第26期決勝時の、#9氷を渡る(でんでん)への投票です(6票)。
気に入ったのは、「泡」の『ホームに列を成していた人々が
座席を分け合った』という描写と、ユーモラスな「ありくいさん」
の登場人物(生物?)
最後まで迷ったのは、「氷を渡る」と「風船葛」の2作品。
水増しの無い贅沢な描写と、物語に至るまでの背景の大きさ
では「風船葛」かとも思うんですが、やっぱり予選通りに
「氷を渡る」で。
違和感なく読みきれ、余韻の残る良い作品。
参照用リンク: #date20041020-201701
決勝作品のみ読みました。『氷を渡る』、作品全体の緊張感と、終わる場所がとても印象に残ったので、一票入れさせてください。
夢みた舞台に立ちながら、今いる場所に安住したい「きみ」の入り組んで拮抗した心情と、氷を渡るという行為との緊張感がマッチしていると思います。池に落ちてゆくところまで書かずに作品を切り終えたのも、不安定で繊細な印象を与えて、品があるように感じました。
迷ったのは『パフェ・バニラ』ですが、最後の一文が「アイスを食べるはるちーを眺めながら食べるチョコワッフルの方が」、などあった方が、陳腐にはなるけれど、わかりやすくてほっとするのかな、と思ったりしました。作者の方はあえてそのような事を言わせたくなかったのかもしれませんが…
参照用リンク: #date20041016-233643
決勝作品のみ読んで投票。「氷を渡る」が出色の出来。「ありくいさん」は白昼夢ファンタジーとでもいった趣きで面白いが、もうひとつ何か足りない。動物キャラものとしての域を脱していない。「パフェ・バニラ」はこの中では一番読みやすいが、それゆえフックが働いていないようであっさり読み流し去ってしまえる。「泡」は面白くないことはないがやや回りくどい。炭酸水を噴き出させたという情景が中盤で初めて明らかになるのだが、そこまで引っ張る意味が見出せない。もたついている。「風船葛」は無用に入り組んだ描写が多く、主人公の行動や感情が伝わって来ない。全てが修飾であり、物語としての骨格がない。そういう中で「氷を渡る」は別格に素晴らしい。ただ、「僕」が「みんな」と同じ校舎の中にいるのではなく「君」の眼の前に立っている、という設定が唐突すぎるので、序盤の描写の中で処理しておくべきか。また、「最初から連中は、ただ氷が割れ、きみが暗い水の中に落ちこむことだけを待っていたのだ。」は「待っているのだ。」の方がいい。この時点ではまだ落ちていないから過去形になるのはおかしい。
参照用リンク: #date20041015-201643
予選で推した作品でもあるので、再び一票。
個人的に「氷の上でわざと足をすべらせる」という一文を予選票投票の際に見落としてました。
「氷を渡る」という行為は、氷上をあたかも道路上か何かのように平然と渡ってしまうことのではなく、あくまで“渡る途上で氷が割れる”ということが大前提になっているのだと感じました。“おやくそく”というやつで。逆に「きみ」が当たり前のように渡り切ってしまう場面を想像する方が恐ろしい気にもなります。
この直後に「僕」も、氷が割れてずぶ濡れになる「きみ」を見て、或る種倒錯的快楽を感じるのかも知れませんね。それは「校舎の中央池にはった氷」を巡る大きな物語に抱かれている無意識な充足感に他ならないのだろうが。
参照用リンク: #date20041014-224328
消去法で申し訳ないが残ったのはこれ(その場面が印象に残るという点において)。「ありくいさん」は表面的に川上弘美氏の作品をなぞらえているという印象になってしまった。「泡」も悪くないが、それほどには推すほどには残らなかった。まあ単にまれにありそうなことという感じ。「パフェ・バニラ」読みやすいけど、ただそれだけかなと。「風船葛」文章悪くないけどどっか冗長すぎる。以上自作を棚に上げてあれこれ印象論に終始して申し訳ないけど率直な感想です。
参照用リンク: #date20041013-122005