第22期決勝時の投票状況です。16票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
21 | 花を抱えて | るるるぶ☆どっぐちゃん | 6 |
14 | ぼくのビンラディン | 朝野十字 | 3 |
13 | Antipodes | 市川 | 2 |
22 | マジカル・マナ | 川島ケイ | 2 |
- | なし | 3 |
予選でもこれに投票した。
が、本当は「なし」にしようかとも思った。
迷いつつ、やっぱりこれ、ということで。(この票の参照用リンク)
やはり文章をさらりとだけ読ませずに映像をイメージできるまで表現するあたりに作者と作品の底力を感じずにはいられない。決勝の他作品は、インターネットを徘徊すれば文章のみを扱ったホームページでよく目にするようなちょっとしたエッセイを弄ったような、そんな感じにみえた。作者の脳内を意図的に彷徨うのは疲れる。彷徨わせて欲しい。これに関しては推薦作はことのほかスムーズであったと感じた。『マジカル・マナ』と2秒迷ってこれに決めた。(この票の参照用リンク)
よくよく考えるとやっぱり変なシチュエーションですが、でも、なんか、なんとなく、わかるような気がするなあ、とか、思いました。はい。(この票の参照用リンク)
予選に票を投じていないのに決勝だけ投じるのも気がひけるが、この推薦作以外の決勝進出作の出来は少し疑問を覚えるので、票を投じることにする。
「Antipodes」は難解というよりか言葉が抽象に流れすぎ悪い意味で輪郭がぼやけており、言葉を追うのに苦労する上、読了後に何らかの共感を覚えるようなものもない。
「ぼくのビンラディン」は悪い意味で漫画的であり、何の奥行きもなく、一人称ボクの女生徒なども、変な漫画の読みすぎではないかと思えるほどで、そういったことは漫画でやれば良いのであって、小説でやる類ではないと思う。所謂ライトノベルというものをやりたいのであれば話は別だが、それならばこの分量は不適切であろう。
「マジカル・マナ」は、この作者の過去の作品と対比するとどうしても雑に思えるし、この作者がやらずともこの手のヒーローもののパロディは世に溢れているのだから、今更このようなものを描かれてもちと困るといのが偽りのないところ。
「花を抱えて」はこの作者の作品の中では特別優れているとも思わないが、上記の理由により決勝進出作の中ではこれしかない。(この票の参照用リンク)
とりあえず、私が選びたいのはこれしかないです。(この票の参照用リンク)
投票数は増えたが質が下がった印象。なんか義務教育「国語」の「作文」レベルの争いになっちゃったなあ。
投票者名を無記名にするなら、作品の方も無記名にして、その代わり、投票に「今期のどの作品の投票者であるか」を明記して欲しい。くだらない作品の作者による低レベルの投票など読む側で勝手に読み捨て、数の外としたい。
「アンチポード」
ウソなんで読む気にすらそもそもならない。リアルでもないしリアリティーもない。作者が、この作品というよりこの文章を書く必然性を持つとも思えない。
仮に、ある人が絵を志していて何某かの「作品」を書き上げた或いは書き上げ得なかったという事実、その事実に即してこれが書かれたとするならその絵或いは未完のまま放棄されたその書きかけの絵、それに対しての史料価値としてこの文章の価値があり得るかも知れない。しかしこの人絵なんか描いてやしない。なんか気色悪い疑似体験小説(←小説もどき)である。まあ、近いのが、オタクと呼ばれる人たちがコスプレと呼ばれる擬似体験ゲームに興じているのと同じようなモノである。もしこれが、この作者が小説を書こうとするその過程そのものを小説化(というか小説になるかどうかは別にして言語化)してみた、試みた、というのであればまだ、そこには、同好の志としてのなんらかの共感を呼ぶ部分もあったかも知れない。分かりやすく言えば、遠藤周作のキリスト教物ならまあ読んでもいいかと思うが、例えばまあ小林よしのりがキリスト教の殉教者を主人公にしたマンガを書いても読む気にならないだろう、という感じ。或いは「アンダーグラウンド」やったっけ?村上龍だか春樹だかが地下鉄サリン事件の被害者にインタビューしたようなドキュメンタリー出してたが馬鹿馬鹿しくて読む気にならない感じ。もっと言えば、そもそも自分が払ってもないところの政治家から「国民年金を払え」と言われてもなんかアホらしいようなそういう感じ。
「ビンラディン」
相変わらず作者自身がアホなのか、あえて登場人物を無知に描いているのかよーわからんというこの人固有の気色悪い作品。
アメリカも汚いがビンラディンも醜い。ブッシュ家−ビンラディン家の経済的な相互依存・共存共栄関係があったことはつとに知られているし、イラクにおける女性差別や宗教差別が人道的な問題をはらんでいたことも知られている。(しかし、それと独裁制とは関係がない。独裁制がうまく行っているときは哲人政治とか言われるし、民主主義だってうまく行っていないときは衆愚政治の汚名を蒙るのである) 今回の戦争に関しては一般に報道されている以上の根深く錯綜した利害関係というか人間の醜さというかそういうものが沢山隠されて、しかし、ひとたび知ろうとすれば知れることも多くあるのである。
