第5期決勝時の投票状況です。13票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
14 | 人の声にその本性が顕れることについて | 海坂他人 | 5 |
8 | 傘を広げて | 川島ケイ | 4 |
9 | 砂のユートピア | 逢澤透明 | 4 |
むずかしい審査だ。独断と偏見で悪いところを見つけるしかない。一人称だから本来ツッコむべきところではないかもしれないが、『傘を広げて』は、メルヘンチックな題材でありながら描写が説明くさくてカタい、というのがユニークであるけれども、独断と偏見で、もうちょっとポエチックな表現を求める。『砂のユートピア』は逆に、アカデミックな題材でありながらところどころ描写がポエチックにすぎる、というのもロマンチックでよいのだけれど、独断と偏見で、もうちょっと冷静な表現を求める。その点『人の声にその本性が顕れることについて』は、あまりに自然な文章で得をしていてなんだか不平等なかんじもするが、やっぱり不満がないのでこれを推す(この票の参照用リンク)
おそらく、私が小説を読むということに対して求めている娯楽というのは、「なんだかよくわからないけれど、面白い」というような感想を抱くことができる、ということなのだという気がしています。「なんだかよくわからないんだけど」と、こういうふうに感じることのできる喜び、が欲しいのだと思うのです。
海坂さんのこの作品には、それがまさしくありました。なんだかよくわからないんだけれど、面白いのです。その、「なんだかよくわからないんだけど、面白い」というのを、おそらく作者の方も感じての、この作品なのだと思います。お裾分けをして下さって、ありがとうございました、そんな気持です。
他の二つの作品については、それに比べてしまうと、書き割りのような平面的な印象となってしまいました。面白いとしても、そのわけがわかってしまうという感じなのです。奥行きが感じられない。そういったわけで、私としては、迷うことなく、この作品を選ぶことになりました。
他に、文章として気になったことを、いくつか。一つの問題提議として。何が正しいのかは、私にもわからないのですが。
『人の声にその本性が顕れることについて』については、『そこで今回、』から『睥睨している。』までの一文なのですが、途中の『という不安が芽生えたのは、』という部分については、「〜からで」というような文というか言葉が来るのが普通の文法のような気がしたのですけれど、そういうことはないのでしょうか。これは、純粋な疑問で、つまりもしそうなら、私もそういう文章を書いてもいいのだろうか、という程度のお話なのですが。「〜なのは、〜だから」というのが自然な文章のような気がした、というただそれだけのことなのですけれど。
『傘を広げて』については、『雲行き悪い』というのは、やはり不自然な気がしました。「雲行き」というのはやはり「あやしい」ものであるべきだと思うのです。慣用句だから、というだけの理由ではなく、その方が美しい表現だと思うので。雲行きには、あやしくあって欲しいと思うのです。それから『外出たら』は、できれば『そと出たら』あるいは「外でたら」の方が私は読みやすかったと思います。「がいしゅつ」と、まず先に目が読んでしまいました。細かなことですけれど、ほんの一つの参考意見として。
『砂のユートピア』については、まず一行めの『架空の動物』という表現が、なぜか引っかかりました。なぜだろう、とちょっとだけ考えてみたのですが、それは、それが断定的な物言いだからではないだろうか、という気がしました。『架空』かどうか、よくわからない状態にいる、という方が自然に読めるのではないのだろうか、と。大昔には存在していたと、そういう可能性を否定しないでいるという書き方の方が、自然な気がしたのかも知れません。『砂の荒れ吹く』という表現が、あまりしっくりと来ませんでした。『荒れ吹く』よりも『吹き荒れる』の方が一般的ではないだろうか、というふうに思っていたところ、何行めか後に『吹き荒れ』が、ありました。なんとなく、こういう取り合わせは格好がつかない、語彙の貧しさ、というのが感じられる気がしました。『まるで群をなす無数の巨象が一斉に目覚めたように、』という比喩は、面白く読めました。ありふれてはいると思いますが、自然なので、わかりやすく率直な表現に思えました。比喩は自然、違和感がない、というのが基本的には第一なのだと思います。(この票の参照用リンク)
ホント、太宰を聞いてみたい。(この票の参照用リンク)
文学老女に尽きます。妙なリアリティがある。
主人公のひきつりそうな笑顔が浮かびます。(この票の参照用リンク)
勝手に人様の適正をうんぬんするのは、はなはだ僭越ではあるが、この作者は、作りものの小説よりも、どちらかと言えば日常系の随筆、エッセイ寄りの作風なのではあるまいか。このやたらと長いタイトルも、繰り返す事で妙な味が出てきそうな予感もある。 (ラ)(この票の参照用リンク)
実のところ、投票を迷っている。投票するならこの作品に以外にはないのだが、けれども、投票直前に目を通して(三度目)、素直に良いとは思えなかったからだ。表現にセンスを感じるし、人物も好感が持てる。けれども、積極的に一票を投じたいと思うものはなかった。消極的一票としてください。(この票の参照用リンク)
何回読み返してもイマイチ作者の意図が判らずにあれやこれやと考えてはみたけれど、とどのつまり私はこうゆうハナシが好きなんだろうとゆう結論で一票(苦笑)
一読者として勝手なことを言わせてもらえれば、「幻想世界における日常(現実)の一コマ」よりも「現実(日常)世界における幻想的な一コマ」だった方が作品自体の「シャボン玉にも似た幻想性や危うさ」を明確に打ち出すことが出来て良かったのでは?と思います。なんとなくだけど。(この票の参照用リンク)
今回は迷うことなくこれ。幻想と現実の境界を彷徨っているような感覚が心地良かった。
「砂のユートピア」は世界観としては好みだが、あと一歩書き切れていない気がする。千字で書くには些か話が壮大すぎたか。
「人の声にその本性が顕れることについて」は特に欠点はないのだが、同じ『滑稽』を描いたものならば「河童」の方が好みだった。千字にしてはやや内容が薄く、前半に勢いがない。(この票の参照用リンク)
今回は予選も本選も消去法での投票。もっと「これでなきゃ」って作品を読ませてくれよ、と期待しつつ。(この票の参照用リンク)
細かいところが少々不満ですが、ほとんどが物語以外の部分なので、好みの違いだと思います。それを残念に思うのですが、残念に思うほど好きな作品です。(この票の参照用リンク)
砂漠に埋もれていた実物大の「地図」。そしてそれが今しも神の創造の業が行われるかのように姿を顕す。雄大さに一票を投じたいと思います。(この票の参照用リンク)
面白かったから。(この票の参照用リンク)
スペーシアスな世界観を醸し出しており、ドラマティック・スペクタクルとして過去にない個性が光った。良質のエンタテイメントである。(この票の参照用リンク)