第236期決勝時の投票状況です。7票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
4 | #アイスなう | 吟硝子 | 3 |
2 | 怒りの壺 | 朝飯抜太郎 | 1 |
6 | 魔女の血筋 | euReka | 1 |
- | なし | 2 |
予選でも推薦したので、改めて推薦する。
あえて疑問点をあげれば、「きっとこれが最後のアイスクリーム」というと、今食べているものが最後というニュアンスになってしまうという点。のちに、「アイスだけでどのくらい生きてられるのかなんて知らない」といっているとおり、まだストックはあるようなので、そこに小さな違和感があった。
[怒りの壺]
唐突に場面転換が起きるので、そこに読みづらさを感じた。最後走り去った車は彼女の車だったのだろうか。クラクションを鳴らした意図なども文脈から読み取ることができず、ひとつの話としてあまり締まらないという印象をもってしまった。
[魔女の血筋]
世界観は良いと思う。
ただ、最後の展開に不満があった。話を聞いている内に「私」が眠ってしまったり、祖母が「世界の何が変ったのか分からない」などと言っている点はいかにも意味ありげなのだが、それが何を指しているのか読み直してもわからなかった。
もし何か暗示するものがあったのならば、もう少し到達できるような描写をすべきであると思う。(この票の参照用リンク)
描かれているものと文体の選択とが、とてもマッチした作品だと思いました。読んでいる最中に、ああ、こういう話ね、と、
わかったように感じたとおりに進むのではなく、そう思えた前半部分も、後半部分との対比で、無理なはしゃぎぶりが際立って見え、
大きな意味をもってくる。緩みと緊張感が丁寧にコントロールされた、よく練られた作品だと思いますし、面白く読みました。(この票の参照用リンク)
淡々とした描写が、状況の過酷さをより一層際立たせていて、心に残りました。
『怒りの壺』は、当人よりも、最近ようやく穏やかになってきた父に嘘をついて、両親と継父との間に騒動を起こした娘の心の闇が気になってしまいました。絆創膏を貼るほどの怪我を顔に負わせた彼氏も問題がありそうですね。
『魔女の血筋』は、強い思いが世界を変えたのは美しいこととは思いますが、それができるのが魔女の血筋を持つ人だけだったらちょっと寂しいですね。(この票の参照用リンク)
予選で投票した作品が入っていなかったので、票無しとしたい。
ちなみに、自分が投票するときは、客観的な評価五割で、自分の好み五割だろうか。(この票の参照用リンク)
9作全てが2票か3票得票し、予選通過した3作も全て同票。どれが優勝しても穏当な結果で大番狂わせと思う人もいなかろう。
これを粒揃いと見るか、団栗の背比べと見るか評価は分かれる所だが、どれに投票しても1位を決めるというより投票者の好みを表明するに留まることになると感じた。(この票の参照用リンク)
#4
文体の好みをさておいても、後半の電気とネットの下りは言い訳じみていて、この一文のせいで途端に嘘臭くなっている。作者さんに都合よく作られた舞台というか。穏やかな終末には穏やかな描き方があり、グロテスクな終末にはグロテスクな描き方がある。本作に書き割りのゴキブリとネズミは必要だろうか?
作品の舞台はどのような状況か、そして作者さんは何を書き、何を書かないでいるべきかをもっと掘り下げるとよいと思う。真に迫った舞台は、登場人物の感情にも重みを与えるのではないだろうか。
#6
三作品のうち最も読後感がよく、作者さんの作品の中では好みの路線だった。最近の作風は穏やかな傾向があり、安心して読ませて頂いている。反面、印象には残りにくかった。まあそういうものだよねで終わってしまうというか、斬新さが感じられなかった。(これは単なる読み手とのアンマッチなのかもしれないが。)
#2
本作についても、斬新さという意味ではあまり強くはない。ただ、文体の巧みさによる牽引力が他と比べて勝っており、ありがちな展開ではあるものの(それゆえ王道とも捉えられなくもないが)ラストの空虚感の表現が光っていた。本作に票を投じる。
他の方の感想で好みの問題に触れられていたが、正直仕方がないというか、それも含めて感想だと思っている。ただ稀に好み云々を超えて突き刺さってくる作品があり、感想を書かれた方はそういう作品を求めているのかなと思った。結局何が言いたいかよくわからなくなってきたが、まあ、そういう次元の作品を書きたいですねという話です。(この票の参照用リンク)
「魔女の血筋」を推薦します。
魔法を使いたい、魔法を信じたい。子供の頃、自分にもそのような気持ちが確かにあったことが影響しているのか、この作品に入りやすかった。その感情を書くだけでは普通作品にならないのだが、なぜか成立しているし、特別派手なことも起きないのに、凡作に見えない。自分では処理できないけど好ましい作品だと思った。
「#アイスなう」:確かに終わり方が格好良く余韻もある。インスタ女子らしさを出すための重要小道具であるアイスの維持に必要な電気の存在と世界観の両立が自分には難しかった。想像力が及ばなかった。そのため選べなかった。
「怒りの壺」:予選では推薦できなかったのだが面白い作品だと思っていた。怒りの壺は、怒りによって激しく叩きつけられ華々しく砕け散るべきだったのに、そのエネルギーすら壺に奪われてヌルッと割れてしまい作品は静寂の中に終わりを迎える。壺を割りたい読者の欲求が宙に浮く気持ち悪さが、その壺の不気味さを強調する。そういう意味で作品の味がしっかり決まったラストになっている。怒りは人間を苦しめるので、人間は怒りを遠ざけたがる。その一方で、人間は怒りを愛し、手放したがらない。
私の場合は爽快感を期待しそれが得られなかったので満足しなかった。そのため投票はしないが、完成度の高い作品だと思う。なんとなく演劇っぽい感じがする。(この票の参照用リンク)