第147期決勝時の、#18サイコパス(euReka)への投票です(2票)。
『違う人生』
幽霊が情けなくてかわいい。冒頭の関係性の希薄さと幽霊に対する優しさを考え、幽霊ってネットの繋がりみたいだと思いました。みんな幽霊みたい。
『おとこらしく』
楽しかった。分かりやすくて、読みやすい。
『靴音』
心情を吐露する文章には馴染めません。冒頭の描写は視線が語り手以外を向いていて、いいと思います。
『タヌキの哀しき皮算用』
語り口のリズムがよくて、楽しく読めました。
『サイコパス』
言葉が死んだとか言葉に意味がないとかいう言葉自体が矛盾してるけどたぶんそれも織り込み済みなんだろうなとか、色々考えたけどやっぱりわからない。そんな世界ありえないでしょって思うけど、不思議と想像できてしまう。
何よりも後半の子狐の台詞がよかった。月並みだけど、私にとっては子狐の言葉は死んでない。ありえないものを描く、死んだ世界から死んでない言葉が届く、というのは単純にすごいし、面白い。
参照用リンク: #date20150108-015825
違う人生
いい意味で、薄気味悪い作品。「亡霊」が泣いている理由、包丁を持っている理由、「奥さん」が亡霊に説教すること、これらはすべて「私」の主観的推測でしかない。そう考えたとき、ちょっと背筋が寒くなった。女って恐い、と。素晴らしい作品。
おとこらしく
コンドームの残数、憶えている女性っていますよね。わかる、わかる。
読後に、ナプキンとコンドームが減ったは矛盾しないかなぁと思った。シーツが血まみれになりそう。自分の痔による染みだと言い分けでもするつもりなのだろうか。そこまで言い切ったら、ある意味「おとこらしく」言い分けしてると思うぁ、と想像が広がる良作だと思った。
靴音
靴音という題名が素敵。父と母が帰ってきた靴音なのか、私が靴を履き、外に出るときの音なのか、父と母の寿命が刻々と迫る時の足音なのか、と読後にいろいろ考えさせられた。
雛が卵から孵るとき、親鳥の愛情に包まれているのは言うまでもないが、殻を破って世界に飛び出すのは雛自身。親鳥は雛が孵るまで暖かく守り続ける。子供の頃に飼っていた鶏のことをふと思いだした。
サイコパス
平面リスという表現が気に入った。決勝の1票をこの作品に。
平面リスという奇妙な動物が登場し、「1度目は悪魔が起こした戦争で、2度目は神が起こした戦争」とか「1度目の戦争で言葉が死に、2度目の戦争で季節が死んだ」と寓話化された世界に、いきなりアウシュビッツという単語が出てきて困惑した。「アウシュヴィッツ以後、詩を書くことは野蛮である」という言葉を想起させたい作者の意図かなぁとか考えさせられた。しかし、詩を書くこと、ひいては小説を書くことの意味を問うのが主題だとすれば、「私は適当な大きさの石をあつめ、」以降の文章とかみ合わない。とても気になる作品。
タヌキの哀しき皮算用
とても面白い風刺小説。誰でも知っている諺に別の解釈を加えるのは、発想力というか、才能の為せることなんだろうなぁ、と思いました。万屋からしたら、カモな狸を利用して「捕りぬ狸で皮算用」(「ぬ」を完了の助動詞と使って「捕まえた狸で皮算用)なのかなぁ、なんていう言葉遊びを読後にしてしまいました。
参照用リンク: #date20150104-180623