全投票一覧(日時順)

第148期決勝時の投票状況です。10票を頂きました。

#題名作者得票数
12ひじきわがまま娘4
14盛者必衰kyoko3
21愛していると描かせてほしいまめひも3

2015年2月8日 23時53分33秒

推薦作品
ひじき(わがまま娘)
感想
予選に引き続き、「ひじき」に投票。

・「ひじき」
 決勝の投票にあたり再度していて、「レンジでポテトチップスとかできる」という言葉が異様に気になった。レンジでポテトチップスが作れるということも虚構であったなら、完全に作者にしてやられたなぁ、読者冥利に尽きるなぁと思った。調べた結果、クックパッドにレシピが載っていたので、レンジでポテチが作れるのは事実なようだ。この作品は完成度が高いので、再読とはいえ「油断」ができない作品だと思わされた。
 蛇足だが、レンジで作るポテトは、オイルフリーだそうだ。オイルフリーゆえに「油・断」ができて、ダイエットに効果的なのかも知れない。

・「愛していると描かせてほしい」
 相田みつをの「しあわせはいつも自分のこころがきめる」という詩を思い出した。 父親の感情を描写して、子供の気持ちを完全に置き去りにする辺りが、この作品の巧みさだろうか。
 なぜ、この作品に決勝投票をしないのか、と問われれば「ひじき」の方が私の好みだった、としか答えようがないのが苦しいところ。単なる個人的な好みの問題かよ、と思われるのは癪なので、いささか強引にこの作品を批判する。子供は5歳の時から絵を描いているのに、7歳になるまで乳母はその絵の才能に気づかなかったのは不自然ではないだろうか。父親は5歳の時点で気づいているし、乳母が子供が7歳時点で才能に気づくのは今更感がある。

・「盛者必衰」
 この作品は、2つの側面を持っているように思える。1つ目の側面だと、エンターテインメントとして秀作だ。2つ目の側面だと、311以降の小説としては不十分に思える。
 1つ目の側面は、オチ勝負の作品。最後のオチを読んで、「あぁ、そういうことか」と読者に思わせる、アイデア勝負というか、読後の爽快感を狙った作品。
 2つ目の側面は、タイトル「盛者必衰」を作品の主題として捉えること。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。 」という平家物語の底流にある思想を、細菌を主人公として表現しようとしているのだろうか(もちろん、栄えている者だけでなく、それ以外の者も、風の前の塵と同じだ、という思想)。
 掲示板で、euReka氏が「私の不満は、311以降の世界を語る人がほとんどいないということ。」(記事番号2572)と書かれていた。私も311以降の世界を語れる人を見たいです。
 この作品を2つ目の側面で捉え、「細菌」を「人間」、「店員のアルコールスプレー」を「地震・津波」や「原発事故」に置き換えると(批判を承知でというより、私も胸を痛めながら置き換えてます)、311以降の世界として語るには不十分な要素が見えてくるのではないか。「大きな力の前では人間はあまりに無力だ」ということ以上の何かを提示出来ていない。
 話題が逸れてしまった。この作品は、1つ目の側面で見れば、決勝投票をしても良いと思った(オチを承知で再読しても楽しめた)のだけれど、2つ目の側面で見たとき、評価がどうしても辛くなってしまう。(この票の参照用リンク

2015年2月8日 23時12分34秒

推薦作品
愛していると描かせてほしい(まめひも)
感想
『ひじき』
日常の中の些細な大事件を切り取った点はいいと思うし、読んでいて面白かった。ただ、後半の一般的な教訓じみたオチがもったいない。増えすぎたひじきに対する純粋な驚きだけを描かれた方が私は好きです。

『盛者必衰』
これはたぶん、淡々とした解説的文体で書かれるよりも、より彼らに肉薄した、読者が同調できるような文章の方が効果的なのでは。記号的な生き物が生まれ増えて死ぬ、そういう記録を読んでいるようにしか思えなかった。バランスが難しいところかもしれないけれど。
というか、この手の話は既視感が強すぎるのでよほど斬新な仕掛けがなければ面白くはならないのではないか。

