第222期決勝時の投票状況です。5票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
5 | 大往生 | shichuan | 2 |
7 | ボーイミーツガール | たなかなつみ | 1 |
8 | Num-Amidabutsu_ENTER | 志菩龍彦 | 1 |
9 | 妖精グッバイ | euReka | 1 |
人類最後の一人になったあと、残された過去のラジオ番組を聴きながら余生を過ごすというアイデアが秀逸だなと思った。
どうやったら孤独でも腐らずに生きていけるのか、ということは今の世の中では結構深刻な問題だと思うが、この作品ではその一つの答え(考え方)を提示しているような気がする。
しかし作品の出来については、全体的に見て、まどろっこしかったり、分かりにくかったりといった不満点も少なからずあるので、もっと完成度を高めるべきだろう。(この票の参照用リンク)
#05 大往生
主人公は決して一生を通して幸福だったとは言えないけれど、死ぬその時まで精いっぱい生きたのだ、という充実感をどこからともなく感じ取った。たぶん自分の願望だが、百歳を超えるまできちんと生活できたことはその証左だろうし、そういう文体でもある気がする。
#07 ボーイミーツガール
二人の関係にはロマンがあり、筆致もそれとよく馴染んでいる気がする。ただ、変化し続ける中に変化がないのでなんとなく閉塞感を覚えた。外野から石でも飛んでくることを期待してしまう。
#08 Num-Amidabutsu_ENTER
故人のためだけの葬儀がビジネスとしてどれだけ成立するのかは分からないが、成立するなら悪くない話だと思った。発想が良い。ただ個人的にそれ以上のものを感じ取ることができなかった。
#09 妖精グッバイ
「私」にもしっかりエゴが見え透いているのがフェアで好印象だった。作品全体が何かを訴えていて、思い返すたびにそれが何なのか考えてしまう。そして妖精の帰る場所だったはずの森がどうなったのか気になる。
5と9で迷い、今回は読後感から5に投票させていただきました。(この票の参照用リンク)
結局、好みでの投票になっているのが申しわけないです。設定プラスアルファで加算されるものが、この小説が一番多い気がする。(この票の参照用リンク)
アイヌの古老たちは「先に死ぬ方が幸せだ」と言い合っていたそうです。”最後の人はアイヌ式の葬儀で送ってもらえないから”、とのことでした。死に様を想像することでそこまでの人生を豊かなものにすることができるのであれば、葬儀の演出を自分の望み通りにしたいというのは充分に理解できるものでした。本当に数年後には商売として始まっていそうに感じ、その着眼点には”やられた”と思いました。
『妖精グッバイ』も楽しげで素敵な作品で、迷いました。パソコン内外の移動や栄養摂取など、気にしだしたらキリがありませんが、それを気にしないのが妖精界の物語なのでしょう。なら、最後の妖精の言葉も深読みしない方が楽しそうです。
『ボーイミーツガール』は…、こういう人たちもいるんだろうな、とは思いますが、本質的には理解できませんでした。異性との交友は、お互いに受け入れあってからの時間の方が重要と私は思います。(この票の参照用リンク)
初読時は、きっちりと物語としての結構が決まっている「Num-Amidabutsu_ENTER」や「大往生」により惹かれたのですが、
読めば読むほど、「妖精グッバイ」が味わい深かったです。ほぼ意思の疎通ができていないのではないかと思われる妖精との会話も、
その妖精を思わず助けてしまう語り手の行動も、妖精の発した最後のひと言も、読み終わってからじわじわきました。(この票の参照用リンク)