第176期決勝時の投票状況です。5票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
1 | 遠い過去に存在したはずの街について | たなかなつみ | 2 |
5 | 観光客らしき青年 | 岩西 健治 | 1 |
6 | 後ろ姿の女と桜 | Masahiro kase | 1 |
9 | つながり | わがまま娘 | 1 |
予選で票を投じた2作品はどちらも隔たりと静けさが感じられるのが好みだった。何もなくなってしまうことは収まりがいいようで、無理に収拾をつけているようにも見える。削除しつくしたのちでも削除しきれないものがほしい、それがこの語りだとするならばやや弱い気もする。書き手の迷いや移り気は読み手にそれとなくわかるもので、作者さんの姿勢と文体が一貫していてよいと思った。(この票の参照用リンク)
予選で投票したのは二作。中では今作の方が良作と感じたので票入れします。(弥生 灯火)(この票の参照用リンク)
読んでいるときにいちばん不思議な感覚を覚えた作品でした。
丁寧な文章で丁寧に人物と背景が描かれており、けれども容易につかめるわけではなさそうな世界観。
読み返すごとに、別の角度から風景が立ち上がってくる感じがして、心惹かれました。(この票の参照用リンク)
予選票をもう一度見直してみよう。
「後ろ姿の女と桜」
何でもない世界が、女の言葉で、少し不思議になる。この小説のいい所はそこに尽きると思う。少し言葉に違和感を覚える部分もあるが、新人さんに対して、今後の期待も込めてみたいという思いもある。
「鈍色のナイフ」
作者特有の生臭さが特徴である。そこはそこで、生かしてほしいのではあるが、読者を置いていくことはやめてほしい。
九つの僕は父を殺す考えを持っていた。今の僕の前には君がいる。会話の部分は僕と君(少女)が交互に喋っている。後半は性交をイメージさせるが、わたしは自傷行為と解釈した。僕の中の僕と少女によるマスターベーションとでも言うのか。文面から単純な解釈を求めるのは難しい。読者側に少し偏るととてもいい作品になると考える。
「つながり」
やはり、期待はするし、三連続ともなるとシビアな評価にもなります。嫉妬も含め、単純に他の作者と同レベルの評価はできない。
「euRekaさん」は自身の作品と同じであると予選票で書いていましたが、わたしにはそうは思えなかった。「俺目線のヤスシ」と「僕目線の三毛猫」の構造は同じでも、ここ最近、「家」をテーマとした作品を連続で書いている「わがまま娘さん」に対して、テーマが違っても「euRekaさん」流の味付けにしてくる作風は普遍とも思えてくる。
「わがまま娘さん」の「帰る場所」をわたしは一番評価していて、前作と今作は、わたしには少し物足りない感じがする。
期待を込めて「後ろ姿の女と桜」にするのか、安定している「つながり」にするのかで迷っている。
ここで一旦休憩、飯を食う。(この票の参照用リンク)
もう一度読み返してみると、やはり、最後の終わり方がいいなと思う。友人とのエピソードは、アルバムに貼られた一枚一枚の写真のようであり、それを少しなつかしい気持ちで眺めたあと、アルバムを静かに閉じるような、そんな終わり方である。もちろん、物語の流れがそれなりにしっかりしているから、こういう終わり方ができるのだと思うが。(euReka)(この票の参照用リンク)