第147期 #8

おとこらしく

 僕には、君より他に好きな女はいない。
 だから非常に言いにくいんだが、君のナプキンが減っていた件について弁明させてほしい。いや、厳密には後で僕が買い足しておいたので、減ったわけではなく借りたといってもいいんだけれど――ごめん、いや、正直なところメーカーと包装パックの色と長さがあっていればばれないと思ったしばれなきゃいいと思っていた。羽つきとか羽なしの区別もあるとは知らなかったんだよ。
 ああ、なんだかこの話は余計に君の機嫌を損ねている気がする。
 いや違う、煙に巻く気はないんだ。そんなことで君に誤解されるくらいなら真実を打ち明けてしまおう――。

 その――使ったのは僕だ。
 つまり――僕は痔だ。

 引くな。頼む。ちょっと、ほんとに。笑うのもなし。真面目に。お願い。
 とにかく、君の部屋のトイレで大をして振り返って便器の中が真っ赤だったときの僕の衝撃は人生最大だった。パニックだった。しかし下半身を血まみれにする危険性を残したままトイレからは出られないだろう。それで、とりあえずトイレの中にあったものでもっとも役立ちそうなものを借りたんだ。
 だからあの晩乗り気じゃなかったのは他に気になる女性ができたからとかそういうことじゃなく、パンツを脱げなかったからなんだ。

 いや、言えないだろ! さっき痔になって君のナプキンちょっと借りたよとか言えないだろ!

 とにかく、そういうわけで、君に言えないまま借り物をして、あとは君が知ってる通りだ。今は一応肛門科に通ってるので、一応落ち着いているよ。

 汚い話でごめん。分かってくれて嬉しいよ。
 ……。
 えっ、コンドームが減ってる理由? なんで知ってるんだ? 数えてたのか。あ、そう……。

 わかった。
 この際だから全部言うよ。浮気してた。すまない。そのせいで痔になったんだ。

 でも、君より他に好きな女はいない。本当だ。



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