全投票一覧(日時順)
第26期決勝時の投票状況です。15票を頂きました。
2004年10月22日 22時39分2秒
- 推薦作品
- 泡(戦場ガ原蛇足ノ助)
- 感想
- 泡にもいろいろあって、炭酸水と人魚姫ではひとあわの重みも大分違うわけですが、この作品は的確に炭酸水であったのがよかったのではないかと思います。甘すぎるような味がないような性質というのもそうですし、私はひと缶(あるいはひとびん)飲み切る直前にお腹が膨れてしまって残りの少量を持て余すたび複雑な思いを味わったりもするのですが、その小さく安い身近な泡はちょうどこの作品を読んで感じる感覚のようなものである気がするのです。炭酸水に手をかざすような愉しさやら、上記の複雑さやら、上品ぶれない味やら。好きな作品です。(市川)(この票の参照用リンク)
2004年10月22日 9時5分29秒
- 推薦作品
- ありくいさん(巻)
- 感想
- 予選通過作の中ではいちばん抵抗すくなく読める文章である。描かれている情景が過不足なくこちらの頭にも映ってくるようで、文章を読む快感というものを感じさせてくれた。アリクイがこうして人家の縁先にやって来るということは現実にはあり得ないが、読む方では何の不思議もなく受け容れてしまうというのは、作者の実感がこめられているからであろう。蟻の悲鳴も「聞こえた」と言い切っている所に注意すべきで、この世界では「…ような気がした」では断じてないのである。要するに、あっさりと書き流されたように見えて、一つの別乾坤をたしかに構築している作品である。(海)(この票の参照用リンク)
2004年10月21日 22時8分56秒
- 推薦作品
- ありくいさん(巻)
- 感想
- くどくなく、あっさりしすぎているわけでもない。
そのスマートさに。(この票の参照用リンク)
2004年10月20日 20時17分1秒
- 推薦作品
- 氷を渡る(でんでん)
- 感想
- 気に入ったのは、「泡」の『ホームに列を成していた人々が
座席を分け合った』という描写と、ユーモラスな「ありくいさん」
の登場人物(生物?)
最後まで迷ったのは、「氷を渡る」と「風船葛」の2作品。
水増しの無い贅沢な描写と、物語に至るまでの背景の大きさ
では「風船葛」かとも思うんですが、やっぱり予選通りに
「氷を渡る」で。
違和感なく読みきれ、余韻の残る良い作品。(この票の参照用リンク)
2004年10月19日 22時33分35秒
- 推薦作品
- 泡(戦場ガ原蛇足ノ助)
- 感想
- 小市民的ハードボイルド、とでもいうような感じがよかったです。(この票の参照用リンク)
2004年10月16日 23時36分43秒
- 推薦作品
- 氷を渡る(でんでん)
- 感想
- 決勝作品のみ読みました。『氷を渡る』、作品全体の緊張感と、終わる場所がとても印象に残ったので、一票入れさせてください。
夢みた舞台に立ちながら、今いる場所に安住したい「きみ」の入り組んで拮抗した心情と、氷を渡るという行為との緊張感がマッチしていると思います。池に落ちてゆくところまで書かずに作品を切り終えたのも、不安定で繊細な印象を与えて、品があるように感じました。
迷ったのは『パフェ・バニラ』ですが、最後の一文が「アイスを食べるはるちーを眺めながら食べるチョコワッフルの方が」、などあった方が、陳腐にはなるけれど、わかりやすくてほっとするのかな、と思ったりしました。作者の方はあえてそのような事を言わせたくなかったのかもしれませんが…(この票の参照用リンク)
2004年10月15日 23時20分37秒
- 推薦作品
- なし
- 感想
- 非常に厳しい作品ばかりが予選を通過してしまった。『ありくいさん』は話筋は良いが流れが単調だ。もう少し読ませる工夫がほしい。『氷を渡る』を選ぶとすれば『読書する、森に入る』の予選落ちに釈然としない。『パフェ・バニラ』で俺が一番最初に思ったのは、エロゲ。『泡』はおもしろくなる前に切れてしまった印象がある。『風船葛』は小説ではなくポエムだ。この中で選ぶとすれば、『ありくいさん』か『泡』のどれかだろうと思うが、『読書する、森に入る』が予選通過していれば、良い拮抗状態が得られたろうにと思うと、今回の予選は、少々ではなく、かなりだらしがない展開なので「なし」。(この票の参照用リンク)
2004年10月15日 20時16分43秒
