第147期決勝時の投票状況です。7票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
8 | おとこらしく | まめひも | 2 |
18 | サイコパス | euReka | 2 |
19 | タヌキの哀しき皮算用 | 白熊 | 2 |
12 | 違う人生 | qbc | 1 |
言い訳の連続を読み進めていくのが楽しいです。
予選と同じくこの作品に投票します。(この票の参照用リンク)
「違う人生」 面白かったです。
私は奥さんのことを好きじゃないし、亡霊のことも好きじゃない。
だから私の口から語られるこの物語は気だるげな口調。
愛されていない奥さんが「彼は私のことを愛している」と言って、亡霊はそれを聞いて泣く。
私はそれを知っていて亡霊の涙をぬぐってあげるけど、
どちらのこともどうでもいいからそういうことができるんだろーって思う。
「おとこらしく」
この男は悪いヤツだけど、他人事だからおかしい。
ところで、どうしておかしいのかなあと思ったら、女は、コンドームが減っていると知っていてナプキンのことから問いただしはじめているんですね。
最初から勝敗は見えてたわけだ。
「靴音」
同級生たちは結婚して子育て、もしくは仕事。それで私は女性かなと思った。
引きこもりって男性なイメージがあるから意外だった。
家族の態度も角がなくて居心地のよい家庭なのだろうと思う。
「サイコパス」
戦争によって失われた言葉を取り戻しつつある世界で、戦争の前からの約束を果たす話?
戦争という断絶があるのに、それでももろもろ覚えていることがある
子狐かわいい。わりといい話。
(そこに横たわる異物感。2度の戦争、アウシュビッツ、汚れた木と水。こういうのって、よく見かける単語なのに、それについてぜんぜん考えられない! 考えられないようにできてる!? 戦争だー)
「タヌキの哀しき皮算用」
万屋の一人勝ち。タヌキも熊もかわいそうなんだけど笑っちゃう。
でも笑いながら、どこか無邪気に笑っていられない気になる。
文体は、なんだか引っかかる。
予選と同じく「おとこらしく」に1票入れます。(この票の参照用リンク)
『違う人生』
幽霊が情けなくてかわいい。冒頭の関係性の希薄さと幽霊に対する優しさを考え、幽霊ってネットの繋がりみたいだと思いました。みんな幽霊みたい。
『おとこらしく』
楽しかった。分かりやすくて、読みやすい。
『靴音』
心情を吐露する文章には馴染めません。冒頭の描写は視線が語り手以外を向いていて、いいと思います。
『タヌキの哀しき皮算用』
語り口のリズムがよくて、楽しく読めました。
『サイコパス』
言葉が死んだとか言葉に意味がないとかいう言葉自体が矛盾してるけどたぶんそれも織り込み済みなんだろうなとか、色々考えたけどやっぱりわからない。そんな世界ありえないでしょって思うけど、不思議と想像できてしまう。
何よりも後半の子狐の台詞がよかった。月並みだけど、私にとっては子狐の言葉は死んでない。ありえないものを描く、死んだ世界から死んでない言葉が届く、というのは単純にすごいし、面白い。(この票の参照用リンク)
違う人生
いい意味で、薄気味悪い作品。「亡霊」が泣いている理由、包丁を持っている理由、「奥さん」が亡霊に説教すること、これらはすべて「私」の主観的推測でしかない。そう考えたとき、ちょっと背筋が寒くなった。女って恐い、と。素晴らしい作品。
おとこらしく
コンドームの残数、憶えている女性っていますよね。わかる、わかる。
読後に、ナプキンとコンドームが減ったは矛盾しないかなぁと思った。シーツが血まみれになりそう。自分の痔による染みだと言い分けでもするつもりなのだろうか。そこまで言い切ったら、ある意味「おとこらしく」言い分けしてると思うぁ、と想像が広がる良作だと思った。
靴音
靴音という題名が素敵。父と母が帰ってきた靴音なのか、私が靴を履き、外に出るときの音なのか、父と母の寿命が刻々と迫る時の足音なのか、と読後にいろいろ考えさせられた。
雛が卵から孵るとき、親鳥の愛情に包まれているのは言うまでもないが、殻を破って世界に飛び出すのは雛自身。親鳥は雛が孵るまで暖かく守り続ける。子供の頃に飼っていた鶏のことをふと思いだした。
サイコパス
平面リスという表現が気に入った。決勝の1票をこの作品に。
平面リスという奇妙な動物が登場し、「1度目は悪魔が起こした戦争で、2度目は神が起こした戦争」とか「1度目の戦争で言葉が死に、2度目の戦争で季節が死んだ」と寓話化された世界に、いきなりアウシュビッツという単語が出てきて困惑した。「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」という言葉を想起させたい作者の意図かなぁとか考えさせられた。しかし、詩を書くこと、ひいては小説を書くことの意味を問うのが主題だとすれば、「私は適当な大きさの石をあつめ、」以降の文章とかみ合わない。とても気になる作品。
