第19期決勝時の投票状況です。19票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
21 | 腐れ名月 | 曠野反次郎 | 5 |
6 | 怪獣になって空を飛ぶことについて | 蟹 | 4 |
7 | 父の年賀状 | 江口庸 | 4 |
20 | リップクリーム | 川島ケイ | 2 |
- | なし | 4 |
独特で濃密な物語世界観に惚れ惚れしつつ一票投じます。(この票の参照用リンク)
予選では推さなかったが、読み返してみて。
クサい独白とクサい風景語りとの中間に腰を据えたことで、いいバランスになったのではないだろうか。月というのは使い方が難しいアイテムだと思うが、目立ち過ぎずうまくはまっている。
他の三作品も面白いので、今回は個人的にはどれでもいい。(この票の参照用リンク)
この人は決してミスの許されない作風なのに、ケアレスミスとか誤字脱字とかが時折目に付くのは大変遺憾である。でもまあ、これ(この票の参照用リンク)
文章が上手いだけでなく、味があると思います。
描いている世界も千文字とは思えない深さがありました。
なにより、一番印象に残ったのがこの作品です。
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自分の世界を下視しきる様な、苦い、トーンの暗い文体に魅かれました。
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おもしろくて、もう一度読みたいと思ったこの作品にする。(この票の参照用リンク)
はじめに読んだときは奇妙な力のある小説だなあと思い引きつけられるものを感じていたのですが、投票時の心具合か体調のせいか、結局投票するには至りませんでした。あらためてじっくり読み返してみると、いろいろとアラは目立つものの、やはり魅力的な小説なのだと思います。減点法ではなく加点法にて、こちらに投票します。(この票の参照用リンク)
うまい。トボけ具合が抜群によかった。ここで言うトボけ具合とは、おちゃらけのことではなくて、「怪獣になりたい」という荒唐無稽でシャレに走りがちなモチーフを十分に制御し、かつそれを感じさせず、ぬけぬけと物語ってみせた、という自然体のパフォーマンスに対する賛辞である。オチも良かった。きっちりとまとまっているし、掌編としてたいへんに良くできていると思う。(この票の参照用リンク)
「〜になりたい〜」というよりも、すでになってしまっている存在なのが、たいへんに好みです。(この票の参照用リンク)
今期はちょっと質という点で残念な期でした。あまり面白くなかった。
推薦作については、作品の出来と言うよりも、作者さんへの票、という感じになります。この方の作品は実に特異であるなあ、と思う。前期も投票させて頂いた、気になる作者です。クオリティは今回あまり高くは無かったけれど、設計思想で他の作品を圧倒している、と判断し、投票させて頂きます。(この票の参照用リンク)
父の年賀状
作者: 江口庸
おもしろいなあ。というのが、感想。今時のTVドラマなんかよりもドラマがあってはらはらする。
前半、要約じみた簡素で荒削りな表現がだんだん小説として体裁がとれていき、最後には、情感まで漂わせている。
ストーリーの力というものを感じさせてくれた。
怪獣になって空を飛ぶことについて
作者: 蟹
ほとんど詩だといっていい。青春の喪失感が、実は主人公ではない色鉛筆のところで表現されて、これがあるから、最後が生きた。
不思議なことだが、自分について語るときよりも、他人について語る方が読者の心に訴えかける力が強い。それが小説という仮構の語り手においても、たいてい当てはまる。
この作品では、赤つ色鉛筆になることを曲げなかった意思の強さと、使われて消えていく悲しみと、消えることを承知の上で決断した山下君がもっとも印象的だ。
逆に、前半の両親が出てくるところは、冗長だと感じた。
どちらにするか迷ったが、全体にあきさせない「父の年賀状」にした。
その他、予選は通らなかったが
ふーとらるーの冒険
作者: 朝野十字
東京ど真ん中
作者: るるるぶ☆どっぐちゃん
も印像に残りました。
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四作品の中で優勝作品を選べと言われたら「腐れ名月」なんですが、どれが好みかと聞かれたら「父の年賀状」。
毎回好みで選んでるようなところもあるので、申し訳ないんですがこちらに一票。
