第196期決勝時の投票状況です。3票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
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1 | 犯罪者の氣持 | 絲 | 1 |
4 | 宝島 | 霧野楢人 | 1 |
8 | 箱庭の塔 | たなかなつみ | 1 |
問題にされていることやその解はうまく理解できないのだが、不気味さが不気味なりにしっくりきて印象的だった。ネット上の書き込みという設定だろうが、その現代的な舞台に対して旧字旧仮名が良いコントラストとなっているように思う。舞台が違えばそんな風には感じなかっただろう。それから内容の不透明さ。ネットの書き込みは、リアルにおいても相手の顔なんて見れないし、真偽のほども怪しい不透明なものだ(それでいて書き込み時間なんかは不必要なほど正確に記録される)。故にネット上の話、という枠組みは初めから虚構に近いものだし、虚構であっても限りなくリアルに感じられる。メタ的な感想になるが、その不気味さを改めて認識した。(この票の参照用リンク)
読み返せば読み返すほどに、物語に取り込まれていく感じがして、個人的にはとても綺麗な作品だと思いました。
まずもって構成が綺麗なのは言うまでもないのですが、そのところどころに何気なしに出てくる言葉が後にあらためて登場して、物語の枠組みが確定していく綺麗さ。
突拍子もない話ではなくて、どこにでもありそうなエピソードが重ねられてきたからこそ余計に、最後のエピソードが人為的なものとオカルトとの間の線上で放り出され、ここまでの語りのどこまでが事実でどこまでが単なる伝承なのか小さな揺らぎのようなものが発生し、読了後、深く考えすぎなのかと、自身が読んで解釈したつもりのものもあやふやになっていく感覚に囚われたのが気持ちよく感じました。。
何より、言葉の選び方が隅々まで丁寧だという印象が強く、惹きつけられました。(この票の参照用リンク)
「与えられるもの」を適切な形に積んでいく作業は、ゲームのテトリスをイメージさせる。次々に与えられるものをただ処理していけばいいだけなら、それはただのゲームでしかないし、きちんと処理すること以外に何も考えなくていいということにも、どこか恐ろしさを感じてしまう。しかし、われわれが「仕事」と称して行っているものは、往々にしてそうした「ゲーム」的な部分も多いし、それを行った結果、どのような問題が生じるのかということについて深く考えることはあまりないように思える。誰でも、目の前にある仕事をこなすのに精いっぱいで、それ以上先のことなど考えられないのだ。しかしその結果としてもたらされるものは、大げさに言えば、深刻な環境破壊や原発事故、あるいは大量に人を殺す戦争だったりする。
この作品は、そうした、深く考えないで行われる「ゲーム」的な営みの危うさを訴えているようにも思える。(※この感想文には、ゲームそのものを否定する意図はない)(euReka)(この票の参照用リンク)