- 推薦作品
- 氷を渡る(でんでん)
- 感想
- 決勝作品のみ読んで投票。「氷を渡る」が出色の出来。「ありくいさん」は白昼夢ファンタジーとでもいった趣きで面白いが、もうひとつ何か足りない。動物キャラものとしての域を脱していない。「パフェ・バニラ」はこの中では一番読みやすいが、それゆえフックが働いていないようであっさり読み流し去ってしまえる。「泡」は面白くないことはないがやや回りくどい。炭酸水を噴き出させたという情景が中盤で初めて明らかになるのだが、そこまで引っ張る意味が見出せない。もたついている。「風船葛」は無用に入り組んだ描写が多く、主人公の行動や感情が伝わって来ない。全てが修飾であり、物語としての骨格がない。そういう中で「氷を渡る」は別格に素晴らしい。ただ、「僕」が「みんな」と同じ校舎の中にいるのではなく「君」の眼の前に立っている、という設定が唐突すぎるので、序盤の描写の中で処理しておくべきか。また、「最初から連中は、ただ氷が割れ、きみが暗い水の中に落ちこむことだけを待っていたのだ。」は「待っているのだ。」の方がいい。この時点ではまだ落ちていないから過去形になるのはおかしい。(この票の参照用リンク)
2004年10月14日 22時43分28秒
- 推薦作品
- 氷を渡る(でんでん)
- 感想
- 予選で推した作品でもあるので、再び一票。
個人的に「氷の上でわざと足をすべらせる」という一文を予選票投票の際に見落としてました。
「氷を渡る」という行為は、氷上をあたかも道路上か何かのように平然と渡ってしまうことのではなく、あくまで“渡る途上で氷が割れる”ということが大前提になっているのだと感じました。“おやくそく”というやつで。逆に「きみ」が当たり前のように渡り切ってしまう場面を想像する方が恐ろしい気にもなります。
この直後に「僕」も、氷が割れてずぶ濡れになる「きみ」を見て、或る種倒錯的快楽を感じるのかも知れませんね。それは「校舎の中央池にはった氷」を巡る大きな物語に抱かれている無意識な充足感に他ならないのだろうが。(この票の参照用リンク)
2004年10月13日 12時20分5秒
- 推薦作品
- 氷を渡る(でんでん)
- 感想
- 消去法で申し訳ないが残ったのはこれ(その場面が印象に残るという点において)。「ありくいさん」は表面的に川上弘美氏の作品をなぞらえているという印象になってしまった。「泡」も悪くないが、それほどには推すほどには残らなかった。まあ単にまれにありそうなことという感じ。「パフェ・バニラ」読みやすいけど、ただそれだけかなと。「風船葛」文章悪くないけどどっか冗長すぎる。以上自作を棚に上げてあれこれ印象論に終始して申し訳ないけど率直な感想です。(この票の参照用リンク)
2004年10月10日 5時48分21秒
- 推薦作品
- 風船葛(市川)
- 感想
- 結論としては、この作品を推したい。決して誇張ではなく、1000字という文字数でいかに世界の広がりを豊かに表現するか、その限界がここに示されていると思う。なおかつ一方には、技巧にとらわれない、のびやかな叙情がある。言葉づかいに違和感を覚えたとの感想も見受けられるが、必ずしもリーダブルでない異化された言葉づかい、ときどきふと読み手を立ち止まらされる表現に、僕は逆に才能を感じる。いずれにせよ、「短編」の優勝作として、これ以上ふさわしい作品は考えられなかった。
とはいえ、予選を通過した「ありくいさん」「パフェ・バニラ」「泡」の三作は出色の出来で、それぞれ面白く読んだ。そのうち、「ありくいさん」の感想は予選票にかなり長いこと書いた通りなので、ここでは他の二作について書きとめておきたい。
○「パフェ・バニラ」
いきなり私事になりますが、自分が今、抱えている小説の冒頭でも、やはり二人の女性があだ名をめぐるやりとりをする場面があり、さんざん呻吟しているところだったので、今作にはいきなり引きこまれてしまいました。そういう事情ゆえ、自分としては特に親近感のある作品。
前期では、会話が大きな比重を占める作品が多かった、との印象があったが、今期もこの短編をはじめ、果敢に挑んでいる作品がいくつかある。(会話、難しいんですよね。)今作の場合、作者は鋭い対立を描き出すでもなく、またナンセンスな言葉の応酬の果てに実存的疎外(死語ですかね)を垣間見せるでもなく、のんびりと、ほのぼのと、幸福で他愛ない二人を描出することを選んだ――と、そういうふうに僕は感じた。その作者の意図は十分に実現されていると思う。他愛ないものを他愛なく描いているからといって、作者自身が他愛なくしていてはいけないわけで、見かけののほほんとしたたたずまいとは違い、実はかなりの労作なのではないか、とも推察する。
