第17期決勝時の投票状況です。11票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
12 | 十二月、九龍尖沙咀にて | (あ) | 6 |
7 | (削除されました) | - | 2 |
11 | マンホールの家族 | 川島ケイ | 1 |
17 | DRIVE | るるるぶ☆どっぐちゃん | 1 |
- | なし | 1 |
今期おすすめできるのはこの作品しかないと思っていました(この票の参照用リンク)
この作品の良さは、なかなか微妙なもので、どこがいいかを語ろうとして、いろいろ取り上げてみても、どことなく的外れな感覚を逃れられないような気がする。部分的に、とてもいいところがある、と同時に、ほんやりとしていてよくわからない部分もある。セリフもいいセリフもあるし、そうでないものもある。
ひとつひとつ部分的に取り上げてみると、強く印象に残る部分はない。では、全体ではどうか、というと、やはりなにか特別印象的というわけではない。
けれども、やはり、これは巧いだろう、と思う。あっさり書いているようにみえて、そうそう簡単に書けるものではないだろうと思う。(この票の参照用リンク)
DRIVEも良かったけど最後の方の雰囲気が好きではなかった。
「十二月、九龍尖沙咀にて」全体的な雰囲気と香港の描写がいいと思った。(この票の参照用リンク)
字義的な面白さはない。ワハハと笑ったり、物珍しがるような要素は何もない。しかしやはり私の好きな「シーン」を描いたものはこれしかなかった。心に優しみのようなものを残し、かつ「未来を語るのには幼すぎるのだろうか」というような、ある意味残酷な諦めを登場人物に強いた――それが奥行きになった。少年少女の淡い恋なのだろう。誰しもに覚えのあるインプリンティングされた思いにストーリーを漉しつつ、香港というカップに注いだ。衒いのなさが逆に光った。(この票の参照用リンク)
「もどかしさ」のようなものを感じました。おそらく、そこにピントを合わせたのではないかと。(この票の参照用リンク)
予選では「二酸化マンガン」「夏の日」「DRIVE」入れました。
そうすると決勝では「DRIVE」で決まりではないかと思いきや。
読み直してみると。確かに「DRIVE」は面白い。面白いがでは
読んでどうすればいいんだという感触が残った。これ、映像の台本
っぽいんだな。実は。それ自体別に悪いことではないのだが小説的
というか小説ならではの魅力という点ではこれか。と。
タイトル読めないんだがね。何とはなしにこう拡張性というか読後に
こうぼんやりと取り巻くようなフレア部分というかなんというかそういう部分が大きいと思った。
いや予選では入れなかったがこの辺(「時には昔の話を」「ケンカ道場」「夏の日」)の作品たちは全て結構いいのではないかと思っている。
勝手ながら「十二月」はこれらの作品の代表的な感じでも読めてしまう。じゃあこの男女モノのどれが来てもいいのかというと、うん、そういう気もする。
この辺のジャンルがきちんと書けて各期に投稿されるようだと読む側としても楽しいのではないか。
で、別に「DRIVE」や「マンホール」に魅力がないかというとそうでもなくレトリック的というか技術的な部分ではむしろ「十二月」のような作品よりも高度なものが要求されるわけであり、結構「プロット対レトリック」の対立の構図をなしているように思う。ベースはプロットにあり(ってか内容ていうか1,000字と短いので実質は普通の日常の切り取りどころ)になりそれをズバッと大幅に超越できれば時々実験的な作品が優勝しちゃうというかそういう感じかなあ。(この票の参照用リンク)
予選では『木』と『DRIVE』を推したのだったが、四つ並べられてみるとどれもなかなか好いように思えてくる。何度めかに読み返したが、それぞれに吸着力がある。
『DRIVE』は何の話だかよく判らないが『マンホールの家族』には無理がない、という感想があって、面白いとおもった。私の感じ方とは全く逆だったからだ。
散文は歩行、詩は舞踏、という有名な喩えがある。歩行には特定の地点へ到達するという目的があるのに対して、舞踏はその途中の動きの華麗さを表現する。目的地などは無くてもかまわない、ということだろう。
『DRIVE』は明らかに舞踏であり、それが明確なので、安心して読めた。『マンホールの家族』も、マンホールの蓋を頭に載せている一家という題材は超現実であり、舞踏の要素を含むが、私にはどこか目的地があるようにも感じられ、それが見えてこない苛立ちがあった。
『十二月、九龍尖沙咀にて』もよかったが、結局、初読で最もインパクトの強かった『木』にした。何度読んでも会話の網の目にずるずると引き込まれてしまう。
今期は誰が優勝しても複数回ということになる。年に二回機械的に新作家を作り出す某賞よりよほどマットウだとも言えるが、顔ぶれが固定して来るのは寂しいような気もする。今期は一票足らず予選を抜けられなかった『蜂』の江口さんと『かえりみち』のやすもとさん辺りが、いわば新人賞ということになるかも知れない。今後の作品に期待しています。(この票の参照用リンク)
木:単純におもしろかった。
マンホールの家族:やや面白かった。
十二月、九龍尖沙咀にて:あっさりしていた。
DRIVE:「イメージ」に留まった。 (この票の参照用リンク)
「DRIVE」は結局何の話だかよくわからなかったので、祟りが無いようにあまり触らないでおく。
「十二月、九龍尖沙咀にて」はタイトルが読めないという点からして注目すべき作品である。作者が現在香港に在住しているらしい、という予備知識があるせいで、本来作品に込められたはずの香港と、私が読み取る香港とに、どうしても温度差があるように感じられてしまう点が残念だ。舞台が香港であることは、読む側にとっては結構気になることなのだ。
「木」は作者本人が挙げている他の作品を併せて読んだり、作者自身の他の作品を読んだりするとマクロな視点からの狙いが見えてくるのかもしれないが、投票締め切りも近いし億劫なのでこの作品だけ読んでおくと、会話を並べ立てた手法以外には、それほど目立った点は無いような気がした。こう書かれるとどうも音声の方がイメージされるようなところがあって、背後にある物語までは意識が回りづらい……のかな。
「マンホールの家族」は無理が無い。マンホールの蓋が頭に乗っているのは尋常ではないが、他はそれほど極端な描写は無い。マンホールの蓋は地域によってデザインを自由にできるもので、好きな人は写真に撮ることもあるようなので、それを家紋に見立てるようなアイデアは、大した意味は無いが秀逸といえる。(この票の参照用リンク)
イメージの美しさ。それに尽きます。訴えたいこと、なんてのもとくにないのでしょう。(この票の参照用リンク)
投票したい作品がないときは消去法を用いている。今回は全部消去されてしまった。
木:面白かったが作者に対する期待が高すぎた
マンホールの家族:作者だけが面白がっている印象
十二月、九龍尖沙咀にて:薄い
DRIVE:ラストが安易(この票の参照用リンク)