第230期決勝時の投票状況です。8票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
7 | 愛らしい妹 | たなかなつみ | 3 |
3 | ここは海だった | 三浦 | 2 |
9 | 土星の周りには寿司が廻っている | 朝飯抜太郎 | 2 |
6 | ウサギ人間 | euReka | 1 |
長くなるので、内容は掲示板に。(三浦)(この票の参照用リンク)
#3
再読してわかったのは、最終段落の映える絵と謎の爽やかさが一段落目の対になっていることくらい。四百字余りの本作を読んで「小説だ」と思わせる手腕、落語の見立てにも似た技量を感じた。
#6
魔法が使える世界でもコロナあるんだ、と思った。「プチ結界」のパワーワード然り、おかしみのバランスが絶妙。ただ、物語として面白いかと言われるとよくわからない。ウサギ人間の卑屈な感じ(そりゃ卑屈にもなるわという説得力はある)や、世界を斜に構えた視点で捉えるその捉え方が肌に合わないのかも。
#9
タイトルですでに笑うし、テンポがよくて読んでて楽しい。なぜか各シーンが、ポップでサイケな色使いの動画で脳内再生される。読者さんの感想を読んでから卑猥な視点でしか読めなくなってしまった。最終段落が急すぎて浮いてしまってるのが残念。
#7
再読して、冒頭の兄妹の対比と、語り手の性格の悪さを読み落としていたことに気づいた。持てる者である妹への羨望や妬みを、その姿を目の当たりにすることで歪んだまま反転させてしまう構成がうまい。
予選時には妹の台詞に閉塞感を読んだが、再読時は異様なものと化した自分を兄に重ねている部分があるのでは、と邪推してしまった。蛹から出た後の妹について、「虫を食べる」という形で端的に異質さを表現している点も凄い。
羽が生えてなくても羽化なのかと引っかかったが、羽化という言葉のイメージと実際の妹の姿の対比があり、語り手が兄であることからあえてそうしているのかもしれない。
淡々とした筆致が読み手を没入させ、人物の内面について明示しないことで断絶を表現し、それでもなお想像させられる。#3と悩んだが、より強く殴られた本作に票を投じる。(この票の参照用リンク)
#3
魅力的な文章だと思う。近視と乱視のせいで遠くからぼんやりとしか見えない二人の男子高校生のやり取りを想像で補っているような書き方に思えた。もしくは、無音の映像にアテレコをしているような。
#6
カレンダーがない、という感覚と不安は、なんとなくわかる。コロナのせいでのべっとした毎日、一週間、一月、一年は数珠つながりにつながって、暦をも飲み込んで均していくいくような、そういう不安がある。
コロナワクチンの安全性や効果については詳しいことは知らないが、「プチ結界」に何となく通じるものがあるとおもう。
#7
よくできた話だなあと思った。一見自分とは似ても似つかない外見の兄弟、姉妹が、その心の奥底では同じ醜さでつながっている。普通の話なら、その醜さは大体は心や性格なんかに寄せて書かれそうなんだけど(私も妹も同じだけの心の闇を抱えていて、それは私たちの血の呪いなんです、、、みたいな、うまく描けませんが)それを外見として表現したのがうまいと思った。だからこその美しさというのはあると思う。共依存という言葉で片付けたくなる気持ちも少しあるが、この作品はもうちょっと先をいっていると思う。
#9
初デート、人のあまりいない回転寿司屋、スマホ見せ合う感じ、それだけでなんか青春って感じ。寿司も土星もNASAもこの無敵の青春の前では単なる小道具なのだ。(この票の参照用リンク)
読んだときに広がる景色がいちばん大きかったと思います。圧倒的でした。(この票の参照用リンク)
やおい、だと、、、憶えている。 ほかの小説は記憶に消えて、、
===
やまなしおちなしいみなし。 でも、10000年、たかだか、
いちまんねん、のニッポン。 は、海だった。 なら、
意味あるか。 と、おもったら面白かった。(この票の参照用リンク)
予選でも書いたが、この作品には勢いがあって、そのエネルギーだけで読ませているような部分がある。
いくら上手い文章や、面白い内容でも、作者のエネルギーを感じないと、何となくつまらなくなってしまう。
この『短編』というサイトでも、以前は、こういう作品が結構多かったなと、少し懐かしい気持ちにもなった。(この票の参照用リンク)
#9 を推薦。惹かれ合う男女を描写しつつ万有引力のイメージと重ねたり、日常性と非日常性を対比させたりしてギミックがあると思うが、全体的に明るく軽い印象なのがテーマとあってると思う。ポップな躍動感が所々にあった。
#3 予選の感想で「最終的に澤が魅力的に映る点が、この作品を小説たらしめている」と投稿していた方がいたが、私もこの読み方を支持する。読みにくさや解読できない部分がある物語をどう評価していいものかわからないので選択できなかったが、魅力は一番感じた。
#6 数万円の結界、100円のプチ結界、魔法使い、ウサギ人間、ウサギ狩り。そんなものを説明するためにウサギ人間の台詞が使われてるので作者の発想メモのように感じた。プチ結界やっぱり使って欲しいなと思う。ウサギ人間が書きたいならプチ結界いらないと思う。
#7 卑屈な人間と兄妹の関係の再構築と妹の愛らしさがよく書かれていると感じた。シンプルな文体のため内容の暗さがダイレクトに届くのが味であると思う。(この票の参照用リンク)
弱い立場の者たちが、できる範囲で全力で生きていく様に勇気づけられました。まぁ、最後の二文、「ウサギ人間は臆病で、未来に悲観する種族だという。 だから彼らの部屋には、カレンダーがない。」はカレンダーを買いに来た”私”を帰さないための方便でしょうね。
『土星の周りには寿司が廻っている』はそのシュールさが気に入っていたのですが、予選での他の方の評であったように、私が分からない性的暗喩が含意されているのであるのなら、ちょっと引いてしまった気分になりました。
『愛らしい妹』は、完璧に見える妹に差を感じて家を離れた兄に対し、完璧さを演じるあまり疲れ果ててしまった妹が、その弱さを兄にだけは受け止めてもらいたいのだな、と予選とは違った感想を抱きました。ただ、妹の世話で兄が疲れ果てたときに何が起こるか、想像したら恐ろしい気がしました。(この票の参照用リンク)