ところで、この短編を積極的に推す人は、そのほころびのない幸福感を称えるに違いないが、僕としては、そこが逆に少し物足りなく思えた。ちょうど、すべてのセンテンスが順接でだけつながっていて、逆接のない文章、「そして」だけで「しかし」のない文章を読むのに近い読後感、と言えばよいか? 終盤、主人公がアイスなんかよりチョコワッフルの方がずっとおいしい、とむきになって思う、このあたりの感じ方を、悪意、とまではいわないにしても、もう少し深く探っていってみては、と感じたが、どうだろうか。一方がもう一方に対して感じ
る、違和感というほど大袈裟なものでもない、何というか、「おや?」というちょっとした驚きや引っかかり、ささやかな差異、そういったものを通じて、対話にさらに奥行きを加えることはできるのではないか、と。
ここで正直に打ち明けてしまうと、「それは単なる好みの問題じゃないの」と問われたなら、「きっとそうなのでしょうね」と頷くしかないわけで、自分の好みを一方的に開陳していることにいくばくかの後ろめたさも覚えつつ、しかしこの感想は現時点での一読者の受けとめ方として、削除せずにおこう。
○「泡」
戦場ガ原蛇足ノ助さんは、つくづく書き出しの名手だと思う。
試しに、旧作の中から冒頭だけを拾ってみると、「機械は高くて手が出ないので、代わりに人間を買うことにした」、こんなシャープな切れ味のものから、「どういった縁に当たるのかよくは知らないのだが、親類の集まりで年に数度決まって顔を合わせる、遠い血縁らしき人がいる」のように一見さりげなく、しかしその実そっと読者の顔色を横目でうかがうような、したたかな味のあるもの、「目覚めたドーナツは、胸にぽっかりと穴が空いたような気分でした」という具合に人を食ったもの、さらには「寝汗がああん一杯出るからタールでも摂らないとやってられないわの略であるネアンデルタール人の滅亡が(以下略)」などという、一読愕然、再読爆笑といったたぐいのものまで・・・読者を最初の一行から小説に引きこむことをよく考え、実践してこられた書き手だと思う。
今作も、「振ったら飛び出した」のはまさにこの文体じゃないか、と思うほど鮮やかな切り出しである。
しかし、と言うか、さらに、と言うか、唸ってしまうのは、全体の語り口の巧みさ、それから、炭酸水が噴き出たというただそれだけのことをめぐる、周囲と主人公の反応の豊かな描出にあると思う。特に中盤あたりの述懐、「新鮮な、茫然自失の感覚を、あのままもう少し味わっていたかった」。この意表をつく、しかし切実なフレーズには、かなり長いこと立ち止まらされてしまった。これ、素晴らしい一文だと思う。ついでに言うと、このセンテンスに感心する自分自身に対して、なんだ、「新鮮な茫然自失の感覚」に憧れるほど、おれも年くってしま
ったか? と苦笑したい気持ちもある。なんだかそういうことをいろいろと考えさせる文であり、小説であると思う。
一方では、随所にもたつきを感じてしまうところもあって、例えば「ただ突っ立ったまま」から「三十秒は経っていないはずだった。」のあたりまでの文章は、ただ語りを遅延させているだけのように思ったし、終盤、「振ったら中身が飛び出した。(中略)振ったら飛び出す、と。」の部分も――異論はあるでしょうが――少なくとも僕には、意味の薄い、機械的な反復に感じられた。でも今回、何度か読み返してみて、そういったことは小さな傷だとも思うようになった。佳作だし、学ぶところの多い短編でした。(でんでん)(この票の参照用リンク)
2004年10月9日 12時54分4秒
- 推薦作品
- 氷を渡る(でんでん)
- 感想
- ぼくの気持ちときみの行動の細かい描写がよかった。(この票の参照用リンク)
2004年10月9日 0時55分17秒
- 推薦作品
- 泡(戦場ガ原蛇足ノ助)
- 感想
- 残った中では一番好きだった。(この票の参照用リンク)
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