タヌキの哀しき皮算用
とても面白い風刺小説。誰でも知っている諺に別の解釈を加えるのは、発想力というか、才能の為せることなんだろうなぁ、と思いました。万屋からしたら、カモな狸を利用して「捕りぬ狸で皮算用」(「ぬ」を完了の助動詞と使って「捕まえた狸で皮算用)なのかなぁ、なんていう言葉遊びを読後にしてしまいました。(この票の参照用リンク)
「おとこらしく」
誤解が解けていく過程を彼女の立場から追えたのが面白かった。「なるほどww」の連続で楽しい。
ただ、最後の釈明で「でも〜」となっているのが残念だった。なんか「でも女じゃないから!男だから!」という開き直った言い訳に聞こえる。どうせならもっと自然に墓穴を掘ってほしいという欲求を持ってしまった。
「靴音」
自己愛からくる悲鳴がなまなましく伝わってきた。ただ、どうしても広がりに欠ける。
考えていること、感じていることはとても上手く伝わってくるのだけど、ただの独り言っぽい。
そのあとの親とのやり取りとか、夕飯の味とか、食事風景とか、読みたかったなあ。
「違う人生」
予選評に同じ
「サイコパス」
予選評に同じ
「タヌキの哀しき皮算用」
予選評に同じ
予選で選んだ作品が全部通過しちゃいました。選挙と違って一票の重みをとてもよく感じますね。その中では「タヌキの哀しき皮算用」を推します。わたくし的には一番「おかしみ」を感じて印象強かったなと。(この票の参照用リンク)
#12 違う人生
ただ閉じていく物語。亡霊が現れるという展開は面白いが、たいした広がりもなく、ただ物語と一緒に閉じていくだけ。最初から結論ありきで、なんとなく面白そうな文章を書いているだけではないのか。私なら、その閉じた先のことを書く。
#8 おとこらしく
#12と同じで、結論ありきで書いている文章という感じがする。「いかに下らない話を真面目に語るか」といった類のフォーマット(物語の下地)の上に、面白おかしい文章を貼り付けているだけだ。もうちょっと脱線して、いろいろ試したほうが面白いんじゃないのか。
#11 靴音
不自然にはめ込まれた「にと」は、家族との関係性や、社会との繋がりの中で感じる隔たりを表現しているのだろうか。しかし、わからん奴にはわからんでいいという態度にも見える。中盤の独白には切実なものを感じるが、終盤近くの「この世界は、私には広すぎるし明るい。」のところで力尽きてしまったような感じがする。本当はそこから先を書かなきゃいけない。あと500文字余っている。
#19 タヌキの哀しき皮算用
物語の導入部に、主人公を示す主語がないので読みづらい。しかも、最近流行っているらしい「古風な文体」が中途半端に使われていて、ああ、またこの手合いかとげんなりする。しかし物語の題材や展開は悪くない。狸が熊に仇討ちをするという切実な動機を、悪賢い奴に利用された。まさに今の世の中がそうだ。「本当の敵はどこにおるのか」という言葉が悲しく響く。
(euReka)(この票の参照用リンク)
「違う人生」
伴侶を「妻」でなく「奥さん」とすることで距離を感じさせる。そういった言葉の使い分けも薄くなっているかもしれないが。
透けている割にわんわんと泣いて、自己主張が強い。見えるのは私だけじゃなく奥さんも、では。
「好きでもない妻」「霊が泣いている」目新しい要素でないが、組み合わせているので画一的ではない。
「玄関で」「酷な説教」は新しく、作品のアクセントになっている。
霊になるような女じゃなくて、好きじゃなくても霊になりそうにない女と結婚している。主人公の性格がよく分かる。
奥さんは自分のことを愛しているのは都合がよく、奥さんもなんとなくこの男と結婚した、というのはどうだろうかと考えた。
内容としてこういった作品が好み。
「おとこらしく」
ホモってことか。題名は伝聞の「らしい」か。
話の運びがスムーズで、よくできていると思う。
「靴音」
転機の無い物語。ケータイに書き残したような印象を受ける。
その気持ちはわかるが、物語として読ませてほしい。
詩のような独白は「二票までは入る」という経験則を持っている。
ただ、共感の二票では決勝に残らなかった。
最近は二票で決勝に残るようになった。
共感はする。競作の場で問題となるのは、その先だと思うが。
「サイコパス」
同類を殺し合うのは、確か、人やチンパンジーぐらいで、少数だとか。
言葉を持たない動物は、普通、同類を殺さない。
なんだろう。この物語は、昔生活のために売られてしまった絵画のようだと思った。
自分の物だった絵を見つけて、美術館の一枚の絵の前に、一人の老人が現れたって。(白熊)(この票の参照用リンク)