しかるに、全くしょうもない、偏向した某オピニオン紙の社説レベルの、報道・真実ではなくて政治的キャンペーンレベルの極めて浅薄な戦争観だけが下敷きの、尚且つ、中身がそのレベルならレトリックというか書き方もサイテーで、これ、何? ネタじゃん。ボケに対して冷静にツッこむという今ではコマーシャルにまで応用されている使い古された漫才のスタイルをそのまま盗用しただけで、「アイデア」たる部分のかけらもない。(最近、化粧品かビタミンCか何かのコマーシャルで、小雪が「何々って知ってますか?」と聞かれて「そういえばそういう恋人も昔…」とボケるのに対してそのセリフを皆までいわせず「もういいです」とぴしゃりとさえぎるやつ。このフォーマット。)
ああくだらん。書くほうも書くほうだがこれに投票するやつもするやつだ。
「マナ」
買いてもいいけど。なー。いまさらなー。わざわざ読むような作品でもないわなー。以前「しゃもじ」があったが、あれはあれでよいので、あのあと、こんなくだらない二番煎じを出す作者の気がしれない。面白くないだけでなく、なんか読んだ分、時間の無駄だったという感じ。
さっきの小雪のコマーシャルの例で言えば、「……という漫才で使い古されたパターンと美女がやってみれば」というまだしもの意外性や「コマーシャルとして商品名を印象的に表現する」というような戦略性がある。しかしこの作品、ゼンゼン存在理由がない。この手の作品であれば、まあ、一般的な大衆小説の理論で、出来事や思想性はゼロでも、ストーリーはなんかの焼き直しじみていて日常生活者の人生観や常識をそのまま作品に反映したようななんなる読み物であっても、キャラクターが立つことでまあ読み物としての存在理由が保てるって書き方をすべきだろうがそんな配慮もゼンゼンない。
というわけで「花を抱えて」について論じてもいいんだが、こんなくだらない作品群と「花を抱えて」を比べること自体が失礼というか「花を抱えて」に対する侮辱とすら思えるので「花を抱えて」については書かない。他3作が論じるにすら値しないことを宣言して、「花を抱えて」推薦の理由とする。(この票の参照用リンク)
予選で自分が推したうち残ったのは『マジカル・マナ』だけだったので、本当ならばこれに義理を立てとおすべき所だが、自然に気が変わった。まあこういう事があるから予選・決勝という仕組みは面白い。
なんと言っても表現の冒険というか、頭から全体の八割がた機関銃のような語りがつづき、最後の最後に状況説明がポンとついて終わる、という形はこれまで見たことがない。ふつう中学生の女子がこんな風に喋るとは思えないが、書き言葉として別次元のリアリティを獲得しているとおもう。
『Antipodes』は、私にはまるっきり読めなかったので、予選を通過したのは意外であった。改めて読んでみたが、やはり私の好きな種類の文章ではない。ただ日常的な言語水準から離陸を試みていることは確かであり、こういう文章もまた『短編』にはなかったと思うので、今後に注目したい。
『花を抱えて』も『マジカル・マナ』もよかったが、上の二作に比べれば、見慣れた巧さだった。かと言って新境地を無理やり開くべきだなどと言うつもりもなく、今期は私の期待は新風に傾いたというだけのことであった。(海)(この票の参照用リンク)
小説っぽくするためにくっつけただけのオチか、と最初は思いましたが、これがあるからこそ、読後感がさわやかなのでしょう。「ボクの側」と「あちら側」にバサッと二分するあたりが中学生らしくてかわいいと思います。(この票の参照用リンク)
>君はボクの側か。それとも、あちら側の人間なのか。
僕は、香織の側だ。(この票の参照用リンク)
予選通過作のなかで、仲間はずれを探しなさい。という問題があったら、今回はこの作品になるだろう。物語らしきものはなく、これは小説なんだろうか、という疑問も残る。しかし、文章の魅力という意味では一番だった。何が書いてあるのか判然としないにもかかわらず、読んでいることは苦ではない。おそらくリズムがあり、内容も少しずつ変化していくからだろう。
他の予選作品のなかでは、「花を抱えて」と迷ったが、こちらもとりたてて展開があるわけではなく、ただ、物語としての設定があり登場人物が二人いることで小説であることははっきりしている。が、面白くはなかった。
面白くないという意味ではこの「Antipodes」も同じで、読後の感想というのは「いろいろと悩んでいるんですね」ぐらいのもので、この文章に共感があったり、のめり込んだりというようなことはまったくなかった。だから、この作品に投票することもやめようかとも思ってもみた。
しかし、文章に魅力がある。絶賛するほどすごいとは思えないが、読んでみる価値はあると思う。(この票の参照用リンク)
