第52期決勝時の投票状況です。13票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
13 | 年月 | 川野直己 | 4 |
4 | 髭 | わら | 3 |
7 | 神様 | たけやん | 3 |
10 | 妹の血 | qbc | 3 |
今期は「神様」と「年月」の短め作品決戦だと思ってました。考えた末、最後の一文で世界が変わったような印象を心に残した「年月」を推したいと思います。(この票の参照用リンク)
「この部屋に暮らすかぎりは僕が月を訪れる必要性は無いのだ」ということは月まで行くことを一時は空想したということで、月とすっぽんではないが、小さな部屋と、小さく見えはするが、実は大きなものである月との美しい対比がある。他の三作はかっちりとオチをつけてしまって、それはそれでいいのだけれど、読み終えて腑に落ちて、それで奇麗に仕舞いになってしまうのだけれど、『年月』には読み終えてからの余韻があって、自らも月を仰ぎ見た気にさせられる。ところで「妹の血」はどこかで一度読んだような気がするのだが、別なところで一度発表されたものなのだろうか。サイトをお持ちでない作者の場合、こういった時の確認が取りづらいのちと困る。
話は変わって、今期に限ったことではないのだが、票感想にて「競った場合、新人を推す」というような意見が散見されるのはよくわからない。こういってはなんだか「短編」投稿者はみな一様にただの素人に過ぎず、そこに新参だ、古参だ、という区分を変にもうけてしまうのは、ある種の傲慢ではないだろうか。
作者がどこのだれであれ、一等面白く感じた作品に票を投ずるのが本当だろうと思う。(この票の参照用リンク)
『髭』は、登場人物がただ与えられた役割をこなしているだけだったので(宇宙人はすごい技術力でなんでもできる、父親は息子のために仕事をがんばる、息子は父を尊敬している)、もうひとひねり欲しかった気がしました。
『神様』は、わざわざ隣の人形作家を呼びにいったのに、彼女が人形を連れ戻しにきたときには既に人形は動かなくなっている、というのがもったいなかったです。全体的に、まだ面白くなる余地があるように思いました。
残る『妹の血』と『年月』で悩んだのですが、どちらの作品も主人公の思索がメインで、閉じた話であるにも関わらず、『年月』の方は更に作品について何かを述べたくなる、不思議な広がりを感じました。その余白の部分を評価して、『年月』に投票させていただきます。(この票の参照用リンク)
決勝作品を何度も読み返してみたけれど唯一心の扉に小さくコツコツと響いた作品だなと思った。きっと主人公の置かれている部屋はとてもとても小さな部屋で窓は人が出られない位小さいかあるいは鉄格子が嵌められているのかどちらにしても他者の介在のない限り主人公はきっと外には出られない。〈僕自身が外へ出る必要性は感じないのだった。〉この一文が沁みた。私自身の想像力がただの的外れならなんちゃってでおしまいだけれど主人公が外に出る必要性を強く望むようになったとしたら(心底そうなって欲しい)そこにはささやかな希望の前に大きな地獄が待ち構えているような気がする。貴方はどれほどの年月をそこで過ごしているのだろう?(公文)(この票の参照用リンク)
余分なものが何もないという感想がありましたので、逆にもう少し字数を増やす場合にどんなことを付け加えられるかと考えるようにして、読んでみました。
他の方の作品に手を加えるなど簡単にできるはずもないのですが、それでもやはり難しいと思いました。付け加えた分だけ物語に必要のない登場人物の側面が出てしまいそうだと思ったからです。
以上より、掲示板に載せたことと違うことを言ってしまいますが、巧くまとまった作品だと思いました。(黒田皐月)(この票の参照用リンク)
短い文章量だけに一語一句に無駄がなく,内容も斬新でとても面白かった.この作者の別な作品も読んでみたい.(この票の参照用リンク)
家族への愛情が素直に伝わってきた。
当たり前の心情を当たり前に感じ取るという、現代社会で欠けてきている部分を表現していて良いと思った。(この票の参照用リンク)
『髭』『神様』『妹の血』の三作は予選でも推したか、または推そうかと迷った作品だったのですが、『年月』だけは正直言ってよくわかりませんでした。漫然と読んだわけでもないのですが、どうにも自分の中で確かな像を結んで来ない感じでした。
ところがこの決勝の最初に公表された票感想の「窓は……鉄格子が嵌められているのか」というくだりを読んで初めて、目から鱗といいますか、明晰に結晶化したような気がしました。ちなみにあの感想じたい秀逸な文であると思いました。
そんなわけでにわかに『年月』に気持ちは傾くのですが、同一線上で競った時は新人さん優先という自分勝手に設けた原則に従って『神様』にします。いろいろな事を考えさせる作品で、たとえば「あなた様の懸想されている」云々としつこく言っているのは人形だけで、本人たちの気持ちは全く空白のまま残されていて、人間より人形の方が何だかリアルに見えてきます。(この票の参照用リンク)
また行きましたか→あの男の言うことは、半分正しいのだ。→ラスト、の3段階で前半の謎が解けて、「おぉ」と思いました。もう一度読み返すと、人形(小さな男)の一途さがかわいくて切なくて、悲しいけど微笑ましいです。一票入れさせてください☆(なべ)(この票の参照用リンク)
文章の密度だけをとれば『年月』でしょうが(『僕自身が外へ出る必要性は感じないのだった。』をいれるタイミングが絶妙)、そういう基準でとってしまうと川野さんの作品は毎回いれなければならず、それはるるるぶさんも同様で、このお二方に関しては、他の作品がどうしても推せない時にだけ選ぶ、という事にしています。誰も喜ばない失礼な態度ではありますが。
『神様』ですが、
人形が、作り主に恋心を寄せる主人公に対して繰り返し手を引くように言い続ける、という話として読むには深読みできそうな曖昧な表現があって腑に落ちないので、ショートショートとしてきちんと落ちているかというとそうではないと思いますが、やっぱり主人公が小さな男相手にばったんばったん動き回るところはとても面白いです。風呂場の反響音はきれいに決まっていると思います。(三浦)(この票の参照用リンク)
『髭』は宇宙人の存在かぞんざいだなと思ったのでパス。
『神様』は最初の展開に比べると後半がしゅるしゅると小さくまとまってしまったような感があるのでパス。
『年月』は確かに繊細でこういった文体の作品の中では群を抜いてよいのだけれど、作り上げた印象が薄いのでパス。
というよな感じで減点式に考えると『妹の血』。
過不足無い。その分、無難になっている気はする。
何故減点式かというと今回、私が推した小説が一個も決勝に残らなかったから。(この票の参照用リンク)
妙な気分にさせられた。(この票の参照用リンク)
qbcさんの作品の中でも一番好きかな〜。(この票の参照用リンク)