第12期決勝時の投票状況です。23票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
15 | ベーカリー・ストロベリー | 川島ケイ | 10 |
21 | ふたりのり禁止 | 西直 | 4 |
17 | アスファルト | 逢澤透明 | 3 |
25 | (削除されました) | - | 3 |
30 | シンク | 曠野反次郎 | 3 |
たいへん平易な言葉で書き綴られているのに、つまらないということは決してなく、呼吸が、物語の呼吸がつたわってくるかのような生き生きとした文章で、楽しく微笑ましく読ませていただきました。設定はありがちなものであろうと思いますし、いささかわざとらしい語りであるかも知れませんが、憎めない愛らしさを感じます。「真希ちゃん」が、どうして「そのままパンをぜんぶ食べた」のかについて、はっきりとはわからないようになっている構図がよかったと思います。ただ、欲をいうと、リアリティにやや欠けるような気はいたしました。というのは、登場人物たちの年令といったものが具体的につかみにくく、パンをつくれる、放課後に残って勉強をする、にしては、感情や行動がやや幼いような、そんなふうにも思われて少しちぐはぐな感じを受けましたので。あと、タイトルの意味するところが、よくわかりませんでした。
『アスファルト』に、ついては、段落ごとにバラバラ、流れがスムーズではないような読みにくさを感じました。詩の部分などが、かなり唐突にでてきて、それで起伏があるように感じられるのも確かなのですが、しかし一方それ以外、説明とか描写の部分が平たんで退屈に読めてしまいました。単に無造作に切り貼りをされたような印象で、そこに趣を感じることができませんでした。
『ふたりのり禁止』は、文章が単調に思えました。前半、レースの描写で飽きてしまって読むのがつらくなりました。また、途中での視点の転換も、とくに意味を見出せませんでした。書かれているものすべてに意味がないといけないと思っているわけではないのですが、こういった手法はやはりどうしても目立つので、説得力ある効果を求めたくなってしまい、それが私にはわからなかったということなのかも知れません。
『高き場所より飛翔して』は、語り手の心情がこちらに伝わってきませんでした。高層マンションの新居、飛ぶ夢、バルコニーの柵のつけられ方、昔住んでいた一戸建ての家、父の思い出、といった具体的な説明についてゆくのにやや忙しく、現在の語り手の心情が見えてきませんでした。こういった、何かが起きそうで起きなかった、といった感じの話では、語られている言葉の裏側にあるものが感じられると、それが印象深い作品となるように思うのですが、それを読み取ることがうまく私にはできませんでした。「家族のことを考えると」といった一言で済んでしまったのが、物足りなかったのかも知れません。また、タイトルが、いささかキザのように感じました。
『シンク』は、なんだかよくわからないといった感想が残りました。最初の蠅についてのやや長くくどい叙述が退屈に思われて、そのあとつらくなりました(この票の参照用リンク)
初読でのインパクトは「ベーカリー・ストロベリー」が圧倒的でした。他の方の感想を見つつ改めて読み直してみると、「ふたりのり禁止」の方が自分の好みに近いような気もしたのですが、「足元でカシャンと小さな音がした」というのが、キーボックスが落ちたからだということに今ひとぴんとこなかった(それで初読時は見逃していた)というのがあったため、やはり「ベーカリー・ストロベリー」を推します。とは言えどちらも好きな作品です。(この票の参照用リンク)
ベーカリーストロベリー-予選票のなかで同じことを言っている人がいたけど、この作者には別の作風のものを期待したい。ただ、それとは別に今回の作品はとてもよかった。
シンク-今回の決勝で推薦作と票を割りそうなのはこれだけど、前後の脈絡を曖昧にする手法があまり好きではない。すぱっと情景を切り取ったような作品は好きなんだけど。(この票の参照用リンク)
よく出来ていてとても分かりやすい作品だけど、嫌みじゃないのがいい。冒頭の「たとえ世界からお米がなくなっても」→「パンは食べません」が好きです。
ただ、今回はどれが優勝してもおかしくないと思う。(赤珠)(この票の参照用リンク)
迷いなくこれだろうと、予選前から思っていたし、おそらく優勝するでしょう。
