投票参照

第19期決勝時の、#20リップクリーム(川島ケイ)への投票です(2票)。

2004年3月22日 5時43分19秒

 これといった作品はなかったが、がんばって比較して推薦作を決めたい。
 『怪獣になって空を飛ぶことについて』は、とても荒っぽい。粗雑きわまる。が、部分的に作者の感性がうかがえる表現が散見されるので、もっと丁寧に書いてほしかったと思った。もったいない。今後が大いに期待される。
 『父の年賀状』は、粗筋が書いてある、としか思えなかった。終始、退屈した。
 完成度で言えば『リップクリーム』は抜群。頭2つ3つは出ている。しかしモチーフをそつなく消化しただけという感がぬぐえない。ユニークな(独得な)ところがない。いい話だとは思った。
 『腐れ名月』は悪夢(と言ってよいだろう)の世界の描写がユニークだった。でも後半は文体でごまかしてはいるがただの説明文(しかも、くだくだしい)に堕してしまった。この落差は途中で作品を放棄したのかと疑うほどひどいと思った。
 けっきょく『父の年賀状』以外で悩んでみたところ、将来性を評価するなら『怪獣になって空を飛ぶことについて』、いかにも小説然たる完成度なら『リップクリーム』、独得の世界観とその描写の妙なら『腐れ名月』となり、どこを評価するかで決めるしかない。となると安易に保守傾向に走りがちなもので、あくまで消極的に『リップクリーム』に1票。

参照用リンク: #date20040322-054319

2004年3月21日 14時3分20秒

 予選を通過した作品にはどれもそれぞれに光る所があったが、私の特に推したいのは『怪獣になって空を飛ぶことについて』と『リップクリーム』である。
 まず『怪獣──』は、何が何でもこれを読ませるのだ、という切実な思い入れが一語一句にみなぎっているかのようで、読者を否応なく引き込んでいく吸引力があった。描かれている事柄そのものは非現実的で荒唐無稽のたぐいであるが、別の次元の迫力を感じた。行文はすこし粗っぽく、「踏みとどめよう」という語法にはいささか引っかかったが、減点するまでもないとおもう。
 一方『リップクリーム』は、ごく平凡な母娘のやりとりを淡々と描いて、心地よい温度を感じさせてくれる。何気ない題材のようだが、登場人物の人間としての奥行き、存在感をしっかりと定着した集中力は並々ではない。
 結局、言葉の姿を評価して『リップクリーム』を残すことにしたが、『怪獣──』も、決して賞に値しないとは思わない。川島氏の作品には、時に作りすぎたあざとさが感じられることもあって、これまで私はあまりよい読者ではなかった。その埋め合わせのような感じもあったようである。
 これは作品評とは別のことだが、今期から投票状況がたいへん判りやすく表示されるようになった。管理人さんの努力に敬意を表したい。

参照用リンク: #date20040321-140320


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