第101期決勝時の投票状況です。9票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
19 | 鳴ル女 | 志保龍彦 | 3 |
7 | 重豚 | クマの子 | 2 |
14 | 魔法を使う女たち | 戦場ガ原蛇足ノ助 | 1 |
- | なし | 3 |
いろいろ悩んだ末に。
先の方の感想でも出ているように、括弧の使い方など気になる部分もありますが、通して読んで物語としてまとまっていると感じたので。
『魔法を使う女たち』は正直こちらにも票を入れたいくらい楽しく読んだのですが、どうしてもラストで引っ掛かってしまいました。「理解を超えている」ことから「魔法」に繋がっていると思うのですが、その間の「不思議と頭が〜」も「魔法」に繋げて読めてしまうため、最後の一文の印象が曖昧になっているように感じました。
『重豚』は、発想は面白かったのですが話としての面白さが私には分かりませんでした。最後の台詞がオチであるなら、「重豚」というネーミングがすでにネタバレだと思います。普通に「瘡蓋」「かさぶた」でもいいのでは。(この票の参照用リンク)
「魔法を使う女たち」
筆力のある方だと思いますが、内容がよく理解できなかったですね。
「重豚」
「特別な樹脂が開発された。「重豚」という樹脂で、傷付くと傷口を被うように膨れ上がり再生する性質を持っていた。その性質が買われて自動車やバイク、船のボディに使われるようになった。」
発想に面白みがあり、最後の台詞が効いていましたが、あと、一工夫あれば、多分、唸っていたかもしれないですね。
「鳴ル女」
タイトルが良い。シュールな世界が描かれているように思えた。ただ、古臭い感覚があるのは拭えない。いや、文学臭といえばよいのであろうか。筆力があり、描かれている世界に密度はあったが、内容的に惹かれるところはあまりない。そして陳腐な小道具を使っていて、少々、辟易させられるところもあった。つまり、斬新さがなかったということである。それでも、三作品の中では、一番惹かれる作品であった。
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読み始めて最後まで結末が想像つかなかった。
そして、最後でびっくりしつつ納得した。こういう話が大好きだ。
今回の3つの話の中で一番いいと思う。というか、他に選択肢がないというぐらい、飛びぬけていいと思う。(この票の参照用リンク)
予選の四票に挑戦!
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『君が代』読んで負けを確信したのは何時ぞやのこと。
今回は自分のも含め作者各々、模索している途中の小品が出てきたような印象。実験的と言ったら聞こえはいいけどそんなものじゃなくて、単なる破壊工作なのかなあと思う次第。まあそんなことはどうでもよくて
改めて決勝の作品を読んで、どれも決勝に残るだけの作品であることは確か。卒なく出来ていると思う。ただどれも票を入れることを躊躇わせる瑕があったように見受けられる。で、こっから先は好みの話し。
『鳴ル女』は、とても好みの作品で、個人的に親しみのある着想。スマートに徹しているから分かりやすい。ただし書き損じ。脱字や鍵括弧の使い方に配慮が行き届いていないことがひとつ。
内容でいえば、ネタ自体ほぼ成型されたものだから完成度も高いように見えるけど、それだけでは語れない難点がある。
まず気になったのが語り手が饒舌すぎること。こちらが求めていないことまで先に明かしてしまうから読み慣れている者からすると雑に感じる。もう少しじらしてもらえればなあと。
最も気に食わないのは狂気が奇麗事にされていることだ。この手の作品は背徳感がなければ人間を描いていることにはならない。もっとも本作の場合は人間の尊厳やなんやかんやはおいといてファンタジーとして受け取るのがいいのだろうけど、だったら耽美に浸からせるとか諷刺を烈しくするとか、善き意味で誤魔化せる別のエネルギーが欲しかった。嫌な面ちらつかせるけど実はいい人、みたいなのがとてもいけ好かない。舌触りや風味は残るけど、味がしない、みたいな。ほうじ茶を固めたゼリーのようだ。
『魔法を使う女たち』はひたすらめんどくさい。そのめんどくささが味なのかね。ただイエスユーキャン言いたいだけじゃないのと邪推してしまう。果たしてこの物語に意味はあるのかと勘繰ったとき、その意味を体感させてくれるのが“魔法”だとすれば、全然俺には効かなかった。これを読んでわぁ面白いなあと思う感性があったとして、それを豊かと言い切るには浅薄すぎるぞ、というのは言いすぎだけど、ものすごい穿った見方しか出来ない目からすると、本作は俺が求める小説の形じゃないんだな。
化学調味料ばんばん使ったカルパスを、包むフィルムごと嗜むようなもの。
『重豚』。この着想だったらもっと面白いもの書けたでしょうにってのが第一印象。まあ根本的にどういう話なのか理解できてないんだけど。雰囲気どまりかな、と一読後感じた。
職業柄、実際に選挙事務に携わる身からすると作中の二人の男は何屋さんかと。うだうだぬかしてねえで仕事しろと。お前が社会のことを語っても説得力ないんだよっていう。
で、個人的には豚というものが蔑する対象になっているという世間の仕組みに嫌悪感。金髪豚野郎はともかくとして、豚を悪口として使う人いるけどそんなこと言ったら豚がかわいそうだろこのウンコッていうね。はい。
ただ、魅力に溢れそれが効率的に万人受けに、きちんと体現できているのはこの作品だけと見た。安い豚肉に伯方の塩をまぶしただけでも食べられないことはない。舌にも体にもいい。けれど豚を悪くいう豚肉に票は入れない(笑)
さてどんな結果になることやら。[楡井](この票の参照用リンク)
鳴ル女は、ちょっと締めが強引な上に、気持ちが悪い。確かに、作品としての完成度は一番であると思いますが、私は好きではないです。
魔法を使う女たちは、何を表現したいのか、ボンクラの私めには分かりませんでした。
重豚は、奇妙な話ですね。改行で空行が入れてあったら、この作品に投票したと思います。
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再び重豚をお願いします。投票に弱いのかもしれない。(この票の参照用リンク)
アイデアが秀逸であるし、そのアイデアが作者なりの小説空間の中でクールに描かれている点が気に入った。(この票の参照用リンク)
『鳴ル女』は、カタカナの『ル』だとか文体だとか、ストーリー以外のものも作品に寄与している。
それはすごいが、ちょっと好みに合わなかった。やや重い印象の文体が、個人的には上滑りしているような気もした。
一人称の中で『その天上の響きが記憶から零れぬうちにと』と書いてあり、『私』って何者だろう、と思った。
『重豚』、読むのにあちこちつっかかった。で、最後までたどり着いても、ちょっと意味がわからなかった。
情景描写を楽しむには至らなかった。『重豚』の読みが明かされていない点、作者の工夫かも知れないが、個人的にはストレスだった。
『魔法を使う女たち』、すらすら読んで、なるほどと思って、その後で『まるで魔法のように』という文が気になった。
個人的には余計だろうと思ったけれども、もし仮にその文がなかったならば、文意をつかむことができなかったかもしれない。
『不思議と頭が痛かった。』のほうが、締めとしていい文だと思う。
今回は投票のところの感想が良かった。最後で『重豚』の意味もわかった。(この票の参照用リンク)