『愛していると描かせてほしい』
この作品も既視感がある。それでも読ませられるのはひとえに作者の技によるのだろう。うまくまとまっていると思う。好みのモチーフでもあり、今期はこちらに投票する。ただ、強欲な一読者としては、より鮮烈な読書体験を願うものです。(この票の参照用リンク

2015年2月8日 22時19分11秒

推薦作品
愛していると描かせてほしい(まめひも)
感想
好みを言えばもう少し起伏を抑えてほしいところはあるのだけれど、才能というものに対する葛藤を描こうとしているところに票を。(この票の参照用リンク

2015年2月8日 15時53分21秒

推薦作品
盛者必衰(kyoko)
感想
私の中では一番楽しめたから。もうほかに書きようがありません。すみません、いつも幼稚な感想で。(この票の参照用リンク

2015年2月8日 3時33分1秒

推薦作品
ひじき(わがまま娘)
感想
#21 愛していると描かせてほしい
 記号的とは、記号の組み合わせによっていくらでも話が作れてしまうということだ。つまり別の言い方をすれば、内容(意味)が希薄だということ。喉が渇いているのに空のグラスを渡されるような、あるいは、誰も住まない家を建てているような感じ。
 でも改めて読み直してみると、記号的だからこそ魅力を感じる部分もあるなと思った。

#12 ひじき
「なにかとても大切なことのような」という前フリが効いているのだろうか。「嘘だけど」という母の言葉が、重く、鋭く突き刺さってくる。または、平凡な日常や母娘間の愛情が漂う幸せな空間が、「嘘」という言葉によって、ほんの一瞬だけ切り裂かれたような気分になってしまう。
「嘘だけど」という言葉には、幸せや不幸といったあらゆる意味が織り込まれてれていて、「言葉を越えた言葉」のようなものが表現されているような気がする。

#14 盛者必衰
 実は細菌の話だったというのがオチで、自然や人間社会の不条理を、細菌の世界に置き換えてみたということか。
 テーマは、震災や戦争を想起させるものでとても興味深いと思うが、オチまで読んでしまうと、ちょっと話が単純するぎるような気がしてしまう。(この票の参照用リンク

2015年2月7日 15時37分48秒

推薦作品
愛していると描かせてほしい(まめひも)
感想
『ひじき』
きっと主人公にとってはもう何気ない出来事なのだろうけど、やはり思い返すと温かく、素敵だと思わされました。
ただ、「嘘だけど」をあとから思い返す、というのに少し違和感があるように思いました。ぼそっと言われたことが聞き取れているなら、電話からレンジに入れるまでの間なら覚えていられるような気がして……

「愛していると描かせてほしい」
愛情、苦しみ、悲しみ、妬み……といったお父さんや周囲の人々の感情が、直接的に書かれていないものも多い中でひしひしと伝わってきました。
『白いキャンバスの上に青い線がしん、と引かれた瞬間、私はこの子の鮮やかな叫びを聞いた。』
この表現で娘の運命(とまで言うと若干大げさな気もしますが)が一気に変わるように感じられました。
 

「盛者必衰」
オチを読んで、「ああなるほど!」と思わされ、面白いと思いました。
ただ、前半部分がもう少し自然に感じられるともっと面白いと思います。読んでいる途中に、たとえ話かなあと感じてしまったので…(この票の参照用リンク

2015年2月7日 0時0分19秒

推薦作品
ひじき(わがまま娘)
感想
「愛していると描かせてほしい」
 語り手と娘の関係を表現する方法に優れたものを感じた。描かれているのは親子関係に特有の愛憎関係だろう。嫉妬は女々しい感情だとはよくいわれるが、その意味で、語り手が単純に嫉妬に打ち勝とうと努力しているだけなのであれば、男らしいなと思った。
 ただ、仄めかされた語り手の心情を額面どおりに受け取っていいものか迷った。
 例えば、乳母を殴った動機は「一生分の幸せを捨てて」という言葉に対する親なりの反発だと考えることは容易だ。が、全文を読み終わってから再考すると、「絵のために生まれてきた」という意見を受け入れたくない気持ちに突き動かされているのかもしれないなと思った。
 また、娘に対する「私に頼らなければ生きていくことすらままならないほどに醜く幼い」という表現からは語り手の憐憫が読み取れるが、それはあくまで語り手の一般的な建前であって、心のどこかでは、自分より才能があるらしい娘を自分が守ってあげているという優越感が生じているのではないのではないか、と疑ってしまう。
 もっとも上記の憶測には根拠がない。要するに、共感されやすい愛憎の様相を分かりやすく表現しているだけなのであれば個人的に物足りなさを感じるが、かといって作品全体を使って嫉妬を表現しているのかというとよく分からないので投票は見送った。いい作品だなとは思った。

