第258期予選時の投票状況です。4人より9票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
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1 | いいのか | 蘇泉 | 3 |
2 | 至高の酒 | 柴野弘志 | 2 |
3 | セロハン | 三浦 | 2 |
4 | 木星トロヤ群 第五ラグランジュ小学校へようこそ | euReka | 2 |
風景や心情を、子気味よいリズムで描く小説にとって、日本語の粗さが目立ってしまってノイズになるのがもったいなかった。描かれようとしている風景は好き。
正解を選んでいるつもりでも、失敗はあるし、成功したと思っても人生のしんどさは続いていく。視野が狭くなってしまって、疲れてしまった人が、悪くないよと、肯定されることで、前が開けたような気持になるのは、読んでいてはっとした。自分も知らず、狭い視野で考えて読んでいたと気づいたからだ。(この票の参照用リンク)
まともに仕事をしている人にとっても、そうでない人にとっても、今の世の中は地獄なのかもしれないなと思った。
家のローンが組める人はいわゆる「勝ち組」の部類だと思うが、莫大な借金(ローン)によって人生を縛られているとも言える。
一方で「負け組」は、大きな借金はなくても将来の保障がないからやっぱり地獄。
そういう今の世の中の、行き場のない気持ちの風景のようなものを切り取った作品なのかなと。(この票の参照用リンク)
10秒、10分、30年など、時間がたくさん出てくるところが、時間芸術としての音楽(ギターの弾き語り)が登場する内容にふさわしく、段落ごとに改行されたレイアウトがまた歌詞のようで、まるで1つの曲のような作品でした。
「春の涙は雨の味がした。」は美しい言葉ですね。
(三浦)(この票の参照用リンク)
1000文字いっぱいに使って丁寧に組み立てられた、ショートショートのお手本のような作品でした。
くすりと笑える一編ですね。
(三浦)(この票の参照用リンク)
まぁ、こういう輩にはこういうことも言ってやりたくなりますね。一方で、それをいっちゃあ、おしめえよ、という一言でもありますね。
『いいのか』は良い感じに風情と主人公の心の動きを書いているようにも感じられましたが、結局は何を言いたいのかが、よく分かりませんでした。
『セロハン』は、すみません、全然分かりませんでした。カッコ書きの中に注釈をいろいろ入れてくるのは、最初はうるさく感じましたが、読み進めるうちに、独特のリズム感として受け入れられていきましたが、すみません、やっぱり分かりませんでした。(この票の参照用リンク)
嫌なもの、不快なものは遠ざけて、平和に楽しく暮らしたい。嫌なもの、不快なものはないものとして扱いたい。そういう無意識的な共犯関係に対して、包丁をつきつけるような感じ。
しかし、セロハンは、神の神罰ガジェットというわけではなく、この女の子自身の中から生まれている気がするので、希望がある話のようにも思った。
その他
「至高の酒」
文章や構成はうまいが、新しい何かを感じなかった。オチの価値観も、ヘイトを集める男の造形も古臭さを感じた。
汗水流して働かず、美酒を求める道楽も、何かを生み出すことはあるかもしれないし、何も生み出せていないとしたらその空虚さや絶望は小説にしてもいいのではないかと思う。(この票の参照用リンク)
主人公の心に浮かんだ言葉をそのまま記録したような文章。
いろいろな出来事や、気持をごちゃごちゃに混ぜたような。
でもキーワードとして考えられるのは「殺戮。無慈悲。血液。破片。人体。叫び(聞こえない)」「沖縄」「戦友」の3つで、戦争に関することを書いているのだろうと何となく分かる。
さらに、タイトルにもなっている「セロハン」によって、主人公は嫌な記憶が呼び戻され、それは「人を殺す」こと関係していることも分かる。
以上のことが何を意味しているかの解釈は、あえて言わないことにするが、こういう婉曲的な表現でしか表現できない意味や感情もあるのかもしれないなと思った。(この票の参照用リンク)
小惑星に小学校があるという発想力、カップ麺の賞味期限が20年前に過ぎていること、けれども冷凍食料が500年分あるというユーモア、20年後に少女が小学校の先生になっているという構成力、どれをとっても一級品です。
(三浦)(この票の参照用リンク)
木星のトロヤ群、L5 にある小惑星はバトロクロスやパリスなど、直径 100キロほどのものが最大ですが、そのくらいの大きさがあれば、小学校以外にもいろいろ建設できたはず。その時代の小惑星の探査・開発はどのようなものだったのか、興隆と衰退が長崎の軍艦島のようなものだったのか、そもそも主人公は何をしていて、二十年で何があったのか、いろいろ考えさせられてしまいますね。(この票の参照用リンク)