予選に残らなかった作品への愛惜ゆえ、一言記しておくと、黒木りえ「夢」、曠野反次郎「さまよい街」の二作は傑出しており、ともに決勝に残るものと予想していた。特に後者に対する票の少なさは意外であり、自分自身、票を投じなかったことへの悔いが残る。しかし、ここはいったん未練を断ち切り、お二人の次回作を楽しみにすることとします。
さて、決勝。予選に続き「Antipodes」を推す。理由は予選投票でかなり長く書いたので、ここに繰り返すことはしない。言葉の自律的な運動に身をあずけてしまいそうになりながら、しかしその言葉から立ち現れるイメージのなまなましさに立ちすくまずにもいられない、そういう両義的な感性を武器にしている作家として、多和田葉子がいる。文体のリズムも指向も違うが、この掌編の中に、多和田葉子と同質の感性を見た。多和田葉子はまた風変わりな物語の語り手でもあるが、この先、「市川」さんが物語を語り始めるとしたら、はたして言葉はどんなたちあらわれ方をするだろうか。(この票の参照用リンク)
好きな作品だが、今回は残らないだろうと思っていた。それでも残った。確かに感想で色々と否定的な見方が出ているし、それはそれで納得はするけれども、それは不幸なことでも何でもないと思う。100万部をベストセラーとして考えれば、日本の人口1億2千万として、0.8%の支持で成り立っている計算なのだ。20〜30代にしぼって考えてみても、2.8%だ(いちおう総務省HPの人口統計を参考にした)。2.8%といえば、予選投票者20人に対して5.6人となる計算。つまり10人が何ら興味を引かれず、5人のアンチがいたとしても、5人の支持があれば客観的に「面白い作品」という評価をして良いと思う。(マジカル・マナは4票だったが) マイナーだけど面白い作品に対しては、感想なり何なりの手段でじっくり育てれば良い。私は、票の多寡と作品の持つ力は必ずしも比例しないと思っている。だからこそ、コンテストというのは面白いと思う。ファンがいて、アンチがいて、でもアンチも実はそれに触発されていて、ファンも次には離れて行って――そういう混沌の中で生き残るのが面白い。だいたいどこの世界でもそういう混沌はあるものではないでしょうか。それがコンテストの懐の深さの問われるところでもあるのです。(この票の参照用リンク)
なんか心に残る作品でした。(この票の参照用リンク)
今回、はじめて『なし』に投票します。「これっ」てのがありませんでした。
以下、私的感想を簡単に。
『Autipodes』
外枠を描かずに色を塗った感じ。こういうやり方もアリだとは思います。ですが、「格好つけちゃったな」という印象もありました。どうも、もう一つ思い入れがもてませんでした。
『ぼくのビンラディン』
第一印象として、「一演説打つ香織と戸惑う僕」という構図に、「これはギャルゲーのワンショットだなあ」と思いました。それについては特に否定的ではないんですが、ただ一昔前のギャルゲーという印象がありました。ぶっちゃけ言うと「一演説打つ中学生」「ボク少女」「リボン」「セーラー服」辺りで。こういう「アイテム」が一つか、せいぜい二つならスパイスとしてアリだとは思いますが、こう並ぶと正直萎えます(意図して、ではないようですし)。
「セーラー服」は「制服」という表記にして欲しかった。これで一昔前のギャルゲーという印象が強まりました(まあたぶん、これは個人的にでしょうけど)。
あと、指摘されていなかったんですが、「ボク少女」より「リボン」のほうがありえないと思うんですけどねえ。見たことがありません。
『花を抱えて』
この人の作品は一番最初に読みます。で、「やべー、おもしれー」と思わない限りは投票しないようにしています。でないと毎回この人に入れてしまうので。
もう一つピンときませんでした。他の人の感想を読んでみて「なるほど」と思うも、面白いと思うかどうかはまた別の話で。まあ自分がこの人の作品に投票した場合は大概、予選を通らないんですが。
『マジカル・マナ』
予選で「アイデアで終わってしまった」と書いたんですが、海坂さんの裏予選(http://www004.upp.so-net.ne.jp/unasaka/urakekka22.html)でも「アイデアスケッチだ」という意見が出ていました。
こっちは「勢いで書いたらどうか」で、向こうは「練りがたりない(勝手な意訳)」だと思います。
まあ、もっと練ったほうが良かったと思います。中途半端な印象がありました。「勢いで書いたら」はどうも個人的な好みのようなので、スルーしてもらえれば。(この票の参照用リンク)
毎回、甲乙つけがたく、どの作品に投票するか悩むのですが、今回はなぜか「これは!」と思える作品がありませんでした。
う〜〜〜〜〜ん、残念ですが、「なし」です。(この票の参照用リンク)
「マジカル・マナ」は雑に作られた印象。「ぼくのビンラディン」は登場人物の一人称が「ボク」と「僕」なのにタイトルが「ぼく」である理由が読み取れない。だからという訳ではないが作者の提示した世界に入れなかった。
残ったのは「花を抱えて」と「Antipodes」で、どちらかに投票したくなる決め手がない。出会い頭の衝撃も後からじわじわ来るボディーブローもない。(この票の参照用リンク)