「父の年賀状」が一番文字を追うのが楽しかった。(この票の参照用リンク)
起承転結がしっかりしてる(この票の参照用リンク)
これといった作品はなかったが、がんばって比較して推薦作を決めたい。
『怪獣になって空を飛ぶことについて』は、とても荒っぽい。粗雑きわまる。が、部分的に作者の感性がうかがえる表現が散見されるので、もっと丁寧に書いてほしかったと思った。もったいない。今後が大いに期待される。
『父の年賀状』は、粗筋が書いてある、としか思えなかった。終始、退屈した。
完成度で言えば『リップクリーム』は抜群。頭2つ3つは出ている。しかしモチーフをそつなく消化しただけという感がぬぐえない。ユニークな(独得な)ところがない。いい話だとは思った。
『腐れ名月』は悪夢(と言ってよいだろう)の世界の描写がユニークだった。でも後半は文体でごまかしてはいるがただの説明文(しかも、くだくだしい)に堕してしまった。この落差は途中で作品を放棄したのかと疑うほどひどいと思った。
けっきょく『父の年賀状』以外で悩んでみたところ、将来性を評価するなら『怪獣になって空を飛ぶことについて』、いかにも小説然たる完成度なら『リップクリーム』、独得の世界観とその描写の妙なら『腐れ名月』となり、どこを評価するかで決めるしかない。となると安易に保守傾向に走りがちなもので、あくまで消極的に『リップクリーム』に1票。(この票の参照用リンク)
予選を通過した作品にはどれもそれぞれに光る所があったが、私の特に推したいのは『怪獣になって空を飛ぶことについて』と『リップクリーム』である。
まず『怪獣──』は、何が何でもこれを読ませるのだ、という切実な思い入れが一語一句にみなぎっているかのようで、読者を否応なく引き込んでいく吸引力があった。描かれている事柄そのものは非現実的で荒唐無稽のたぐいであるが、別の次元の迫力を感じた。行文はすこし粗っぽく、「踏みとどめよう」という語法にはいささか引っかかったが、減点するまでもないとおもう。
一方『リップクリーム』は、ごく平凡な母娘のやりとりを淡々と描いて、心地よい温度を感じさせてくれる。何気ない題材のようだが、登場人物の人間としての奥行き、存在感をしっかりと定着した集中力は並々ではない。
結局、言葉の姿を評価して『リップクリーム』を残すことにしたが、『怪獣──』も、決して賞に値しないとは思わない。川島氏の作品には、時に作りすぎたあざとさが感じられることもあって、これまで私はあまりよい読者ではなかった。その埋め合わせのような感じもあったようである。
これは作品評とは別のことだが、今期から投票状況がたいへん判りやすく表示されるようになった。管理人さんの努力に敬意を表したい。(この票の参照用リンク)
どの作品が優勝してもいいかなと思ったその真意はつまり。なしかなと。今後の『短編』の新しい局面に向けてを考えると、傑出した作品にでなければ決勝票は投じられませんでした。
(この票の参照用リンク)
何か良い方法ないかな?(この票の参照用リンク)
決勝に残った作品を改めて読み返してみたが、どうも「優勝作品」と言える面白さや完成度を持ったものがない気がする。敢えてこの中から選べと言われれば川島氏の「リップクリーム」かとも思うが、「なし」という選択肢の存在がわたしにそうさせることを拒むようである。(K.)(この票の参照用リンク)
そもそも好みの作品が残らなかったが、まだこちとらの琴線にかする程度に引っかかる作品についてのみ書く。
『怪獣になって〜』は最初の文に句点がないことの意味が見出せなかったのと、「〜になりたい少年」を扱った様々な作品を連想してしまい(怪獣ネタでは http://www.niseyono.com/flash/flash2/hero.htmlなど)、それらに勝っていないなと判断したのとで投票せず。
似た傾向の作品を連想しても較べようと思わない小説もあるので、これは作品の力だろう。
『リップクリーム』は表記の不徹底に意味が見出せなかった(『「かーー」と』のように鍵括弧の後に改行せず「と」が来る文と、改行し、さらに一字空けて「と」が来る文の混在など)。ついでに「かーー」のような表記(長音記号の繰り返し)は好まない。これはもちろん好みの問題だが、内容にそぐわなく感じた。そういう文章づくりの面での雑さが目についたので投票に至らず。
どうしても、回が重なり「常連」が出てくると、「常連」には成長を求めてしまう。新人には破壊力を求めるが、これはこちとらの勝手な思いでしかないのも重々承知。(この票の参照用リンク)