僕の一票がなくても、優勝するだろうから、他にあげてもいいかな、という気持ちがあったので、他の作品も検討しましたが、やはりこれ以外ないと思いました。
多くの人が、このラストをほめているし、僕もここでキューっとなった一人なのですが、この小説は冒頭もいいです。
「たとえ世界からお米がなくなっても」「パンは食べません」
中野君、真希ちゃん、私。セリフ、行動から各個人の性格が浮かんでくる。少々類型的なのは、千字だから仕方ないし、逆に類型的ななかに個性があるのは、人物造形のうまさなのだろうな、と思う。(透明)
(この票の参照用リンク)
「アスファルト」アスファルトへの変身願望?の発想は興味深いが
難病の男女、売れない小説家、という設定は短絡的だ。
また、軽々しく「難病」を扱っているようにしか思えず、やや抵抗を覚える。
「ふたりのり」は内容より読み味がよくなかった。体言止めというか、名詞で終わらせる方法を多用していたが、目障りだった。作者は意図的にやったのだろうが、好ましくない。
「高き場所」は飛び降りへの衝動や切迫感あるいは恍惚への期待、のようなものがイマイチ伝わってこなかった。
「シンク」は、雰囲気はあるけどそれ以上は感じられない。一人称であるのに、主人公の感触や感覚、心のざわめきのようなものを何も感じられなかった。
「ストロベリー」は作者の書きたいものが一通り書けていることがわかって「おめでとう」と言いたい気持ち。意外と深読みしたくなる作品だった。(この票の参照用リンク)
クリエイティヴなことをする時、常に新しいことを目指さなくてはならない、そういう気がする。クリエイティヴな世界で活躍している人たちがインタヴュー等でこのように語っているのを見たり聞いたりしたことが幾度となくある。私はアマチュアなので偉そうだが、それは私の意見、心構えでもあり賛成である。
川島さんのこれまでの作風は一度ここで完成していると私の目には映る。つまり予選票の時も書いたが、次回からはまったく違った匂いの作風に挑戦してほしい。
そういった期待も込め、川島作品chapter1に一票。(この票の参照用リンク)
川島さんの世界がフルに表現されていてとてもよかったです。
読後感も何ともいえないほろ苦い感じ。グッド。
逆に言うと、彼の「定番中の定番」という感じがして
ちょっと残念だなぁという感じがしなくもなかったのですが、
それに勝る作品が他にありませんでした。
川島氏に敬礼。(この票の参照用リンク)
全く迷いなし。
この作品はアイデアも登場人物もその描き方も良かった。
作者の気持ちが細部まで行き渡っていると感じた。(この票の参照用リンク)
「ふたりのり禁止」とどちらに投票しようかと思ったが、「ふたりのり禁止」は後半から速度が消える(キーボックスが落ちて、というのが小さい)ので、「ベーカリー・ストロベリー」の机のひんやり感に軍配。あと、「そんなことも知らないんだ」という一言に共感した。
あとの三作品は、ドラマがあるというよりか病気がある。(この票の参照用リンク)
「ふたりのり禁止」か「シンク」か。
「シンク」は無駄に長い(この作品は1000字近くにする必要はない)ので、「ふたりのり禁止」に投票する。前半のレース描写が良い。後半の行動も可愛らしい。今期で一番3次元な作品だった。(この票の参照用リンク)
「ベーカリー・ストロベリー」と「ふたりのり禁止」、どっちもいいと思いましたが、うーん、うまく説明できませんけど、なんとなく、好みの問題で、「ふたりのり禁止」の方に。(この票の参照用リンク)
ほとんど横一線で非常に迷いましたが、前半の爽快な文章が魅力のこれに一票を。
後半の「俺」はやっぱりいらんと思うのですが、そんなこと言ってるとどうにも決まらんので、そこには目をつむることにしました。(この票の参照用リンク)
欽ちゃんの仮装大賞で賞を取った「ピンポン」という作品をなぜか思い出した。大袈裟に大まじめに、はたからみるとくだらないことを思いっきりの力をぶつけて闘うイメージが似通っているように感じたのかもしれない。なんだか好きな世界だ。(この票の参照用リンク)
今期は、予選投票の際に自分が何らかの形で言及した作品がすべて残った。こんな事は実に珍しい。
〆切も迫っていることなので、推薦作については割愛させて頂くことにして、『シンク』について一言しておくと、読ませる芸を心得た作品だが、『地下鉄』に比べてやや散漫で中心の定まらない所があるかと思えた。よい作品だが、同じ作者の最高レベルにはないのではないかという判定であった。
