投票参照

第22期決勝時の、#13Antipodes(市川)への投票です(2票)。

2004年6月22日 9時43分46秒

予選通過作のなかで、仲間はずれを探しなさい。という問題があったら、今回はこの作品になるだろう。物語らしきものはなく、これは小説なんだろうか、という疑問も残る。しかし、文章の魅力という意味では一番だった。何が書いてあるのか判然としないにもかかわらず、読んでいることは苦ではない。おそらくリズムがあり、内容も少しずつ変化していくからだろう。
 他の予選作品のなかでは、「花を抱えて」と迷ったが、こちらもとりたてて展開があるわけではなく、ただ、物語としての設定があり登場人物が二人いることで小説であることははっきりしている。が、面白くはなかった。
 面白くないという意味ではこの「Antipodes」も同じで、読後の感想というのは「いろいろと悩んでいるんですね」ぐらいのもので、この文章に共感があったり、のめり込んだりというようなことはまったくなかった。だから、この作品に投票することもやめようかとも思ってもみた。
 しかし、文章に魅力がある。絶賛するほどすごいとは思えないが、読んでみる価値はあると思う。

参照用リンク: #date20040622-094346

2004年6月9日 18時12分47秒

予選に残らなかった作品への愛惜ゆえ、一言記しておくと、黒木りえ「夢」、曠野反次郎「さまよい街」の二作は傑出しており、ともに決勝に残るものと予想していた。特に後者に対する票の少なさは意外であり、自分自身、票を投じなかったことへの悔いが残る。しかし、ここはいったん未練を断ち切り、お二人の次回作を楽しみにすることとします。
さて、決勝。予選に続き「Antipodes」を推す。理由は予選投票でかなり長く書いたので、ここに繰り返すことはしない。言葉の自律的な運動に身をあずけてしまいそうになりながら、しかしその言葉から立ち現れるイメージのなまなましさに立ちすくまずにもいられない、そういう両義的な感性を武器にしている作家として、多和田葉子がいる。文体のリズムも指向も違うが、この掌編の中に、多和田葉子と同質の感性を見た。多和田葉子はまた風変わりな物語の語り手でもあるが、この先、「市川」さんが物語を語り始めるとしたら、はたして言葉はどんなたちあらわれ方をするだろうか。

参照用リンク: #date20040609-181247


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