「ひじき」
 タイトルからして何気なさが満ち溢れていいて、「ひじきがボールから溢れ、ボール周辺が真っ黒になっていた。一瞬、虫でも湧いたかと思った」という異様な光景のあっさりした表現も好み。ひじきに関する問い合わせが「一人暮らしを始めて初めての実家への電話だった」というのも何気ないけどなんだか妙な感慨を抱かせる。こういうさりげないところから作品の質感、立体感が生まれていてとてもいいと思う。
 また、「なんでもやってみないとわからない」というテーマが作品全体で表現されていることに小説としての完成性を感じた。たとえこのテーマがあとづけだったとしても(というかこれは私が勝手に感じているだけで意図したものではないかもしれないが、それにしても)、作品とテーマの間に違和感がないし、作品自体も説教くさくなくてとても自然だと思う。
 ということで、投票することにした。
 ただ、レンジを使えという母の衝撃的なアドバイスのあとでオチのように放たれた「嘘だけど」という言葉を、そう簡単に忘れることができるものなのだろうか。これが実話で完全に事実なら、そういうものかと思うしかないが、実話を基にしていたとしたら、この辺は記憶が曖昧な可能性があるんじゃないかと思わざるを得なかった(例えば、ひじき再乾燥の失敗を報告したときに「嘘だけど」と後出しされたとか)。
 それと本当にレンジでチンするとひじきは縮むのかとても興味がある。
 
「盛者必衰」
 最後の段落の百文字ちょっとで終わる内容を大きく膨らませる想像力(創造力ともいえるだろうか)に感銘を受けた。最後の段落とそれ以前の内容の対比は非常に面白い。文章も読みやすくて上手だなと思う。
 ただ、擬人化の限界を感じて物足りなさを感じた。記述の生物学的な正確さとかは問題にしないとしても、これだけ周りの人々(本当は細菌とかだろう)大繁殖しているのに、主人公がそれに関与している描写がない。もちろん「人」と表現されている存在がいきなり分裂したら違和感が生じるだろうが、それも上手く盛り込まれていたならもっと良かったと思う。(この票の参照用リンク

2015年2月4日 18時49分58秒

推薦作品
ひじき(わがまま娘)
感想
文章のうまさと面白さで、総合的には『ひじき』が抜きんでていると思う。
劇的な話ではなかったが、最後まで読んでいて心地良さがあった。

題材は『愛していると描かせてほしい』、叙述トリックという点で『盛者必衰』は優れていると思った。(この票の参照用リンク

2015年2月3日 7時57分11秒

推薦作品
盛者必衰(kyoko)
感想
前半の仰々しい描写から、種明かしのなんていうことない日常描写へのギャップが心に残りました。面白く読みました。(この票の参照用リンク

2015年2月3日 0時35分6秒

推薦作品
盛者必衰(kyoko)
感想
「愛していると描かせてほしい」
「この子は女の子の一生分の幸せを捨てて、絵のために生まれてきたんですよ!」が力強かった。母親が嫉妬しているのが不思議だった。語りもうまいのだけど。

「ひじき」
会話の語尾など、ちょっと好みじゃない。
発展性のない話に八海宵一さんの「冬が溶けるとき」を思い出した。

「盛者必衰」
こちらも語りがうまいからオチ以前から楽しめた。オチものにしないで、伝記もののようにしてもよかったと思う、というか、そういうのも読んでみたくなった。四行で解説できることだったのかと、意外に思った。
エジプトとかの王様かなと思ってたのに、バイキンだったってのは、嫌だな。そのギャップが印象的だった。

「愛していると描かせてほしい」と「盛者必衰」で迷う。
共感、物語の中に入り込めた、作品に対して読みながら懐疑的にならなかったという理由で「盛者必衰」に投票します。(白熊)(この票の参照用リンク

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