第238期 #10

やみよ

 いいですか。今から本当のことを言います。よく聞いてください。あなたが抱えている悩みは、少しの視点をずらすことで、消えます。少しの行動があなたを変えて、あなたの悩みはすべて消えてしまいます。知っていましたか。あなたが思っているほど、周りの人はあなたのことを見てはいません。馬鹿みたいだ、と少しは思えてきましたか。取り越し苦労、という言葉が浮かびましたでしょうか。そんなこと知っているよ、とうそぶきますか。知っていても、そう言われたことで少しは楽になったのでは無いでしょうか。
 何でもいいからはじめてみましょう。まずは深呼吸をして、リラックス。自分の立ち位置を確認するところから、始めましょう。落ち着いたら、無理のない範囲で、何でもいいですので、今日は新しいことを一つ、やってみましょう。庭の木に水をやることでもいいでしょう。庭が無ければ、近所の公園に生えている木に水を与えてもいいと思います。公園に出て行くことが怖くて抵抗があるのなら、自分を木に見立ててシャワーを浴びてみることをおすすめします。そうすると、地に足がついた気がして、伸ばした手足と背骨が太陽を欲することが分かるでしょう。そう感じられればしめたもの、あなたが部屋を出てほかの人に優しさを与えられるようになるのも、時間の問題です。
 あなたは少し外へ出て、やはりまた元の場所に戻ってきてしまうかも知れません。でも、あなたは外に出たのだから、ずっと部屋の中にいたあなたとは明らかに別人です。そのことを信じて、一歩一歩、外に、外に出るようにしましょう。
 いろいろやって、あなたがなお、何一つ変わっていないとすれば、おめでとうございます。あなたの心に巣食う闇は本物です。私が上で述べたことは、すべて御託と切って捨てていただいて結構です。発想を転換し、闇を育てる方向へ舵を切りましょう。あなたの闇はあなたが目を凝らせば凝らすほど深くなり、いずれあなたと同化します。大人、お金、エゴ、愛情、いろいろな言葉が入れ替わり立ち替わりあなたを刺激します。あなたの周りのひとや、些細な偶然による幸運が、あなたを照らし、あなたはつかの間自分の闇の深淵が見えた、と思うかも知れませんが、それはただの光の当たる角度の問題です。心の闇ではなく、心が闇になるのです。愚かなものはそれを絶望と呼びますが、そんな陳腐な言葉では言い表せないと、きっとあなたは思うことでしょう。



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