それに対して『アスファルト』は、参加作の中で優れているばかりでなく、これまでの透明氏の仕事をいささか見て来た中でも、最も力のこもった、強い印象を受けたので、これを取り上げるべきかと思った次第である。(海坂)(この票の参照用リンク)
他の投稿作を含めて読み直してみましたが、改めて一番きれいなまとめ方をしていると思いました。歌を歌うような言葉のリズムが素敵。ジョージ・C・ページ博物館を思い出しました。(この票の参照用リンク)
文章の完成度的には少し劣る所もあるけど、
独自の部分が他に比べてある気がしたので一票。
もう少し詩の部分が美しければとても良くなりそう。
今後にも期待します。(この票の参照用リンク)
この中で選ぶとすればこれかな。(この票の参照用リンク)
今回は難しい。飛びぬけて印象的な作品がない。よって今回は構成・構造的な所を評価する期だ、と割り切る。「高き」を推す。本命はベーカリー。ただしこの作品は健やかさがゆえにやや天邪鬼な気持ちを起こさせる。玄人好みしそうなのは「ふたりのり」だが、オチにもうひと工夫欲しかった。「アスファルト」は異質さの上で「シンク」と票を食い合うと見た。加えて、比べてどっちとも言いがたい。「アスファルト」が主観的で「シンク」は客観的。目新しさはないものの、堅実という点、また破綻がないという点で、「高き」。個人的にはここらでこういう「なんてことない」作品を評価しておきたい。なんてことない情景をなんてことなく描き、それでいて発展的・イマジナティブなのは「高き」だと感じた。今回ばかりは書き手立場で評価。(この票の参照用リンク)
決勝に残った作品の中ではこれです。久遠さんの書く文章はどこもさぼってないようなそんな印象で、それが私としては逆にやや疲れてしまう部分もあるんですが、「楽しみは取っておくか」にリアルさを感じたので一票。
あと入れるとしたら「ベーカリー・ストロベリー」ですが、ストレートな恋愛物やっぱりどうも苦手なもので。(この票の参照用リンク)
やはりこの作品が一番絵が浮かぶ。すごい才能だ。次回も期待してます。(この票の参照用リンク)
こん中ではこれだろう。【ベンガルオオバエ】よい。おらんわそんなん。こういうズラし方が一貫してよいバランスで継起するので読んでいてここちよい。し。面白い。
「ストロベリ」は作りすぎ。おとぎの国で何があってもどうでもいいという感じになってしまう。ふたりのり禁止は【「そんなもんだね、人生って」と俺。】という「俺」の受け答えのあいまいさがなんかこの作品全体を象徴しているよう。このちょっとなんか中途半端な受け答えしか出来ないレベルにしか作者が小説を考えていなかった気がする。その部分を読者に考えろというのはちょっとムリか。タイトルに関してはまあ「人生 二人のり 禁止」ってニュアンスかと読んだ。馴れ合い的な人間関係の拒否というか
アスファルトはちょっとさすがにここまで極私的だとわからんぞ。意味がそもそもわかりませんでした。えーっと。書きたければ書きたいことをかいたらいいんであって、なんか書く決意みたいなのを読まされた感じ。いや悪口ではないが。ちょっとこう伊達じゃあなかった。
「高き場所」も同じく。わからん。飛び降りたければ飛び降りればいいのであって飛び降りない理由を読まされても、知らん、という感じ。「アスファ」にしろ「高き」にしろまあいろいろつらいこともおありでしょうがそういうのは腹にしまって、一歩を踏み出しましょうよ、と。
悪口ではないんだがさっき「健在者(ワラビー)」「浦賀沖にて(みかりん)」(ともに第7期)のような雄々しいというか骨っぽいの読んだばかりなんで却ってつよくそう感じた。
で、「シンク」だがまあバランスがいいよ。起きていることも解るし雰囲気(そのなんちゅうか顔の表情ってかなんかまあ中村雅俊「俺たちの旅」風でもいいんだが)も解るし、つまり分かるようにかけてるし、一方なんか固有の不自然感もでてるし。バランスよし。1票。(この票の参照用リンク)
べりー面白かったかな。まあ、でもHOSPITALの散文には遠く足元にも及ばないってかんじかな。まあ、しょうがないよね。これも運命だし。まあ、みんなには諦めずに頑張ってもらいたいなって、ぽっくん思ってますたい。(この票の参照用リンク)