第238期 #6

ソーラーパワーアマネ

 六年ぐらい前に流行った「ソーラーパワーアマネ」を覚えているだろうか? あれは自分の同級生Aが原作で、Aの幼馴染Bが作画で、二人で始めた作品である。初めの数話を掲載していたころは予想していなかったけれど、読者からの反応がすごくて、それから途中からBの作画能力が向上したから、今では漫画家Bのデビュー作ということになっている。
 Aはバイトとか研究とかで忙しくなって、原作を書くことから少しずつ離れていった。だからあの作品の人気はひとえにBの実力によるものだ。そして少し内輪の話をすると、作中のアマネの設定はAの実際とちょっと似ている。海外に旅立ったところなんてそのまんまだ。

 なぜこういう話を書き出したのかというと、先週Aが突然自分の家にやってきたのだ。それこそ六年ぶり。成田空港から直に来たという。自分はオフィスワーカーで、現在オフィスワーカーはリモートワークをしているというAの理解は間違っていないが、LINEで連絡が欲しかった。Aはハーフパンツにサンダル、キャスケットにマスク。日差しを恐れて昼間外出しない自分とは大違いのスタイルだった。

 Aは差し出した麦茶を飲み終えると、Bの話を始めた。駅の構内でBの作品のアニメ化の広告を見たという。Bとはこの前電話をしたそうだ。Bはやはり忙しいらしい。
 その後でAはぽつりぽつりと太陽光発電の話をした。赤道直下の島だからパネルの劣化がひどく、コロナでメンテナンスが遅れたこともあって発電能力はかなり落ちているそうだ。自分も状況は想像できた。というのも、島に設置する当時手伝いに行ったから。自分は途中で帰国して会社勤めを始めて今に至る。一方、Aはずっと島の電気にかかわり続けている。きゃしゃな体なのに、タフな女なのだ。
 当時、自分たちは太陽の動きに合わせて規則正しく生活していた。パネルの角度を変える実験を行ったり、気象データを分析したりする作業を行った。木陰でぼんやりする時間もあった。Aは自分とは違い、休まずパソコンに向かっていたようだ。

 ここまで読んでくれてありがとう。やがてアマネ似のAは島の人々の信頼を得ていくのだけれど、実は生配信を計画しているのでそこはぜひA本人の語りを聞いてほしい。それから島のためにクラウドファンディングを計画している。Bも一肌脱いで何枚か原画を提供してくれると言っている。
 あの海と空と人の姿が伝わればいいなと思っている。



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