク

2022年7月17日 15時48分52秒

推薦作品
高嶺ヶ原(霧野楢人)
感想
前半部が気に入って推薦。魚肉ソーセージやベビーカルパス、ノゴマ、本の頁が湿る、落石が崖錐地を転がる音などのディテールが、短い文字数の中に詰め込まれて、山の上の世界に一人居る青年がよく見える。
後半部は、うつろな読書のうちに、保科が遣わした下界からの使者と交わした会話の回想が挟まれている。青年の恋心がまだ消えていないことが仄めかされる。私は、この二十そこそこの青年の恋心と心の内について、後半の文字数では書き足りていないのではないかと疑っている。(この票の参照用リンク

2022年7月16日 23時25分32秒

推薦作品
誰かのアンモニア(朝飯抜太郎)
感想
アンモニアの話は回りくどくて大して上手くもないけど、元気づけてあげようという不器用な優しさが感じられた。結局話の内容より対話そのものが慰めになっているというのがハートフルで良かった。(この票の参照用リンク
推薦作品
ダンス・ステップ(Y.田中 崖)
感想
「君」に対するあたたかな視線が良い。死ぬ前に撮りためたホームビデオを見返したような気分になった。終盤の色の対比が印象的。(この票の参照用リンク
推薦作品
やみよ(テックスロー)
感想
詭弁臭いけど隙が無くてうまいと思った。そいういった意味で文章自体に闇っぽさを感じた。
闇の話をするのに「光の当たる角度の問題」という言い回しはしっくり来た。(この票の参照用リンク

2022年7月16日 8時1分40秒

推薦作品
高嶺ヶ原(霧野楢人)
感想
内容云々より、千文字をきっちり使い切ったなという印象。
バランスよく彩りよく詰められたお弁当を開けたときに「わぁ」と小さく声を上げるような、そんな出会いだった。(この票の参照用リンク

2022年7月15日 23時7分19秒

推薦作品
ダンス・ステップ(Y.田中 崖)
感想
大人の階段という単語が最初に頭に浮かんだ。それを上る娘を見守る父親の話かと思ったが、途中で「君の両親だろうか」という箇所があるので、そうではないのだと気付く。じゃあ私は誰なんだろうと思う。次に、ダンスという単語、踊るという単語から、私は君の影なのかと考えるが、影はチューブにつながれないのでこれもしっくりこない。でも、私と君とは表裏という考えは捨てきれず、君は私が病気にならなかったら生きていただろう命なんではないかと考えた。あったかもしれない未来の私と、病に侵された現実の私。そうすると自分の中ではしっくり来た。この作品のいいのは実はここからで、あったかもしれない私=君の現実感、鮮やかさと、死んでいく現実の私が、同じくらい生き生きと描かれている点がとても気に入った。踊り場を境に、赤いドレスと白装束の二人がステップを踏みながら別れていく、その対比がはっきりと頭に残った。(この票の参照用リンク
推薦作品
ソーラーパワーアマネ((あ))
感想
てらいがなくてまっすぐで気持ちがいい。地に足がついた感じがする。普通の物語なら、漫画家になったBとAとの何かしらの葛藤や、太陽光発電に挑み続けるAとそこから降りた私との対比のような形で過度に感情をこめてしまいそうだけど、全くそんなところはなく、仕事をする人たちをとてもまっすぐ描いている点に好感が持てた。つまりこの話自体は漫画にはならないだろうなということ。だからこそ「読者からの反応がすご」かったという、ソーラーパワーアマネがどんな話だったのか、とても気になる。(この票の参照用リンク
推薦作品
ドラゴンのキキ(euReka)
感想
>人間は嫌なことをやり続けながら生きていく生き物なのだな

を引き出すための仕掛けが大掛かりで面白い。子どもが出来てドラゴンがそれを、子育てをなんと形容するか聞いてみたい。(この票の参照用リンク

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