第238期決勝時の、#6ソーラーパワーアマネ((あ))への投票です(2票)。
#3
五感に訴える描写については予選時に書いた。再読して気づいたのは、後輩が訪ねてくる箇所が空行で区切られていないこと。ここでは回想シーンに移行しておらず、高原にいる語り手は回想しながらずっとそこにいる。常に語り手に焦点が当たっていて、それが語りの奥行きになっている。
ただ、他の方の感想にもあるように、後半に向かうにつれ尻すぼみに感じられてしまう。仔細な描写と表面しかなぞらない会話は高原と下界の対比かもしれないが、対比するなら恋の激情を綴っても静と動でおもしろいかもしれない。
#6
再読して、やはり最終段落でぶわっと感情の波が押し寄せてくる。真摯な語りと、三者三様に一プロジェクトに携わっている感が眩しい。それが南の島の絵と重なり、見たことがないはずのアニメ映像と重なる。「ここまで読んでくれてありがとう」って、さりげなくてあまり見かけない良い言葉だと思った。
というわけで、他で得難い読後感をもたらしてくれた本作に票を投じる。
参照用リンク: #date20220805-192050
#6『ソーラーパワーアマネ』を推薦。
初見の読後に、誰かのブログの転載か配信の宣伝かと思って、「ソーラーパワーアマネ」で検索してしまった。もちろん該当なし。今の時代の空気感で個人ブログ風の千字創作。テーマは時代感(漫画やアニメへの信頼、コロナ禍を経た大YouTuber時代、など)と、人がちょっと有名な身内を誇らしく思いながら紹介する普遍的な心情の交差かな。ソーラーパワーアマネ関係の作り話が面白いわけではないのだが、その顛末を熱意をもってブログ主が語っているという形式がよく感じた。さっぱりしすぎてるが、狙いと効果が噛み合ってて、作品として過不足がなく、完成品という印象を持った。
#3『高嶺ヶ原』
山の描写が素晴らしいので、下界に残してきた雑事に結局焦点が行ってしまい、前半の旨味を損なう。前半の山景を作品にするための後半部に見えてしまう。そのため選ばなかった。1:青年の秘めた想いの強さ、あるいは雑念の煩わしさを、千字にこだわらず前半のディテールで書く。2:千字作品として山描写と取り合わせる後半の要素をさらに強くする。断然1が読みたい。
#8『ダンス・ステップ』
エピソードが細かく作ってあり、情景も浮かびやすいが、私には少しありきたりな感じがする。「君」と「私」の関係に曖昧さがあり、そこに不思議さがある。しかし、「私」が誰であろうと、死ぬ側の気持ちがまともだから、毒にも薬にもならない。予選の一番はじめの感想の読み方は私も面白く感じるが、踊り場を降りようとする君を慌てて抱き抱える私、の描写が邪魔をする。単純に、人生のステップアップと死に別れを、階段と踊り場に重ねてテーマにしてると読んだ。肝心の階段の構造やスケールが若干定めづらい。「私の次の踊り場」という描写があったかと思えば、私と君は階段部分や踊り場をある程度共有しているように見える部分もある。
参照用リンク: #date20220804-190311