全投票一覧(日時順)
第223期決勝時の投票状況です。6票を頂きました。
2021年5月7日 13時1分0秒
- 推薦作品
- ツリオジ(志菩龍彦)
- 感想
- ツリオジ、というあだ名のリアリティがいいと思った。
要約できて話せる、落ちのある話なのに、ドラマチックにならないところがとてもよかった。(この票の参照用リンク)
2021年5月5日 18時5分5秒
- 推薦作品
- 仏(たなかなつみ)
- 感想
- 無数の虫によって形作られたそれは、強いて言えば即身仏みたいなものだろう。
しかし即身仏の場合は、自分の意思でそうなったのだけど、この物語の「かれ」の場合、どんな経緯でそうなったのかが全く不明だし、そのことが想像力を掻き立てる。
しかし、いくら想像しても、納得できる答えには辿り着くことができず、結局その虫の集合体は、〈今そこにある変な何か〉でしかないと考えざるを得なくなる。
虫の集合体は、「かれ」の情念に呼応した超自然的なものなのか、それとも単なる奇跡的な自然現象なのか、全く分からない。
でも、分からないものを、ただ分からないものとして眺める態度というのは、案外心地よいものでもあると思う。(この票の参照用リンク)
2021年5月5日 11時16分35秒
- 推薦作品
- Brand new _(霧野楢人)
- 感想
- #4
題材としては最も好みです。淡々とした描写が映像とあいまって凄みがあります。細かいところですが、「それは、ヒトの姿をしている無数の虫の塊である。」で個々の虫がヒトの姿をしているのか悩み、イメージが途切れました。
#5
意外性はありませんでしたが、ツリオジに対する語り手(を通じた読み手)の感情の動かし方がうまいなと思いました。最後に決して見えない水底のような彼の心境を想像させるところがぞっとしてよいです。
#7
美しい風景と心理描写。特に「息子にあれはカワセミだと教えなければ〜」の微妙な心の動きが、目にした光景の美しさも際立たせていてよかったです。それから最終段落の「新しい春だ。」の清々しさと強さ。読みながら風が吹き抜けるような感覚がありました。(この票の参照用リンク)
2021年5月5日 11時7分50秒
- 推薦作品
- ツリオジ(志菩龍彦)
- 感想
- 最後まで『Brand new _』と迷いましたが、こちらを推すことにしました。
最後の一文「それだけである。」でぴったり 1000字、虚無的な読後感を与えてくれているように感じました。
『Brand new _』にあえて難癖をつけるとすれば、職場の昼休みに子守をして、川沿いに出るまでの時間はありませんね。奥さんの休息のためにやるべきことはあまりに多く、昼休みを一時間、片道を 5分、昼食に 15分と考えると、実際には時間の余裕はないでしょう。
『仏』からはマンガ『孔雀王』の冒頭のシーンが思い起こされました。読む人を選ぶあのグロいシーンと比べると、現実感を覚えられなかったのが残念です。(この票の参照用リンク)
2021年5月5日 8時49分56秒
- 推薦作品
- Brand new _(霧野楢人)
- 感想
- 文章から立ち上がってくる印象がとても強い。物語のアップダウンで読ませるのではなくて、描写された視界が訴えてくるものを、
読んでいる側が追体験させられる力の強さが、この作品の小説としての強さだなと思いました。
穏やかな前半から、腕時計→カワセミ→草花→腕時計、と動く視界に引きずられていく後半がとてもよかったです。(この票の参照用リンク)
2021年5月2日 21時17分51秒
- 推薦作品
- 仏(たなかなつみ)
- 感想
- 予選と判断は変わらず、「仏」を推します。
現実的な話ではないけれど、現場周囲の状況や住民の関わり方が描かれておりきちんとリアリティを感じた。
自分以外のものが自分を形作るというのは普遍性の強い現象だと思っていて、何なら健在する私という人間すら、第一に前にも後にも自分ではない物質の移ろいが為す動的平衡の産物(維持機構はあるにせよ)だし、毎日食べる食物、100兆といわれる腸内細菌、人格に影響を及ぼした環境や経験などがなければ存在しえない。生物の存在は、ある面ではそんな不確かで現象的なものではないだろうか。細かく見ればどんな存在もあってないようなものである(個人の感想です)。仮に縁起説や空性と結びつけるなら、身を呈してそれを示す「かれ」は仏的といえるのかもしれない。
「ツリオジ」は、語り手が独白したように寂しい話だと思った。
話の運びがしっかりしており、さらに流行りの番組を仕掛けにうまく組み込んでいて上手いと思う。
また、他の方の感想の話になるが、「人というものの適当さ」というのは目から鱗だった。(この票の参照用リンク)
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