全投票一覧(日時順)
第194期予選時の投票状況です。4人より12票を頂きました。
2018年11月27日 23時17分34秒
- 推薦作品
- 知らない世界(テックスロー)
- 感想
- 老年における人生観が非常に巧みに書かれている。そのライフステージにおける心情はまだ想像するしかないのだが、こんな風にひたすら前向きでありたいと思ってしまう。話題がポンポンと飛ぶ感じも作品の雰囲気には合致していて悪くない。「綾をなせ」というのは最後の悪あがきのようで、逞しい。(この票の参照用リンク)
- 推薦作品
- 井上(qbc)
- 感想
- 「昔なら征服だ」というセリフがかなり強く印象に残った。異人種に対する不寛容さを端的に示したものと察するが、それだけ発言者は井上さんに不快感を覚えたのではないだろうか、とも思う。読者としても、井上夫妻の価値観は異質なものに映ったが、こんな風にちょっと距離を置くと、作者が主張する「物語」の意味が見えてきた気がする。「物語」の例示としてとても良くできている。前段は井上さんとは関係ないが、最後の「征服」(≒新天地の支配)に繋がってくるようで面白い。無論これも恣意的な解釈だ。(この票の参照用リンク)
- 推薦作品
- Haagen Dazs (宇加谷 研一郎)
- 感想
- 当たり前のように英語で書いてきたことが既に面白かった。内容は日本語で読めば難しいものではなく、言ってしまえばチープなのだが、それを仰々しく英語で書いている点には、ハーゲンダッツを好むなんちゃってブルジョワに通じるものを感じる。英語で書くために簡単な内容にしたのかもしれないが、結果は同じである。(この票の参照用リンク)
2018年11月26日 20時5分3秒
- 推薦作品
- 遷移(霧野楢人)
- 感想
- 整然とした都市も、人間がいなくなればいずれ草木が生えて森になる、といった空想をする話か。植物の名前と思われるカタカナ語が立て続けに出てくるのが印象的で、都市のアスファルトやコンクリートの隙間からそれらの植物が逞しく生えてくることを想像すると、何となく愉快な気分になってくる。しかし、それは同時に人間という存在が否定されていることのようにも思えてきて、寂しい気持ちになる。
この作品には自然回帰への強い憧れのようなものが表現されていて、共感できる部分も確かにあるのだけど、思いの伝え方が一方的な感じもしてしまう。ただ都市が森になってしまうだけでは寂しい気がするし、物語がそこで全て終わってしまうような気がしてしまう。
千文字小説の場合は、文字数が短いので、この作品のように一瞬の思いを切り取るというのもアリだと思うが、個人的には、何か満たされないもの(寂しさ)が残ってしまうなというのが素直な感想(むしろそれが狙いかもしれないが)。
それから、一段落目と二段落目は、少しもたついているというか、無駄な感じがしてしまう。(euReka)(この票の参照用リンク)
- 推薦作品
- 井上(qbc)
- 感想
- この作品で一番言いたかったのは「他人の物語の理解はむずかしい。」という部分か。普通だったら、他人のことをあれこれ詮索するのは良くない、といった言い方になるのだと思うが、それをあえて「他人の物語の理解」としているのが独特。そして今回も、前回の作品と同じように「物語」というものが一つのテーマになっているみたいだが、今回は前回ほど冷めた感じはしなかった。しかし、どこか物事を俯瞰しているようなところがあって、地に足を付けることを避けているような気がした(前回が天使の話だっただけに)。
しかし、物事(世界)との距離をとても慎重に取っていて、その慎重な距離感の中で物語を書いているようなところがあり、そうした部分は面白いなと思った。
あと、主人公と友人の会話文は誰が話しているのか分からないようになっているが、あえてそうすることで個性を消している。それもまた、物事との距離を取るための工夫なのかもしれない。(euReka)(この票の参照用リンク)
- 推薦作品
- 怪獣のいる街(志菩龍彦)
- 感想
- ところどころ難しい漢字を使っている部分はひっかかるが、全体的に上手く話がまとまっていると思う。
内容は、謎の巨大生物によって街が破壊されたことに対して、主人公が救いを感じているといったもの。辛い現状をリセットしたいという気持ちを何かの物語にするこいうことは、よくあると言えばあるかなと思うし、この作品もその範疇のものだと思う。しかし最後の方に出てくる「消極的な自殺者達」という部分に作者のオリジナリティがあるように感じられる。なので、一連の説明よりも、そこをもう少し広げて書くべきだったのではないかと思う。(euReka)(この票の参照用リンク)
編集:短編 / 管理者連絡先: webmaster@tanpen.jp